ドラゴン、お土産話をする。
お家に帰ると、魔王さんとクラウリアさんが出迎えてくれた。
ふたりとも今日はずっと寝ていたのかパジャマを着たままで、ふたりとも本当に仲がいいのだなあとボクはほっこりしてしまう。
オリビアから次々に飛び出す、夏の冒険譚にボクたちは聞き入ってしまう。色とりどりの思い出話は、止まらない。
「それでね、パパとオリビアはそっくりって言ってくれてね!」
瞳をきらきらと輝かせて喋るオリビア。
ああ、こういうのっていいなあ。今日あった楽しかったことや、嬉しかったこと。そういうのを、家に帰ってもう一度みんなで話すってーーなんだか、楽しい旅をもう一度体験しているみたいだ。
とても楽しそうにオリビアの話に耳を傾けていた魔王さんたち、だけれど――
「それでね、デイジーちゃんのお家でパパがドラゴンになってね、お空を飛んでたの。かっこよかったんだよ!」
オリビアがえっへん、と胸をはったところでフリーズした。
魔王さんとクラウリアさんが顔を見合わせる。お月様色の目をキョトキョトさまよわせながら、魔王さんはぶつぶつと呟く。
「あう? え、……古代竜の姿に? いきなりなったの? え、え、ちょっとそれってイチマタハイチディーロクのSAN値チェックってやつでは??」
魔王さん、たまに言っていることが分からない。
多分、魔族語だ。
しばらくすると、「ふわぅ」とオリビアが大きな欠伸をもらす。
おや、とそれを見ていた魔王さんがオリビアのほっぺたを、ぷにぷにとつつく。
「あぅ。オリビア、もう眠いのではないか?」
「ん……まだ、おしゃべりしたいよぅ……それに、お土産……」
「お土産?」
ころん、とオリビアの手から可愛らしい小瓶が転がり落ちる。
本で見たことがある香水瓶みたいな、凝ったカットの硝子瓶。
「これ、お姉ちゃんたちの指輪……磨くの……」
「おおぅ、研磨剤というやつじゃな?」
「ありがとうございます。この指輪を見るたびに、いつもオリビアさんのことを思って嬉しい気持ちになりますよ」
「えへへ……ありがと、おねーちゃんたち」
「ええ。明日もたくさんお喋りできますよ、オリビアさん」
「うぅ……」
とろとろ、と落ちてくる目蓋。かくかくと首が座らない。
もう、相当に眠いみたいだ。
ボクはそっとオリビアを抱っこして、寝室へと運んであげることにした。
「むにゅ……パパ、おやすみ、にゃさい」
「うん。おやすみ、オリビア」
お出かけとっても楽しかったねえ。
寝室に向かいながら、そう囁くと、オリビアがふにゃりと頬をゆるめる。
「ん、……とっても……たのしかったねぇ、パパ」
半分夢のなかから応えてくれるオリビアの声が、ボクはとっても嬉しかった。
今夜は、オリビアがぐっすり眠るまでそばにいさせてね。
オリビアの寝顔、本当に天使みたいだなぁ。




