ドラゴン、「がおー!」ってする。
※更新から10分くらい、コピペミスによるループをしていました……!! 申し訳ございません※
20191021 12:20修正済みです。
「パパ、すっごく楽しかったね!」
「そうだね、オリビア。すごく楽しかった」
ずっと約束していたお出かけは、本当に楽しかった。
あとは、街から少し離れたらドラゴンの姿にもどってお家までひとっ飛び。
空は空色と紫色の混じる、夕焼け空。
まだ日没まで時間はあるだろうけれど、
ミランダの街の外門を出て、ボクとオリビアは並んで歩く。
街の影が遠くになってきて、あともう少しだけ歩こうと、思った瞬間。
「やっちまえ!」
と、なんだか乱暴な声がした。
なんだ、と思って声のした方を振り向く。
ガツンッ、と。
頭に衝撃が走った。
「……?」
なんだろう、何か当たった?
鳥さんの落とし物かなぁ……そんなことを思っていると、さっきの声の主が尻餅をついた。
「ひぃっ!」
「あらま。誰ですか? いま、ボクにぶつかった?」
「ば、バケモンだ……金塊持ってフラフラしやがる、ただのぼんやりした金持ちかと思ったら、鉄のステッキで殴ったってえのに、ふらつきもしねえ」
「え? なぐ……?」
「こうなったら、そこの娘だけでも……!」
……娘?
オリビアの方を見ると、オリビアが屈強な男に腕を掴まれている。
物陰にかくれて、ボクたちを狙っていたんだ。
たいへんだ。
「こっちに来い!」
「っあ、パパ!」
ぐいっと腕を引っ張られて、オリビアの表情が凍る。
オリビアから、その手を離せ!
「へへへ……お嬢ちゃんのそのブローチだけでも相当な稼ぎに、」
「………なせ」
「あ? なんだ、優男が凄んだって怖くもなんともねえぞ」
優男?
ちがう、ボクは、ボクは!
「はなせ、」
「なっ、ヒェッ!?」
メキメキと、ニンゲンの皮が破れる。
大きなボクの翼。鋭い爪、長い年月を生きた、生きた、おおきな、からだ。
「ボクは、オリビアのパパだっ!! オリビアからッ、その手を離せええぇえエェエッ!!!」
ボクは、怒りのままにがおー、と吠える。
その叫びに、ドウッという振動とともに空気が、大地が、震え上がる。
「う、うわああああ!!! ど、ドラゴンだぁああ!!」
ボクを殴った男は、悲鳴をあげて逃げていく。
まだ隠れていた暴漢たちが、同じように散り散りに逃げていった。
でも、まだだ。
オリビアの腕を握っているもう一人の男は、オリビアの腕を握りしめたまま腰を抜かしてその場にへたり込んでいる。
離れろ。
オリビアから、離れろ!!
ボクは、目の前がくらくらするくらいの怒りを感じる。
大切なオリビアに、酷いことをされているんだ。
――ボクが、ぐるると唸っていると。
「……えいっ」
「へぶっ!」
オリビアが、光の粒子……魔力をまとったパンチを繰り出した。
魔王さん直伝の魔法と、魔族の騎士クラウリアさん直伝の体術を組み合わせたオリビアの得意技。エルフの賢女王、フィリスさんの防護壁をパリンと割った一撃だ。
男は、ふっとんだ。
きれいな弧を描いて上空を飛んでいき、ドッサァという音とともに地面に激突した。
オリビアは、パンチを放った姿勢から戻るとドラゴンの姿のボクに駆け寄ってくる。
「ぱ、パパ~っ!」
「わ、わ、オリビアっ」
てってって、と走ってくるオリビアにボクは焦る。
ボクは、怒りのあまりニンゲンの姿に化ける余力がなくなってしまっていたのだ。
空を飛ぶとき以外は、ほとんどオリビアにも見せていない本当の姿。
将来、ニンゲンとして幸せになってほしいから、パパがドラゴンじゃあ変だと思って――それに、この姿、大きくて怖いかも知れないし。
「パパ、大丈夫っ!?」
「……オリビア」
オリビアは、ボクの鼻先にぎゅうっと抱きついてくれた。
ニンゲンの姿をしているときと全く変わらない信頼で、ボクに甘えてくれる。
「オリビア。こわく、なかったかい?」
「ううん、へっちゃら! パパが守ってくれたもの」
いや、ボクの吠えた声のことをいったんだけど……。
ぎゅうぎゅうと、鼻先を抱きしめるオリビアの温かさに、ボクはだんだんと気持ちが落ち着いてくる。
「パパって、やっぱりすごいんだね。とっても優しいのに、とっても強いのっ!」
オリビアが、やわらかな頬をすりっと擦りつけてくる。
ボクは理解した。
そうか。
オリビアは、ボクの娘。
ボクは、オリビアのパパだ。
……姿形なんて、どうでもいいんだね。
「ありがとう、パパ」
血は繋がっていないけど、ドラゴンとニンゲンだけど、大丈夫。
だって、ウチの娘の、オリビアの「パパ」は――ボクしかいないのだから。
「オリビアこそ、大丈夫だったかい?」
「うんっ!」
と、オリビアは自信満々にうなずいて、
「ちゃんと、手加減もできたよっ!」
グーにした手を見せてくれた。
ボクはそんなオリビアの表情に、心底ほっとする。
「そうかぁ。オリビア、無事でよかった。本当に」
「えへへっ」
「さあ、せっかくこの姿になっているからね。帰ろうか。オリビア、背中に乗って!」
「うんっ!」
ボクの爪から、オリビアが背中によじ登ってくる。
ボクは大きく翼を広げる。
さあ、帰ろう。
ボクたちのお家へ。
つおい!!(笑)
ちょっと本気モードの人外ドラゴンパパさん、かっこいいですね!!!(力説)
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「パパさん、かっこよかった!!」
「オリビアちゃん可愛い!!!」
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