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幕間 ~魔王マレーディアのあうぅな友達~


「あう……教室に行くぞ、我とキャラのかぶっている娘……じゃなくて、えっと、あう……」



 マレーディアは、しっぽをふにふに振りながら口ごもる。

 またね、と去っていったドラゴンの背中を見送ったものの、教室に向かう足取りが重いのだ。



「じゃなくて……?」


「あうぅ~~~、リュカ・イオエナミ! ほら、こっちじゃ! 急がないと遅刻じゃぞ! 食パン咥えて走っても、ここには女子しかおらんのじゃ! まぁ、我としてはそれはそれでサイコーって思うけどもっ!」


「な、なにを言っておるのじゃ!? 意味が分からぬ……」


「だーかーらー……あぅっ!」



 ぽんっ!という音とともに、マレーディアは人間の姿を取る。

 リュカよりも年上の、少女の姿。

 そうして、リュカの手をきゅっと握りしめて――教室に向かって優しく引いてやる。



「我がリュカと一緒にッ! 教室に行ってやると言っておるのじゃ! 我とそなたは、その、えっと……とも、とも、とも……」


「………友達だから、か?」


「あうぅ!? 我がカッコよくキメようと思っていたのにッ!?」


「……。ふふ」



 リュカの顔が、ほころぶ。

 まるで、気のおけない友人に見せるような――そんな自然な笑み。



「うむ、行こう。えっと……マレちゃん?」


「馴れ馴れしいな!? べ、べつにいいけど!」



 なんていっても、我とそなたは友達じゃからな!

 マレーディアの声が、フローレンス女学院の中庭に響く。



「……もしかして、マレちゃんも結構うれしかったりするのか?」


「あうっ! そ、そんなことないわぁっ!!」



 少女ふたり。

 仲睦まじく、かしましく。

 おしゃべりしながら教室に向かう姿は、仲の良い友達同士のそれだった。 



   * * *



「そうですか。我が麗しき魔王マレーディア様……。友達が、できたんですね……」



 黒猫の姿にもどって、リュカが大人しく授業を受けているのを教室の後ろから見守る。

 先ほどあったことを鷹の姿で丸くなって日向であたたまっている従順なる騎士クラウリアにぽつぽつと話すと、クラウリアはまるで宝物を見つけたような、子猫をなでるような輝かしくも優しい声で呟いた。



「……まぁ、我は別に……友達など欲しくはないが……っていうか、こんなことしてないで城に引きこもりたいし……」


「ふふふ。でも、マレーディア様。僭越ながら申し上げますと、今すごく嬉しそうな顔をされていますよ?」


「……猫の表情などわかるわけなかろ」



 ぷい、とそっぽをむくマレーディア。

 けれどもその尻尾は、ぱったんぱたんと楽しげに床を叩いていたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 猫は尻尾で床を叩いているのは怒っている証拠ですよ。
[一言] うん。猫だからね。
[一言] クラウリアさんマジ保護者。
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