ドラゴン、テスト勉強につきあう。①
書籍化作業がんばってます!!
めっちゃ可愛い本になる予感なので、お楽しみにです!!
フローレンス女学院に試験の季節がやってきた。
春学期と、秋学期。
毎週ある実力試験とは別に各学期に2回ずつ、試験が行われるんだって。
花の試験。
深緑の試験。
紅葉の試験。
新雪の試験。
とそれぞれ呼ばれているそうだ。
魔王さんは、『あう、いわゆる前期・後期それぞれの中間試験に期末試験ということじゃな』と言っていた。
なんでも、学園らぶこめ?というので得た知識らしい。
魔王さんはたまにボクにはわからない言葉を使うんだ。
2年生になったオリビアは、明日から始まる花の試験に向けて学習室と呼ばれる本校舎の1階にある広いテーブルでお友達と勉強会をしていた。
「イリアちゃんとかルビーちゃんは来ないのかい?」
とボクが声をかけると、オリビアはぬいぐるみサイズのドラゴンになっているボクのことを抱き上げてくれる。
机を囲んでいるのは4人。
オリビア。
デイジーちゃん。
レナちゃん。
それに、ケイトちゃん。
ケイトちゃんは、お父さんが宮廷料理人っていうとっても料理の上手な人らしい。本人も小さな料理人さんで、いま机の上にあるクッキーもケイトちゃんの手作りだ。
「んっと、イリアちゃんとルビーちゃんは、きょうはペトラ寮のお勉強会にでるんだって」
「へぇ、寮でも勉強会があるんだね」
「うん、どこの寮もやってるよ」
「そーっすね。でもオリビアたちはフォンテーヌ寮、イリアにルビーはペトラ寮……クラスでウチだけがアルボル寮でさびしーんで、いっつもこうやって勉強付き合ってもらってるっす!」
ケイトちゃんの言葉に、オリビアがうんうんと頷く。
どうやら、去年からずっとこういうふうに試験勉強をしてきたらしい。
「えへへ、みんなでお勉強楽しいねっ」
「はぁ~、全部実技試験にしてほしいっすよ……」
「……ぅ」
「ふふ、ケイトちゃんは実技が得意ですものね」
ケイトちゃんのため息に、寡黙なレナちゃんと優等生なデイジーちゃんが頷く。
4人はさっきからせっせと問題集を解いている。
さくさく、ほろほろ。
ボクが作る木の実のクッキーとは違って、噛めばじゅわっと甘いバターがしみ出してくるようなリッチなクッキーだ。
「そうおっしゃっていても、ケイトちゃんってばいつも高得点とっていらっしゃるじゃないですの」
「それは努力のたまものっすよ、努力の~ぉ」
「えへへ、ケイトちゃんは頑張り屋さんだもんね!」
「ふふふ~、オリビアほどではないっすけどね!」
みんなお喋りしながらも、黙々と手を動かしている。
数理魔法学っていう科目のお勉強なんだって。
オリビアの教室で、ボクは毎日授業をうけている。
それで知ったことなのだけれど、ニンゲンが魔法を使うためには色々なことに気をつけなくちゃいけないんだそうだ。
周囲に満ちる【マナ】の量。
自分のからだに蓄積している魔力の性質や、量。
それに、出力の方法? や、あとは属性?
とにかく、火を吹いてゴーッ!
みたいな感じじゃダメらしい。
ニンゲン、たいへん。
ドラゴンのボクにはとてもできない、細やかな技術ってやつだ。
「ねえ、オリビアちゃん。明日の実技試験なのですが……実はわたくし、すこし不安で……。オリビアちゃん、この間の雷撃魔法の授業、すっごくうまくいってましたわよね。そのぅ……わたくし、父の母の父のそのまた父の代から雷属性の魔法は苦手で……よかったら助けてほしいのだけれど」
「そうそう、コツとかないんすかぁ?」
「……ん」
クラスメイト3人に、キラキラとした目をむけられているオリビア。
オリビアは、学年に6人の特待生でつくられたクラス……通称【ゼロ組】のなかでも、とっても頼りにされている。
ボク、鼻高々!
オリビアは、数理魔法学のドリルから目をあげて、こてんと首を傾げる。
そして、ちょっと考えて――
「うーん……雷ばりばり~ってやってドーンッ!」
ぱんちのポーズをする、オリビア。
「……って感じかなぁ」
「なるほど、全然わかんないっす」
ケイトちゃん達は、そっとドリルにもどっていった。
ふふふ、雷バリバリ~ってやってドーン……か。
オリビア、もしかしてだんだんボクに似てきたかな?
可愛い日常パートです。
短めの更新を近日中にする予定です!