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ドラゴン、手紙を読む。

 大好きな、パパへ……だって。

 パパもオリビアのことが、大好きだよ。


 オリビアが学校に入学して、一週間。

 大きなフクロウさんが飛んできて、ボクたちのお家に手紙の束を届けてくれた。使い魔(ファミリア)と呼ばれる、ニンゲンたちと暮らしている動物だ。



「フクロウさん、ありがとう。ばいばい」



 フクロウさんに手を振ると、フクロウさんはぺこりと丁寧にお辞儀をしてくれた。頭のいいフクロウさんだ。毛艶(けづや)もいいし、大切に飼われているんだろうな。


 封筒の印字を見ると、フローレンス女学院からだった。

 学校からの定期連絡と、そして。



「オリビアからだ!」



 オリビアの丁寧な字が、封筒に並んでいる。

 宛名には、「お父様へ」という文字が。



「わぁ……『お父様』だって」



 いつも、「パパ、パパ」と慕ってくれるオリビアから、手紙の上とはいえかしこまって「お父様」なんて呼ばれるとくすぐったい気持ちだ。オリビアの成長を感じる。



「それにしても、手紙が多いなあ。どれどれ……」



 手紙を広げて、じっくりと味わうように読んだ。



***


   お父様


元気にしていますか。

オリビアは学校で元気にしています。

選抜クラスというクラスに入りました。

人数が全部で6人しかいないので、びっくりしました。でも、もうお友だちもできたのよ。

デイジー・パレストリアちゃんは、なかでも一番の仲良しです。こんどの長期休暇にデイジーちゃんと一緒におうちに帰ってもいいですか?


デイジーちゃんのお母さんはとても怖い人なので、なるべく家に帰りたくないんだって。


クラスの友達も、「お父さんが怖い」とか「ママが怖い」って話をよくしてます。パパはとっても優しいから、そういう話を聞いても「ふーん」という感じです。いまいちピンとこないの。


でもそれって、オリビアが「しあわせもの」ってことだよね。あらためて、ありがとう。


大好きなパパへ。


   オリビア・エルドラコより。


***




 ボクは、最後の一文を100回くらい読んだ。

 「大好きなパパへ」という一文で、自然と頬がゆるんでしまう。

 大好きな、パパへ……だって。パパもオリビアのことが、大好きだよ。



「えっと、こっちは学校からか」



 次の封筒に手を伸ばす。

 そちらは、フローレンス女学院事務局よりと書かれていた。

 ボクはがさがさと手紙を広げて、ざっくりと目を通す。




***



   エルドラコ様


平素より当学院の理念および指導方針にご賛同いただき、ありがとうございます。

このたびは、ご息女オリビア・エルドラコさんの学業成績についての定期評価をお送りいたします。当学院の特徴のひとつに、小まめな学習状況のフィードバックが挙げられます。


   【学業成績 途中経過】

    魔 法  理論 S+

    魔 法  実践 S+

    剣 術  基礎 S+

    馬 術  実践 S+

   魔 導 書 読解 S+

   古代言語学 基礎 S+

   

   【コメント】

我が校の誇る最上位の選抜クラス飛び級に所属しています。フローレンス女学院の創設者フィリス・フローレンスもそのひとりに数えられる【リアリスの六賢者】になぞらえた、各学年6人で構成されたクラスです。オリビアさんはそのなかでも飛び抜けた成績を有しており、飛び級での進級・進学もご考慮いただけましたら幸いです。



以上となります。

何かご質問がある場合は、フローレンス女学院事務局までお問い合わせください。



フローレンス女学院



***



 ボクは嬉しくなってしまう。


「わあっ、オリビア頑張っているんだなぁ!」


 クラウリアさんから、「S」というはとても優秀な成績だと言うことを教えてもらった。こんなに「S」が並んでいるということは、オリビアはとっても学校での勉強を頑張っているってことだよな。



「でも、飛び級ってなんだろう……飛行の練習をするクラス?」



 オリビアは羽もないし、危ないことはさせたくないけど。


 まあ、それはさておき。

 友達もできたっていうことだし、今から夏休みが楽しみだな。


 お友達のデイジーっていうのはどんな人なんだろう。パレストリア……って、入学式でお隣だった女の人の娘さんか。


 たしかに、彼女は怖いよなあ。



「よーし、オリビアがいないあいだはボクが魔導書の虫干しがんばるぞー!」



 オリビアが扱うには危ない魔導書は、ボクがやっちゃおうと思っている。

 魔王さんはオリビアがいないのですっかりふさぎ込んじゃって、西の塔から出てこないから。









***






 フクロウさんが、今週も飛んでくる。

 オリビアの手紙と、「S+」がたくさん並んだ成績表を持って悠々と羽ばたいている。



「……あっ」



 ボクは、その手紙を読んで思わず声をあげる。



***


   お父様へ


来週、お家に帰るからね!

大好きなパパへ。


   オリビア・エルドラコより


***



 いかにも待ちきれない、という筆跡でそれだけが書いてある手紙が、ボクのもとに届く。



「わあ、オリビアが帰ってくる!」



 ボクはすっかり嬉しくなってしまって、ちいちゃくスキップをする。

 スキップ、という面白い歩き方を、最近クラウリアさんに教えてもらったのだ。



「魔王さーーん、クラウリアさん。聞いて聞いて、オリビアが帰ってくるよ!!」



 ボクはスキップしながらお家の外に飛び出して、ドラゴンの姿になって飛びあがる。

 西の塔のてっぺんの魔王さんの部屋まで飛んでいって、そう教えてあげる。



「あうぅっ、古代竜っ! プライバシーの侵害だぞぉっ!!」



 パジャマ姿の魔王さんが叫ぶ。

 でも、オリビアが帰ってくると知るやいなや「クラウリア~~!」と弾んだ声をあげた。


 ボクの心も弾む。


 オリビアが帰ってくるの、今から楽しみだな。

 学校のこと、たくさん聞かせてくれるかな。夕食にはオリビアの大好物を作ってあげるんだ。


 ――うん。

 あっという間だったなあ、一学期。

あっという間の一学期でした(笑)


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