表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/178

ドラゴン、学校に呼ばれる。2

 学校に呼びだされて、通してもらった応接室。

 学院長と理事長に真剣な面持ちでされた話を要約するとこうだった。



「オリビア・エルドラコは、世界を揺るがす才能を持っています。フローレンス女学院の校長として断言いたします。特別奨学生として、金銭的援助をさせてほしい。さらに、【リアリスの六賢者】のひとりでもある学院の創設者、いと高きエルフの賢人フィリス・フローレンスによる特別指導を実施させてほしい」



 ――と。

 ううん、とボクは悩んでしまった。

 オリビアが褒められることは嬉しいのだけれど、でも。



「うーん。少し、考えさせていただけませんか」


「えぇっ!?」



 ボクがそう言うと、学院長のクーリエさんが大きな声をあげた。びっくりした!



「おおぅ、学院長さん。そんな大きな声を」


「当然ですっ! いいですか、栄誉あるフローレンス女学院の特別奨学生……【王の学徒】ですよ!? 普通は二つ返事で……」


「でも、オリビアには聞いたのですか?」


「……は?」


「オリビアには、その特別奨学生になるかどうかを聞いたのでしょうか」


「いえ。まずは保護者の方に」


「じゃあ、オリビアに聞いてみないとわからないじゃないですか」



 ボクは、学院長さんに正直なところを伝える。


 だって、オリビアは学院で楽しそうにしていた。お友達に囲まれて、ニコニコしていた。ボクといるときのオリビアも幸せそうだけど、学校での笑顔はまた違ったものだった。


 それなら、その生活を変えるかどうか決めていいのはボクじゃない。オリビアだ。



「オリビアがその【王の学徒】になったら、学院で過ごす時間は減ってしまうんじゃないですか?」


「主要な授業は、履修できます。もちろん飛び級で……」


「飛び級になったら、いまのお友達と別れなくちゃいけないんですよね?」


「当然です」


「それに、そのフィリスさんの指導っていうのもオリビアはひとりだけで受けるんじゃないですか?」


「それについては寮ではなく、フィリス様の邸宅に住み込みすることで薫陶を」


「じゃあ、お友達とも別れるんですよね」


「しかし、それ以上にオリビアさんの才能にとって重要な!」


「それを選ぶのは、オリビアです」


「そんな」



 クーリエさんは絶句する。

 でも、仕方ないことだ。ボクはオリビアのパパとして、オリビアが幸せな生き方を、オリビアに選んでほしいんだ。


 オリビアのことについて、本人抜きでボクが決めるなんて変なことじゃないか。


 この学校に入学すると決めたのも、試験を受けにきたときにオリビアが「パパ、すごいね。とってもすてきな学校だね!」と喜んでたからだったし。


 ふいに、ずっと黙っていたフィリスさんが肩を震わせて。



「……ふっ、あっははは!」


「フィリス様?」


「いやあ、エルドラコ氏でしたか。いい、実にいいですよ!」


「はあ?」


「実のところ、わたくしも我が学院も変質してしまったと、頭を悩ませていたところです。どの生徒の親も名誉や学歴、ステータスを求めて我が学院の門をたたくものばかり……未来ある女子が幸せを手にするための教育を、というかつての志とは遠く離れてしまったと思っていましたが……ふふっ、我が学院にあなたのような保護者がいるとは」


「フィリス様、そんな!」


「クーリエ。お前もわかっているのではないかしら? エルドラコ氏のいうとおり、どのような教育をうけるかはオリビア自身が選ぶべきだと」


「それは、そうですが……」



 学院長さんは、眉間の皺をさらに深くした。

 フィリスさんは構わず続ける。



「今日の授業が終わったら、オリビアとお父上を交えた三者面談を行いましょう。オリビアが特別奨学生になるかどうかは、そこで決める……なんなら、わたくしによる最終試験もそこで行ってもいいですわ。オリビアの才能、わたくしがしっかりと見極めてさしあげましょう」


「かしこまりました」



 そう言い残して、フィリスさんは立ち上がる。

 学院長さんは恭しく頭を下げた。



「行っちゃった」


「はぁ……フィリス様がああおっしゃるのなら仕方がありませんね。エルドラコさん、今日は学院の客間を用意します。お泊りください。生徒たちの夕食後に、この応接室で話し合いましょう。オリビアさんには担任を通して、伝達をしておきますので」


「あ、はい。お願いします」


「それと。その際に、お父上にご説明いただきたいことがあります。オリビアさんが提出してきた薬草学の論文についてですが――」


「ああ、自由研究の。何の変哲もない草を育ててましたね、図鑑に載ってないからって」


「はあ!? 大発見ですよ! 失われたと思われていた万能の薬草の可能性が高いのですよ、あれ!」


「ええっ!?」


「……とにかく、あとでお話ししましょう」



 そうして、学院長さんも出て行ってしまった。


 えー。なんだか、面倒なことになったぞ。

 ボクはそう思いながらも、応接室から抜け出す。



「あ。せっかく時間もあるし、オリビアの授業参観とかもできないかな……!」



 そう思いつくと、ボクはソワソワしてしまう。

 だって、オリビアの頑張っている姿って、すっごく見たいじゃないか!!


 ボクはさっきの事務局員さんにお願いして、オリビアが授業をしているという「魔法実習場」にむかった。

ドラゴン、とってもいいパパ。

そしてフラグ回収へと向かうフィリスさん(笑)


お読みいただき、ありがとうございます。感想もうれしいです!!



***



ハイファン10位、日間総合ランキング26位。ありがとうございます。

まだまだ応援コメントやブクマ、お待ちしております!!!(平伏)

まだ頑張りたいぞ~~~!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ