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ドラゴン、任命される。①

七天秘宝(ドミナントセブン)編スタート

 次の日。

 オリビアたちのテストが終わるのをボクたちは中庭で待っていた。

 生徒たちはみんなテスト中だし、というので3人そろってニンゲンの姿に戻っている。


 敷布をしいて、大きなポットでお茶を淹れて、クッキーをもって。

 束の間のミニピクニックだ。


 魔王さんやクラウリアさんと並んで、ぽかぽか日向ぼっこをしつつ時間が経つのを待つ。


 一応僕たちは『守衛さん』なので、オリビアやリュカちゃんになにか危険なことが起きたら、大声で知らせてくれる約束だ。

 といっても、教室と中庭は目と鼻の先だ(ちなみに、ドラゴンの目と鼻はけっこう離れているけど、ニンゲンや猫さんの目と鼻はすぐ近くにあるなと最近気づいた)。



「あうぅ~……のどかじゃのぅ……」


「えぇ、本当ですねぇ。マレーディア様」


「ぽかぽかだねぇ」



 三人並んで、のほほんと温まる。



「昨日、みんな遅くまで頑張ってたもんねぇ」


「うむ、ジャムパンもうまかったしのぅ。あのエスメラルダとかいう女、なかなかやるのぅ。うははは~!」


「マレーディア様、3つも召し上がってましたものね……恐れながら、ああいうのはテスト勉強をしている子どもたちに分け与えるものです」


「あぅっ!? で、でも『リュカが友達と食べるように』って持ってきたやつじゃし!?」


「あはは、魔王さんすっかりリュカちゃんと仲良しだね」


「……うむ」



 普段は照れ屋な魔王さんだけれど、なんだか素直にうなずいていた。

 その横顔を見ているクラウリアさんは、なんだかとても嬉しそうだ。


 魔王さんにお友達ができたらいい、ってクラウリアさん前からたびたび言っていたもんな。

 ボクも、オリビアがお友達に囲まれているのを見るのはとっても嬉しいもの。

 昨日、ジャムパン片手にリュカちゃんを訪ねてやってきたエスメラルダさんと同じだ。


 ぽりぽりクッキーを齧っていると、からんころーん、と鐘が鳴る。

 テスト時間が終わった合図だ。


 あちこちの教室から「そこまで!」という先生のするどい声が響いて、ざわ、ざわざわざわ……と生徒たちのざわめきが広がっていく。

 普段の授業の休み時間とは違う、なんだかウキウキした、ソワソワした……まるで絵本で読んだ『お祭り』みたいな雰囲気に、圧倒される。



「わあ。終わったみたいだね」


「うむ!」



 ぽふんっ、と音を立ててボクたちはミニドラゴンや黒猫や鷹の姿に化けていく。

 ちょっと不便だけど、オリビアたちが抱っこしやすい大きさなのが嬉しい。



「そういえば、エスメラルダさんが言っていた『話』って何だろうねぇ」


「さぁのぅ?」



 魔王さんは、ものすごく興味がなさそうなのを隠そうともせずアクビした。



「パパー、おまたせ!」



 オリビアが教室から駆けてくる。

 元気いっぱいだ。


 どうやら、テストは大丈夫だったみたいだね。



「……ふん、わらわにかかれば、あのような試験はへでもない。愚にもつかなんだっ」



 少し遅れて到着したリュカちゃんも自信満々で、ふふんと、胸をはっている。

 さすがリュカちゃんだね、とリュカちゃんに言うと、リュカちゃんはちょっと顔を赤くして、



「パパ殿に褒められるまでもありませぬっ!」



 と、つーんとした表情をつくった。

 それを見ていた魔王さんは、むふむふとお鼻をひくつかせている。



「そんなこと言うて、リュカ、今朝からめちゃくちゃ緊張してたじゃろ。我は見てたぞ~~にゃははは」


「なっ! それは見間違えじゃぞっ、マレちゃん!」


「ふふーん、事実じゃろ、じーじーつー!」


「まぁまぁ、マレーディア様。大人げないですよ?」


「あうっ」


「あはは……そうしたら、学院長室に行こうか」


「うん、行こう!」




   * * *



「……リュカちゃん、緊張しているの?」



 学院長室に向かいながら、



「なっ、何をいっておる。当たり前であろう……エスメラルダ様がわざわざ、わらわをお呼び出しになられたのだからっ!」


「あうぅ、がっちがちじゃな」


「ちょ、マレちゃん!」


「そのエスメラルダというのは、そなたの保護者なのであろう? なぜそんなに緊張するのじゃ?」



 魔王さんが尻尾をぷらぷら揺らして尋ねる。

 保護者って言うことは親みたいなものだろう、という質問だ。



「えっ、エスメラルダ様は、わらわの師匠じゃ! そんな、母さまのように甘えてよい存在ではないっ、偉大な方なのじゃっ!」


「……ふーぅん」


「わらわも、エスメラルダ様の一番弟子の名に恥じぬようにっ!! ならねばっ!!」



 ごごごぉっ、と燃え上がるようなやる気を見せるリュカちゃん。



「……ただの弟子に、ジャムパン持ってこんじゃろ」



 という魔王様のつぶやきは聞こえていないようだった。

 ボクもそう思うよ、魔王さん。


 学院長室に到着する。

 室内にいたのは、フローレンス女学院の創設者で理事長のエルフの賢い女王様、フィリス・フローレンスさん。

 そして、リュカちゃんの『師匠』である、エスメラルダ・サーペンティアさん。



 ボクたちが部屋にはいるなり、エスメラルダさんは、きっぱりと言った。



「――【王の学徒】、オリビア・エルドラコよ。そなたに、国王より勅命が下った」



 エスメラルダさんの言葉を引き継いだのは、フィリスさんだ。



「オリビアさん。【王の学徒】をあずかるフローレンス女学院の理事長として、そして【エルフの賢女王】フィリス・フローレンスの名において――あなたをたった今から、【七天秘宝(ドミナント・セブン)】の探索者に任命します」


「リュカ。そなたは、エスメラルダ・サーペンティアの弟子として、オリビアの補佐につとめるように」


「それから、古代竜殿や……そこな猫ちゃん達も手伝っていただけませんでしょうか」


「猫ちゃんたちて。我らに対する解像度低すぎない?」


「ボクたちもですか? でも……」



 ――七天秘宝(ドミナント・セブン)

 フィリスさんの持っている、光のオパール(ボクのお気に入りだった落とし物……)がついている【久遠の玉杖】が、そのひとつだ。


 たしか、ニンゲン界にあるなかでも、とっても高価で、強い力を秘めた秘宝だって聞いたけど――。



「オリビアとリュカちゃんが、……探索者ってどういうこと?」


―――

第8回ネット小説大賞受賞作です!

マイクロマガジン社様からの書籍化作業頑張っていますー。

書下ろしふくめ、とっても可愛い本になりそうですのでどうぞお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[一言] 実家に帰ったら残り全部あるんじゃ…… いや、パパさんが何処かで失くしてるパターンもあったか
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