かわいい娘、七天秘宝さがしに出かける。 ~小さな武人イリアと『盾』①~
デイジーちゃんのお家を出て、しばらく飛ぶと大きな分かれ道が見えた。
看板には『あっち:要塞都市ケンロー』『こっち:湖の里ヴィワ』と書いてある。
着地。
ボクは人間の姿になって、うーんと伸びをした。
「パパ、お疲れ様っ」
オリビアがおやつのキャンディを分けてくれた。
「ありがと、オリビア」
木苺味だった。ルイザーの街のお土産だ。
リュカちゃんが大きな荷物を抱え直して、ぺこりと頭を下げる。
「それじゃ、オリビアお姉さま。リュカはここで失礼いたしまする」
この分かれ道で、エスメラルダさんと待ち合わせをしているらしい。
リュカちゃん、昨日はそわそわしちゃって眠れなかったらしい。
目をこすりながらも、それでもエスメラルダさんに会えるのが楽しみらしい。
「リュカちゃん、その荷物……本当に持てる?」
「もちろんでありまするっ! エスメラルダ様へのお土産でございますればっ!」
楽しみすぎて、ルイザーで山のようなお土産を買っていた。
ジャムとか、キャンディとか、あと『ルイザーくん人形』とか。
ボクとオリビアは旅行が初めてなので、「お土産」っていうのを初めて知ったんだけれど……あれは、選ぶのも楽しいものだった。
相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら、たくさんの物の中から買う物を選ぶ……なんだか心がぽかぽかする時間だった。
魔王さんとクラウリアさんにもお土産買ったから、喜んでくれるといいなぁ。
「エスメラルダさん、きっと喜んでくれるよ」
「そ、そうでありまするかっ?」
「えへへ、絶対大丈夫だよ~」
うんうん、とボクとオリビアは頷きあう。
あのエスメラルダさんだもん、リュカちゃんの選んだお土産に喜ばないはずがないじゃないか。
「そ、そうでありまするか」
ぽぽぽっとほっぺたを赤くするリュカちゃん。
エスメラルダさんとの【七天秘宝】探し、たくさん楽しんでね。
「それじゃあ!」
「また、学校で!」
「わ、わらわが絶対に【大地の盾】を見つけまするっ!」
「うん。お互い頑張ろうね~」
ボクらは手を振って、お別れした。
――といっても、ボクとオリビアの旅はまだもう少し続く。
最近になって、地面を揺らすようなうなり声が聞こえるっていう森があるから、【七天秘宝】のひとつ【大地の盾】との関係を調べることになっている。
今から向かうのは『チリンの森』、っていうらしい。
「えぇっと、その森に行くには……っと」
ボクはエスメラルダさんが事前に印をつけてくれた地図を広げる。
すると、
「ふむふむ……あっちの方向だよね、パパ?」
ひょっこりとオリビアがボクの手元を覗き込む。
「あれ? んっと、こっちかな……あれ?」
「実はボクもわからないんだよね……あっち? あれ、こっち?」
ボクたちは、地面に置いた地図を中心にしてグルグル回る。
どっちを上にして見たらいいのか、ちょっとよくわからなかった。
今までは、リュカちゃんが地図を見てくれていたから、ボクは飛ぶことだけに専念すればよかったのだけれど。
「……えっと。オリビア」
「うん、パパ」
ボクたちはうなずきあう。
そう。ボクたちは親子、心は一つだ。
「「たぶん、あっちだよね!」」
ボクとオリビアは、正反対の方向を指さした。
***
「敵襲! 未確認飛行生物が接近!」
「まさか……ドラゴン……?」
「魔導砲で迎え撃て!」
「うわぁああぁ!? だめだ、全然きかないぞ!」
「なんてことだ……このままではこの街、いやシュトラ王国は……」
「待て。おい、ドラゴンの背中に誰か乗っている!」
「まさか、竜騎士か!?」
「いや…………よ、幼女だっ!?」
「なんだって! まさか、ドラゴンが人質を……? 幼女は無事か!」
「ぶ、無事というか……その……」
「ん?」
「め、めちゃくちゃ笑顔で……こちらに手を振っていますっ!!」
「「「はぁっ!?」」」




