ドラゴン、娘の誕生日を祝う。(序)
ちょっと短め。
誕生日編は3話構成の予定です。
楽しいお出かけから、数日後。
いよいよ寒さも深まってきたある日の朝のことだ。
クラウリアさんが、昼食の支度をしていたボクのところにやってきた。
ちょっと、秘密裏に話がしたいのだと。
「古代竜さん」
「おはよう、クラウリアさん。魔王さん用の生姜クッキーならそっちの棚にあるけど」
「いいえ、そうではなく……オリビアさんの誕生日のことでお話が」
え?
オリビアの、誕生日?
「オリビアさんにですね、お誕生日のお祝いをしてあげたいと思いまして」
「お誕生日のお祝い」
ああ、そう!
実は、それはボクの長年の悩みだった。
育児書や絵本で、ニンゲンは生まれた日をケーキとかでお祝いするというのを知った。
オリビアにもお祝いをしてあげたい……と、ボクも思っているのだけれど、いかんせんオリビアの誕生日がわからないのだ。
ボクがオリビアと初めて会ったのは、オリビアがまだまだ幼い子どもだったとき。
年齢はかろうじて知っていたオリビアだったけれど、誕生日の話題はあがらなかった。
それで、いままでお祝いしてあげられていなかったのだけれど。
「それ、絶対にやりたい!!」
「そうでしょう、そうでしょう。実は、オリビアさんがですね――『もうすぐ、オリビアの誕生日なんだ』と、マレーディア様に耳打ちをされていまして」
「ええっ!!!!!!!」
オリビア、自分のお誕生日を知ってたの?
ボクはびっくりしてしまう。
いったい、どうしてボクには教えてくれなかったんだろう……何か、事情があるのかなあ?
「それで、オリビアの誕生日っていうのはいつなんだい?」
「ええ。それがですね……待春節のお祭りの日だそうです」
待春節。
ニンゲンのお祭りだ。
年間で一番寒い時期に、春の訪れを待ち望んで盛大なお祭りをするのだ。
とんがり帽子みたいなもみの木に、たくさんの飾りをつけて。
鳥の丸焼きを家族で食べて。
プレゼントを交換する、ハレの日。
その日が、オリビアの誕生日――なのか。
「あれ、でも待春節って」
「そうなんです」
ボクは、あまりニンゲンの暦には詳しくないけれど。
待春節は、寒さの厳しいこの時期で。
「三日後なのです! 我らが魔王様も、この計画には非常に関心をよせていらっしゃいます。オリビアさんのサプライズ誕生日パーティーを成功させる三人同盟を結成しましょう!!」
クラウリアさん、ぐっと拳を握る。
その指には、梔子色の石がはまった指輪が光っていた。
オリビアの、誕生日パーティ。
しかも、さぷらいず。
「うんっ、素敵なパーティーにしようっ!」
喜ぶオリビアの表情を想像する。
それだけで、ボクは、とってもワクワクした。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
書き溜めゼロではじめた連載ですが、応援のおかげでここまで毎日更新をすることが出来ました。明日以降は不定期更新(月に4回~8回程度)となる予定です。
伝説の薬草エリ草(自由研究)の処遇。
「リュウノミコ」と呼ばれたオリビアの魔力。
パパのとっておきの宝玉……色々とお楽しみが残っていますので、どうぞお楽しみに。
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