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ドラゴン、帰りに台風を「フッ!」とする。

台風、とんでけ~~。

 ――さて。


 今度こそ帰路につくボク。

 草原にある小高い丘の上にあるフローレンス学院の門をでると、気持ちのいい風が吹いていた。秋の風だ。少し冷たくて、冬がもうすぐ訪れるのを感じる。


 オリビアとフィリスさん母娘と、学院長のクーリエさんが見送ってくれた。



「パパ、気をつけてねっ!」


「うん、ありがとう。オリビア」



 さて、みんなから見えなくなったらドラゴンの姿になって……そんなことを考えていると。

 クーリエさんが一通の手紙を差し出した。



「例の、万能の薬草――エリ草かもしれない植物についてです。もしかしたら、例の論文でオリビア・エルドラコさんが王立薬学院から表彰をうけるかもしれません。もしかしたら、名誉博士号の可能性も……」


「ええっ」


「それには実物が必要です。もし実物があれば、その手紙にあるとおりの本数を次の学期にお持ちください」



 ああ。

 お家の庭でいっぱい育ててるから、それはお安い御用だけど。

 博士だって!

 オリビア、すごい!!


 ボクは嬉しくて、ルンタッタの気持ちになる。

 ようし、あの草への水やり頑張るぞ!



「おじさん、ありがとう。僕、フローレンスの生徒になれるように少し頑張ってみようと思うんだ」



 セラフィちゃんが言う。

 フィリスさんが涙ぐんでる。


 仲直りできて、よかったね。



「そうしたら、僕、園芸部を作るんだ。……オリビアちゃんが見つけたエリ草、学院内でも育ててみせるよ」


「わたくしも、セラフィを応援しますわ」



 ぎゅうっと手を握っている母娘。

 オリビアは、こてんと小首をかしげてボクをみあげる。



「パパ、また次のお休みね。お出かけするの、ぜったいね!」


「うん。パパも楽しみにしているからね、オリビア」



 ばいばい、と手を振る。

 オリビアたちの影が小さくなるまで、何度も、何度も、振り返って手を振る。


 じゃあね、オリビア。

 次のお休みまで。


 オリビアの学校生活が、とびきり楽しくって素晴らしいものになることを、パパは心から祈っているよ。



***



「うん、そろそろいいかな」



 学院を振り返る。

 よし、誰も見ていない。


 うんと遠くまで離れたので、ボクはドラゴンの姿になってお家に帰ることにした。

 ビューンと飛べば、夜には帰れるだろう。


 魔王さんたちと会うのも久々だなあ。


 ボクは本来の姿をあらわしていく。


 視線が高い位置になる。

 背中から翼がひろがる。

 体中に、力が満ちてくる。



「よぅし、帰るぞー」



 バサッと空気を掴んで飛び上がる。

 空に舞い上がって、山に向かってひとっ飛びだ。


 秋の風は気持ちがいいなぁ。

 オリビアと一緒に暮らすようになってから、まえよりもずっと季節に敏感になった気がするボクである。






「……む?」



 お山に向かって飛んでいると、目の前に黒い塊があることに気づいた。

 わあ、雲だ。

 もっというと、ものすごく大きくて黒い雲だ!



「たいへん。嵐だ!」



 ニンゲンたちが、台風って呼んでるやつ!


 あの雲の下は、きっとすごい風が吹き荒れて、とんでもない雨が降っているんだろう。

 雷だってビシャンビシャン落ちているかもしれない。

 村や町があったら、ちいちゃいものたちは大変だろうなぁ。


 っていうか、そこ。

 ボクが通るんだけど。


 嵐の中を飛ぶの、雷がチクチクするし寒いし嫌なんだよなあ。



「よーし、通りかかったのも何かの縁だな」



 ボクは大きく息を吸い込む。

 そうして、目の前の大きな嵐の雲に向かって。



「ふゥ~~~~~~ッ!!!



 っと息を吹きかけた。

 どいてどいて~、邪魔だよ~という気持ちをこめて。


 ブワッと一瞬ふくらんだ嵐は、散りぢりになって消えた。

 わあい、青空!



「よしよし。早く帰って、しばらく眠ろうっと」



 ボクはご機嫌で、ばさばさと羽を鳴らして飛んだ。

 お家はもうすぐだ。



***



 ひさびさのお家に帰ると、大家さん……もとい、この元魔王城の主である魔王さんがリビングで「あうあうぅ~」としおれていた。



「あれ、どうしたの。魔王さん?」


「古代竜さん、おかえりなさい。マレーディア様は、その……」



 クラウリアさんに背中をさすってもらいながら、魔王さんはずびずび鼻を鳴らして教えてくれた。



「あうぅ……我、大きい嵐が来るから楽しみにしていたのだ……かっこいいマントも準備したし、メイクだって練習したし、……嵐の中でマントをはためかせる超美麗なる魔王マレーディア様の写真を、ツノッターにアップしようと思っていたのだ……」



 シャシン?

 なにそれ……魔族さんの技術なのかな。



「いえ、私はそれ危ないから止めてくださいって何度も言ってるんですけれどもねっ!? とにかく、なぜか嵐が進路上で消えてしまったみたいでこの調子なんですよ……マレーディア様、嵐の中で写真撮ったりしなくても、マレーディア様は十分に美麗な魔王様ですよ」


「あうぅ~、クラウリア~っ」



 嵐が、消えちゃった。

 あちゃ~……、とボクはほっぺたを掻く。

 消しちゃダメだったのかな? いや、でもクラウリアさんはすごくホッとした顔してる。



「そのぅ、魔王さん。それは残念だったね……よかったら、今度ボクが羽ばたきで風を起こしてあげるよ。青空のしたで、そのシャシンってやつをしたほうが楽しいよ!」



 ボクはめそめそしている魔王さんを励ます。

 とりあえず、魔王さんの好きな甘いホットミルクを作ってあげることにした。

 はやく元気出してね、魔王さん。



 ああ、それにしても次のオリビアの休みが楽しみだな。

 一緒に街にお出かけなんて、入学準備のとき以来――二回目だ。


 あとで、『パパが娘とお出かけするときの10のマナー』っていう本を読んでおこう。

 世の中には、ボクにぴったりの育児本がたくさんあるんだ。

パパさんにかかれば、台風もひと吹きw


お読みいただき、ありがとうございます!!!!

評価ポイントや感想、とても励みになっています。誤字報告もありがたいです。


***


みなさん、台風気を付けて過ごしてくださいね。

嵐の三連休は、最強ドラゴンと可愛い娘のほっこりストーリーで癒されてください♪


アッ!!!! 10万字(文庫1冊分)到達です!!! 連載21日……自身最速です!!

ブクマ・評価・感想などの応援、ぜひ、お願いしますッ!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 安心と信頼のなんでもある育児本w
2021/04/04 15:51 退会済み
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