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ドラゴンとかわいい娘、旅に出る①


「パパ。ヴァンディルセンさんって【リアリスの六賢人】のヴァンディルセンさん?」


 オリビアがキラキラした瞳で言った。

 シュトラ城の会議室で、先程起きたことについて話し合いをしているときだった。

 ボクとフィリスさんが、さっきの人が「ヴァンディルセンさんかもしれない」と話をしたのだ。


「そうだよ、オリビア」

「パパと昔一緒に読んだ御本に書いてあった?」

「うん、そうみたいだね」


 ボクのお山にやってきたときには、ヴァンディルセンくんはまだまだひよっこの魔導師という感じだった。若い人間で、たぶん生まれてから数秒も経っていないんじゃないかしらと思ったものだ。今考えたら、おそらく二十才とかそれくらいだったのかな。ドラゴン基準で考えててごめんよ、ヴァンディルセンくん。


「すごい! 六賢人のヴァンディルセンさんは、人間界に医術と薬学の恩恵をもたらしたすごい魔導師さんなんだよね!」

「あ、わらわが今言おうとしていたことを……! エスメラルダ様やフィリス様と同じく、ヒトの歴史に名を残す偉大な魔導師のはずでございまする」

「わたくしが知る限り、とても気が優しくて……というか気弱で、エスメラルダによくいじめられていましたね」

「人聞きが悪いぞ、フィリス……」

「こほん。とにかく、あんな狼藉をはたらけるタイプの方ではありませんでしたね」

「あう? でも、そのヴァンディルセンとやらは人間なんじゃろ?」

「ええ、そのはずですわ……だから、本当であればもう」

「寿命、尽きてるはずじゃよなぁ」


 うーん、とみんなで頭をひねる。


「そういえば……ヴァンディルセンを最後に見たときに連れていた子ども……あの子って、たしか……」

「ああ、おそらくは何かしらの長命種だろうな」

「長命種?」

「エルフや竜人族やドワーフに魔族……いわゆるヒト族より長生きする種族をひっくるめた呼称でありまする」

「ふぅん」


 つまり、ヴァンディルセンくんは違う種族の子どもを育ててたってことか。

 なんだかちょっと、親近感が湧いちゃうな。

 今出会ったら、パパ友になれただろうか。


「とにかく、ヴァンディルセンらしき男が【七天秘宝ドミナント・セブン】を奪っていったことは確実です」


 エスメラルダさんが硬い表情で言う。

 幼い女王さんが深刻な顔で頷いた。


「我々の手元には、ひとつの宝玉もない……今、他国に攻め込まれればフィリスの防御障壁もなければ、闇の力で全てを薙ぎ払うエスメラルダもいないわけです」


 フィリスさんもエスメラルダさんも、すごい魔導師であることには変わりがないらしい。

 けど、【七天秘宝ドミナント・セブン】の蓄えた魔力を使って、強大な魔法を使っていたらしい。

 それがなくなってしまった今、要するにこの国はピンチみたいだ。


「それだけではありません、ヴァンディルセンが【七天秘宝ドミナント・セブン】を一体何に使おうとしているのか……早期に取りかえさねば危険です」

「はい、女王陛下。それに……おそらくあの風の魔法……」

「ええ、あれはおそらく【緑風の弓】かと」

「えっ、ずっと見つかってなかった【七天秘宝ドミナント・セブン】の最後の一つ!?」

「だとしたら、ヴァンディルセンが本式の【星願いの儀式】をしてしまう可能性がありますね」

「なんでも願いを叶えられる儀式……!」


 今日奪われてしまったのは、五つの宝玉。

 【七天秘宝ドミナント・セブン】は、土水火風に光と闇──六つの宝玉とそれを統べる【失われし原初ロスト・ワン】で構成される。

 もし、ヴァンディルセンくんが六つ目の宝玉を持っていたとしたら……。


「あれ?」


 ボクはあることに気がつく。


「そうだ、【失われし原初ロスト・ワン】ってたしか──」


 オリビアを見る。

 そう、あれはボクが寝起きしていた祠に安置していたお気に入りの宝玉だ。

 丸い宝石の中心に七つの星がキラキラ煌めく、とっても素敵な宝石。

 そして……学校の工作に使えるかなって、オリビアにあげたプレゼントだ。【七天秘宝ドミナント・セブン】探しに使っていて、そのあと……


「うん、持ってるよ」

「……あっ!?」


 オリビアがこくんと頷くと、アゴが外れそうなくらいに口を大きく開けてフィリスさんが叫んだ。

 ひょい、とオリビアが肩にかけたポシェットから【失われし原初ロスト・ワン】を取り出す。


 相変わらず、キラキラ光って綺麗な宝石だ。



「【失われし原初ロスト・ワン】さん、他の宝石がどこいっちゃったのか……教えて」



 オリビアの声に応えるように、【失われし原初ロスト・ワン】が光りだす。


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