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ドラゴン、追いかける。

生意気わらわ系後輩リュカちゃんとは、次回から仲良くなります!!

第8回ネット小説大賞期間内受賞、ありがとうございます!!!

 ちょうど昼休みになった。

 お家に帰る前にオリビアたちとフローレンス女学院の中庭で薬草茶を飲みながらお喋りすることになった。


「リュカ・イオエナミ……今年の首席入学者ですわ。魔力量も、技能も、口頭試問面接も、ほぼ満点とか。【七天秘宝(ドミナントセブン)】保有者エスメラルダ・サーペンティア様が東国から連れ帰って育てていらっしゃるとか。彼女の言う通り、『一番弟子』というのは間違いないですわ」


 オリビアの大親友、デイジー・パレストリアちゃんはカップを傾ける。

 デイジーちゃんのお家は、古くからの魔術師の家系ということで、そういう事情にも詳しいみたいだ。


「【七天秘宝(ドミナントセブン)】って、たしか……」


「母うえ……いえ、理事長が所持している【久遠の玉杖】がそうです。正確には、それについている強力な魔力を秘めた宝玉が、ですが」



 オリビアが持ってきた万能の薬草・月光草――通称エリ草を熱心に観察していたセラフィちゃんが教えてくれる。



「ああ。あの、ボクのお気に入りの白くて綺麗な石……」



 そう、ボクがずいぶん昔におっことして無くしちゃった綺麗な石。

 こんなところでまた見つけるとは思わなかったけれど、返してって言いにくいなぁ。



「そういえば、ほかにもいくつか、なくしちゃった綺麗な石があるんだよなぁ……」



 しょんぼり。

 肩を落としていると、オリビアがひょいっと何かを差し出してくれた。



「どうしたの、パパ? オリビアのぶんのクッキー食べる? ケイトちゃんのお菓子、おいしいよ」


「ええっ! オリビアがお食べよ」


「でも、パパ……なんだかしょんぼりしているから」


「パパのぶんのクッキーもあるから、大丈夫だよ」


「えへへ、そっか。ケイトちゃんはね、お休みのときは宮廷の厨房でシュギョーしてるんだって!」


「へえ、ルビーちゃんもお家のお手伝いしてたよね」


「うん、このブローチもルビーちゃんが選んでくれたんだよ」



 ルビーちゃんは宝飾店の娘さんで、休暇中にボクとオリビアとで買い物に行ったときに、すごくよくしてくれたんだ。

 中庭の端で、本を抱えたクラスメイトと何かお喋りしている。


 2年生になって、オリビア以外のお友達も、学校内でもっと自分らしく過ごしているように見えた。

 よかった、嬉しいな。

 オリビアも前回、学校で訪れたときよりもリラックスしてるみたい。


 ……うん、ボクも安心だな。

 もともと、オリビアのことを心配はしていないけど。

 いや、心配してないっていうのは嘘。

 いつだって、オリビアのことを愛しているし心配している……けど、心配しすぎ、干渉しすぎはよくないって『コレカラ・シシュンキ〜親子のしあわせな距離〜』っていう育児書に書いてあった。

 心配しすぎ、の反対語は信頼。

 ボクはオリビアのことを信頼している。



「……よし、ボクはそろそろ帰ろうかな」



 オリビアに忘れ物を渡したし、楽しそうに学校生活を送ってるのも分かったし。

 安心してお家に帰ろう……ボクが立ち上がった、そのとき。



 カーンカーンカーン!


 という鋭い音。

 校舎の北側にある塔から響いている。



「? なんの音……?」


「こ、これは警告の鐘の音ですわ!?」



 デイジーちゃんがガタン、と立ち上がる。

 周囲でお茶やお昼を楽しんでいた生徒たちも、慌てたり不安そうにしたり。



「今日って、避難訓練だっけ……」

「ううん。聞いてないよ」

「な、なんだか怖いよぅ……」



 上級生たちが周囲の下級生に駆け寄って落ち着かせようとしている。

 この鐘の音は、何かの警報みたいだった。

  


「ぱ、パパ……」


「大丈夫、パパがついてる」



 少し不安そうなオリビアを抱きしめてあげる。

 近くにいたセラフィちゃんやデイジーちゃんも、ボクのローブの裾を掴んでいる。


 どうしたんだろう。

 何か、トラブルかな?


 そんなことを考えていると、校舎中に不思議と響く声。

 あ、この声は……校長のクーリエさんかな?



『校舎にいる姉妹たち。全員、中庭へ避難を――庭園魔術による魔力障壁が張られています。今からの避難が間に合わない場合は講堂、あるいは宿舎の地下訓練場へ避難してください。北方から、亜竜の群れが我らが学び舎に侵攻していることがわかりました』



「な、なんですって!」



 生徒たちから悲鳴が上がる。

 ありゅう?

 竜、ドラゴン……って、え、ボク!?


 ボクがびっくりしていると、オリビアがデイジーちゃんの手を握りながら質問した。


「亜竜ってなぁに、デイジーちゃん!?」


「伝説の古代竜を模して造られたという、人工生物ですわ……たしか、北方のアルティナ帝国が開発していて……せ、戦争のための兵器だって……それが、どうして学校に」


「兵器!」



 それって、ニンゲンたちが喧嘩するときに使ってるやつだ。

 死んだりする!

 これは、大変だ。


 オリビアと友達を、ボクも守らなくちゃ。

 放送を聞いたセラフィちゃんが、毅然とした表情でみんなに指示を出していた。



「み、みなさん。はやく中庭に! 僕が長期休暇中に色々な薬草や樹木で組み上げた庭園魔術は、母うえの白き【久遠の玉杖】の加護を受けてます。絶対に大丈夫です……!」



 いざというときには、ボクもついているぞ!

 ふんす、とボクは鼻息もあらくオリビアを抱きしめる。



「あっ!?」



 オリビアが声を上げた。



「パパ、たいへん! 離して!」


「えっ、でも、危ないんだよ!?」


「さっきの、リュカちゃんが!」


「え?」



 リボンで結った黒髪を揺らして走っていく背中。

 さっき、オリビアに勝負を申し込んでいた1年生の子……リュカ・イオエナミちゃんだ。

 中庭とは逆方向……北の塔の方に駆けていく!



「まって、リュカちゃん! 危ないよ!」


「……ふんっ、【王の学徒】なのに隠れるのか? わらわはエスメラルダ様の一番弟子! それに、竜の血を引く高貴な血統を引いているのじゃ。亜竜ごときに逃げ隠れなどしないっ……ぜーんぶ迎え撃ってくれる」


 オリビアが、リュカちゃんの背中を追いかけていく!

 そんな、一人じゃあぶないよ!


「お、オリビア!」


 ボクも慌てて二人の後を追う。

 後ろから「わわ、オリビアちゃん、それにおじさま!」と、オリビアのクラスメイトたちの声がするけど……中庭が安全っていうのを信じよう。


 オリビアを、守らなくちゃ。

 急げ、急げ……。

 ああ、人間の体ってなんで足が二本しかないんだろう!



 

久々の更新です。

年末進行やら年始締め切りラッシュやらですっかり遅くなってしまいました。ごめんなさい。



ーーーそして、皆様のおかげさまで『突然パパになったドラゴンのほのぼの子育て日記』は書籍化します!!!! 応援ありがとうございます、ガンガン更新するぞーー!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ついに書籍化っ!٩(。•ㅂ•。)و絵が大変だ(マジレス) おめでとうございます!(´∀`*)
[一言] 書籍化おめでとうございます。
[良い点] 書籍化おめでとうございます! パパさんの、人の心の勉強ぶりもすごいし、ちゃんと良い本を選べているのもすごいですね!
感想一覧
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