ドラゴン、土産話をする。
今日は、おやすみ前に読むとほっこり度アップな内容です。
お家に帰ると、魔王さんとクラウリアさんが出迎えてくれた。
ふたりとも今日はずっと寝ていたのか、パジャマを着たままで、ふたりとも本当に仲がいいのだなあとボクはほっこりしてしまう。
簡単に夕食を済ませると、オリビアの新しい服をお披露目するファッションショー(オリビアが選んでくれたボクの服もお披露目した!)が行われた。
魔王さんは、「あう〜いいないいな、どれも似合うぞオリビア!」と大喜びだった。オリビアから次々に飛び出す、今日一日の冒険譚にボクたちは聞き入ってしまう。色とりどりの思い出話は、止まらない。
「それでね、おばあさんがパパとオリビアはそっくりって言ってくれてね!」
瞳をきらきらと輝かせて喋るオリビア。
ああ、こういうのっていいなあ。今日あった楽しかったことや、嬉しかったこと。そういうのを、家に帰ってもう一度みんなで話すってーーなんだか、素晴らしい一日をもう一度体験しているみたいだ。
とても楽しそうにオリビアの話に耳を傾けていた魔王さんたち、だけれど。
「それでね、悪い男の人たちを、パパがドラゴンになってね、がおーって! 追い払ってくれたの!」
オリビアがえっへん、と胸をはったところでフリーズした。
魔王さんとクラウリアさんが顔を見合わせる。お月様色の目をキョトキョトさまよわせながら、魔王さんはぶつぶつと呟く。
「あう? え、……古代竜の姿に? いきなりなったの? え、え、ちょっとそれってイチマタハイチディーロクのSAN値チェックってやつじゃない? 不定の狂気不可避では?」
魔王さん、たまに言っていることが分からない。
多分、魔族語だ。
「それでねっと、ぜんぜんおててを離してくれないからね、オリビアがちょっとだけパンチしたのっ」
「パンチ」
今度はクラウリアさんが青ざめた。
「パンチって、ニンゲンに向けてですか? そのへんの地面とかじゃなく?」
「うん、ちゃんと手加減したよ。クラウリアおねえちゃん!」
「そ、そうですか……約束を守ってくれて嬉しいです、オリビアさん」
「えへへっ!」
魔王さんとクラウリアさんはほっぺたを寄せ合ってこしょこしょ囁き合っている。
「あうう、大丈夫なのか。その人間は……」
「たぶん……ダメでしょうね……少なくとも、数ヶ月は再起不能かもしれません」
「あうぅ、我も同感だ……だってオリビア、エルフの防護壁を砕いたのであろう? ちょっとすごくない?」
「というか、話を聞く限りその暴漢はオリビアさんに手をあげたみたいですし……」
「あうっ! そうであった。それは、ふつうに」
「自業自得ですね、ええ」
うんうん、と何かに納得したように深く頷いている魔王さん……のとなりで、やっぱりうんうん頷いているクラウリアさん。
本当に仲良しだなあ。
「あ、そうだ。オリビア」
ボクはちょいちょい、とオリビアの肘をつつく。
「オリビア。いいのかい、お土産は」
「あっ! そうだった」
お土産。
楽しい一日のお土産に、とオリビアが選んだペアリング。
魔王さんの瞳みたいな梔子色の石があしらわれた指輪と、クラウリアさんの髪の色みたいな桜色の石をつかった指輪。
クラスメイトのルビーちゃんが丁寧に包んでくれた小箱を取り出すと、オリビアはぱかりと開ける。
「……あう?」
魔王さんがキョトンと首を傾げた。
「お土産だよ、マレーディアお姉ちゃんとクラウリアお姉ちゃんに!」
「え、お土産……ですか?」
ぽかんとしている二人が、きらきら光る指輪をじいっと眺めている。
まさか、お土産を買ってきてもらえるなんて思わなかったようで、二人で目をぱちくりさせている。
「あううぅ、オリビア! な、な、なんといい娘なのだぁ〜っ!」
「マレーディア様、お土産なんてもらうの初めてですもんね」
「あう……そ、そうなのだ」
「えへへっ、あのね。お姉ちゃんたちの色を選んだんだ! とってもきれいでしょ!」
おずおずと、リングに指を伸ばす魔王さん。
ふと、その指を止めた魔王さんは、オリビアに問う。
「クラウリアの色、か……のう、オリビア」
「なあに、マレーディアおねえちゃん」
「うん……我、こっちを貰ってもいいか?」
「え? ピンクの方?」
「あら、マレーディア様。私もちょうど、そちらの梔子石の指輪を頂けないかと思っていたところなのです」
「クラウリアお姉ちゃんが、黄色い方をつけるの?」
魔王さんとクラウリアさんは、お互いにお互いの色のリングに指を通す。
サイズ調整の魔術がほどこされているという指輪は、ふたりの指にぴったりとはまった。
愛おしげに、指に光る小さな宝石の粒を眺める魔王さん。
「オリビア。ありがとう……我、ずっと大事にする」
「ええ。私からも、ありがとうございます。オリビアさん」
「……? えっと、お姉ちゃんたちが嬉しいなら、オリビアも嬉しいっ」
思っていた方とは違う指輪が手に渡ったようだけれど、本当に嬉しそうに微笑んでいる魔王さんたちにオリビアは満足げだ。
「それにしても、こうしてプレゼントを貰うなんて……なんだか、人間たちが祝うお誕生日というやつみたいですね」
そうつぶやいて、クラウリアさんはカップのお茶を静かにすすった。
しばらくすると、「ふわぅ」とオリビアが大きな欠伸をもらす。
おや、とそれを見ていた魔王さんがオリビアのほっぺたを、ぷにぷにとつつく。
「あぅ。オリビア、もう眠いのではないか?」
「ん……まだ、おしゃべりしたいよぅ……」
「明日もたくさんお喋りできますよ、オリビアさん」
「うぅ……」
とろとろ、と落ちてくる目蓋。かくかくと首が座らない。
もう、相当に眠いみたいだ。
ボクはそっとオリビアを抱っこして、寝室へと運んであげることにした。
「むにゅ……パパ、おやすみ、にゃさい」
「うん。おやすみ、オリビア」
お出かけとっても楽しかったねえ。
寝室に向かいながら、そう囁くと、オリビアがふにゃりと頬をゆるめる。
「ん、……とっても……たのしかったねぇ、パパ」
はんぶん夢のなかから応えてくれるオリビアの声が、ボクはとっても嬉しかった。
今夜は、オリビアがぐっすり眠るまでそばにいさせてね。
オリビアの寝顔、本当に天使みたいだなぁ。
ご心配かけましたが、ご覧の通りパパの服もオリビアの新しい服も無事です(笑)
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