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ドラゴン、爆笑する。

 放課後。

 フォンテーヌ寮のデイジーちゃんのお部屋に集合した。


 そして。

 ボクと魔王さんは――悶え苦しんでいた。



「あっははは、なにこれ! す、すごい面白いね! あはははは!」


「あうぅ~、お、お腹が痛いのじゃ! にゃはははは、ギャグセン高すぎじゃろ~!」



 ああ、笑い過ぎてお腹がいたいよ!

 ひぃ、苦しい。

 原因は、レナちゃんだ。

 無口だけど面白い……というレナちゃんは、絵本を書くことが趣味なようだった。


 その絵本が、もう、すっごく面白いんだ!

 どう面白いかっていうと、もう……だめだ、笑えてきちゃう!



「にゃはは~、もうこれは! コンテンツにはけっこうウルサイ我も大満足じゃ、レナとやら天才じゃな、さては天才じゃな~!?」



 魔王さんも、黒猫の姿のまま涙を流して大笑いしている。

 昨日から、ぷりぷりとしていた魔王さんがケラケラ笑っているのを見てクラウリアさんもちょっと安心しているようだ。



「……ぁりがとぅ」



 床につくほど長い銀髪をふわふわ揺らして、レナちゃんは照れている。

 相変わらず、すごく小さい声だけれど。

 さっきよりもずっと聞き取りやすい。



「えへへ、レナちゃんのお話面白いでしょ! オリビアもだいすきなんだ!」



 まるで自分のことのように、えっへんと胸をはっているオリビア。

 レナちゃんも、オリビアの自慢のお友達なんだね。



「……ぁ、の」



 さらさらと、レナちゃんがいつも抱えている大きな革張りの本…‥レナちゃんの「なんでも帳」にペンを走らせる。


 そこには、



『でいじーのお花もすてき』



 という文字と、絵本の主人公の絵がかいてあった。


 主人公の絵の表情に、おもわずまた笑ってしまう。

 ああ、もう、これが思い出し笑いっていうやつなのか。ずっと面白い気持ちがおさまらないよ。



「うむ、わらわもデイジーお姉さまの生けられた花は好きじゃ。わびさびを感じる」


「まぁ、ありがとう。リュカさん」



 小さな花瓶に、色とりどりのお花が生けられている。

 校舎のおおきな中庭をお手入れしている小さな庭師さん……セラフィ・フローレンスちゃんから分けてもらったお花らしい。


 セラフィちゃんはどんなお花も大切に育てていて、それがお花からも伝わってくる。

 どのお花も嬉しそうで、のびのびとしているんだ。


 ニンゲンたちが神嶺オリュンピアスと呼ぶボクの住んでいる山のお花と同じくらいに、生き生きしている。ボク、あの中庭好きだなぁ。



「あぅ、レナとやら! 次の巻はないのか、次の巻は! 我はこの絵本気に入ったぞ!」


「……ぅ」



 ぽぽぽっ、と頬っぺたを赤くするレナちゃん。

 もそもそと肩からかけた大きな袋をさぐっている。

 やった、続きがあるんだ!


 ボクと魔王さんは、並んでワクワクとレナちゃんを見上げる。

 ……けれど。



「ふふふ。おじさまたち、もうすぐ新入寮生歓迎会がはじまりますから。お姉さまたちのお手伝いに行きましょう」


「あっ! そうだね。オリビアたちは2年生だから、教室まで1年生をお迎えに行く係なんだよ」


「……ぅ」



 レナちゃんが、『歓迎会はおいしいごちそうが、たくさん』と書いたなんでも帳を見せてくる。ごちそうかぁ、楽しみだなぁ。



「……あぅ? 歓迎会って、1年生を歓迎するんじゃろ?」



 くにーん、と黒猫姿の魔王さんが首を傾げる。

 猫の首って、すごく曲がるんだなぁ……。


 ボクもまねっこしてみるけれど、ドラゴンの首はあんまり曲がらない。ころん、と身体ごと転んでしまったところをオリビアが抱っこしてくれた。

 パパ、失敗!



「おい、我とキャラのかぶっている娘。おぬしも1年生じゃろ。教室にいなくていいのか?」


「わらわは遊びに来ているわけではない! ほかのノホホンとした1年生なんぞと一緒にいられるか!」


「あぅ、なんだその台詞は……ホラー映画ならおぬし死んでいるぞ……」



 つーん、とそっぽを向いてしまったリュカちゃん。

 あんまり、学校生活になじみたくないのかなぁ。



「じゃあ、リュカちゃんとマレーディアお姉ちゃんは食堂を手伝ってあげてね。お食事係のみんなが、いま用意してるよ」


「む……」


「お手伝いは大事よ、リュカちゃん?」


「むむぅ」



 あまり釈然としない様子のリュカちゃんだけれど、デイジーちゃんに手を引かれて渋々といったかんじで食堂に向かった。


 ごろごろと喉を鳴らして床で伸びている魔王さんを、クラウリアさんがつつく。



「マレーディア様? 私たちはあの娘の護衛をしなくてはいけないのでは」


「あうっ、忘れておった。あの娘、我に負けず劣らずコミュ弱じゃからな、少しは助けてやるか。このキュートなキャットスタイルで、人間の娘どももメロメロじゃ! 行くぞ、クラウリア~!」


「お声が勇ましいわりに寝転がったままなのは、ツッこまないでおきますね」


「あぅうぅ」



 クラウリアさんに引きずられて食堂に向かう魔王さん。

 なんだかんだ、魔王さんもリュカちゃんのことを気にかけているみたいだな。



「オリビアたちも行こう、パパ!」



 オリビアに連れられて、校舎に向かう。

 たくさんの1年生に「わぁ、【王の学徒】のお姉さまだ!」と、オリビアは大人気だった。


 フォンテーヌ寮の歓迎会で、おなかいっぱいにごちそうを食べて。

 夜はリュカちゃんといっしょにレナちゃんの絵本をこっそり読んで。

 思わず笑い転げたリュカちゃんが眠るまで、オリビアや魔王さんはリュカちゃんに優しく寄り添ってあげていた。


 ああ、学校って楽しいな。

お読みいただき、ありがとうございます。

オリビアの同級生のキャラをメモした紙を大掃除で紛失してしまいました、どなたか見かけた方は教えてください・・・・・(死)

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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえず、俺の周り(広島周辺)には落ちて無かったよー(笑)
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