ドラゴン、宝石拾いに行く。1
(※投稿から20分くらい、ループを起こした文章を投稿していたため修正しております)
昨夜、フローレンス女学院からの長い旅をおえて、夜中に帰ってきたオリビア。お風呂でほかほかになったあとに、おやすみのホットミルクを飲んでそのままお布団にはいった。
あのね、あのね、とお喋りをしたくて飛び跳ねているオリビアをなだめるのは、ボクとしても苦しかったけど――よい子は早寝早起きなのだ。『寝る子は育つ』っていう育児書に書いてあったしね。
……そうして、朝がくる。
ボクはわくわくして、全然眠れなかった。
日が昇ったら、オリビアが起きてくる。
***
朝ごはんの木の実クッキーをサクサクかじって、蜜たっぷりの紅茶を飲む。
そうして、柑橘ジャムたっぷりのヨーグルトを食べたらごちそうさま。
定番の朝ごはんじゃあないけれど、オリビアのお気に入りばっかりをあつめたメニューだ。
ごちそうさま、とオリビアは口を拭う。
「ね。パパ、明日はお出かけだよねっ! オリビアとお出かけだよねっ!」
「うん、そうだよ。オリビア」
オリビアがずっと楽しみにしていた、街へのお出かけだ。
入学準備のために出かけた繁華街、ミランダの街にいくことになっている。
いまから楽しみだなあ。
「えへへっ、オリビアも楽しみっ」
オリビアは帰ってきた。
学年末の進級試験を無事に終えて、ひとりで馬車を乗り継いで帰って来たのだ。
「あれ」
食器をもって立ち上がったオリビアの頭にボクはそっと手を置いた。
「オリビア。また、背が伸びたんだね」
「うんっ」
少し前までは、ボクの腰あたりまでしかなかったオリビアの身長は、おへそあたりまで伸びていた。お家で着ているワンピースも、入学前まではひざ下の丈だったのに……もう、ひざよりうんと短くなっている。
「あした、お洋服も買おうね。パパ!」
「そうだね。制服のローブも直してもらうかい?」
「ローブはね、学年の終わりに学校に提出しちゃったの。学年が上がると、ローブの裾とかそでに刺繍をしてもらえるんだよっ」
「へえ。ああ、たしかにお姉さんたちは裾に何本も刺繍の線がついていたね」
「次の春になったら、おリボンも赤からクリーム色になるの」
「ああ、2年生の学年色だね」
「そうなんだよ。第2学年はクリーム色で、第3学年は若葉色、第4学年は緑色で、第5学年は鼠色。それで、最上級学年はね、すみれ色のリボンなの」
オリビアのお喋りは止まらない。
「あのねっ、オリビア、最高学年のリボンをすっごく楽しみにしてるの……スミレ色、パパの髪の毛の色みたいでとってもきれいだから!」
……だって。
そっか~~!
ボクは照れてしまった。
***
お日様がすっかり登って暖かくなると、ボクとオリビアは軽食を持って外に出た。
お出かけ……というか、ご用事をすませに。
「ニンゲンの街で買い物するから、金を拾いに行こうね」
「わーい、ほっこら! ほっこら!」
オリビアはぴょこぴょこスキップをして、ボクの横でご機嫌だ。
ボクが長いこと寝床にしていた祠には、きれいな宝玉や金貨がたっぷり、それこそ山のように眠っている。
もともと、金はじゃらじゃらしていて寝転ぶと気持ちいいので住み始めた。
宝玉は、きらきらしてキレイだから、長い長い年月をかけてたくさん集めたのだ。
フィリスさんが持っていた杖……いまは【七天秘宝】とかって呼ばれている虹色に輝くオパールもボクのお気に入りのひとつだった。
「なんだか、あの金はちょびっとでも結構価値があるみたいだから……5粒くらいあれば足りるかな?」
1粒で小さい本屋さんを買えるっていっていたよな、昔。
オリビアに似合うお洋服はなんでも買ってあげたいから、5粒。服屋さん3軒くらいなら買えるよね。
うん、完璧な計算。
さすがボク!
てこてこ歩いていると、オリビアが「あっ!」と何かを思い出した。
「そうだ。あのねっ、パパ」
「なんだい、オリビア」
「あのね、選抜クラスの課題で、卒業までに自分の杖を作るんだって」
「杖……って、フィリスさんが持っていたみたいな?」
「うんっ。ほんとは、杖じゃなくても、盾とかペンダントとか、腕輪や指輪……あと首輪とかでもいいんだって。でもオリビアは【王の学徒】だから、杖がいいって」
「そうなんだ」
「卒業課題っていうんだって。第2学年から、少しずつ作成を始めるんだよ」
卒業課題かあ。
今から5年後、オリビアが学院を卒業して……遠い未来に感じるな。
何百、何千、何万年を生きてきたドラゴンのボクだけれど、オリビアと過ごす今の日々がまるで永遠みたいに感じる。
でも、その日になってみたら、きっとあっという間に感じるんだろうな。
「それで、フィリス様に杖に使う宝石を手に入れるようにって言われているんだ」
フィリスさんは言ったそうだ。
『まあ急ぐ必要はありませんが……せいぜい、よい宝石を見つけることね。この虹色に輝くオパールを冠した【七天秘宝】がひとつ、久遠の杖には及ばないでしょうけれど』
と。
その宝玉、ボクのお気に入りだったんだけどなあ……。
「うーん、宝石か。祠にいっぱいあるから、一緒に選ぼうか」
「やったーっ!」
ボクの言葉に、オリビアはうきうきとした足取りをはやめる。
どんな宝石がいいのかなあ。
洞の奥にある、ボクのお気に入り宝石入れを見せてあげようかな。
よーし。
パパ、とっておきの宝石を出しちゃうぞ!
パパさん、オリビアが帰ってきてご機嫌です。
オリビアも嬉しそうですね(笑)
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今日も、最強ドラゴンと可愛い娘のほっこりストーリーで癒されてください♪
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