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かわいい娘、七天秘宝さがしに出かける。 ~パレストリア家の奇跡の一夜⑨~

 デイジーちゃんの家族は、色々なことを話してた。

 お父さんは、魔法や魔術が大好きで、ついつい仕事に夢中になっちゃうこと。それを申し訳ないと思ってはいても、なかなか変えられなくて申し訳ないっていう謝罪。


 お母さんは、それが寂しかったっていうこと。お父さんが家に居ないぶん、デイジーちゃんをちゃんと育てなきゃって気張っていたってこと。昔、お母さんも魔法が好きだったけど、女の人だからって魔導師にはなれなかったこと。それで、お父さんが羨ましくって、ちょっと辛く当たりすぎていたってこと。そういうのを、きゃあきゃあ叫びながら話していた。


 デイジーちゃんは。

 お父さんとお母さんが仲良くしてくれたらいいって。

 家族で、温かい食卓を囲みたいって。


 ……去年の夏、お家にナイショでオリビアとお泊まり会をしたときから、ずっとそう思っているって。

 そう話した。


「……デイジーがパパたちにそんな話をするのは、初めてだねぇ」


 デイジーちゃんのお父さんはそう呟いて、それっきり何かを考えるように黙ってしまった。

 夜空の旅は終わりに近づいて――たぶん、全部がいい方向に転がっているんだと、そう思えた。


 ***


 地上。

 パレストリア邸の庭。

 招待客たちは、夜空を舞うドラゴンの姿に歓声をあげていた。


「いやぁ……ジャック様には驚きだよなぁ」


 パレストリア家の当主の名前を誰かが挙げると、本人達が空の旅で不在なのも手伝って何人もが頷く。


「誰もが思っていても、遠慮して言えない『ドラゴンの背中に乗ってみたい』なんてこと言えるんだから……マヌケって言われたりしてるけど、あれはすごいことだよなぁ」

「っていうか、ドラゴンもドラゴンだよなぁ……もっと、こう、怖くてとっつきづらいと思ってたけど」

「意外と気さくだし、それに……」


 視線が、あるところに集まる。

 空を飛ぶドラゴンを、じっと見つめている少女――オリビアだ。

 流れ星を探すような夢見る表情で、夜空を駆ける父を見つめている。


「あの娘を見てる、あのドラゴンさんがどれだけ優しいのかってわかりますよねぇ」


 あたたかい家庭。

 すこやかな子育て。

 人間だって難しいその課題に、ドラゴンがまっすぐに取り組んでいる。

 貴族たちにとって、それは小さな、しかし大きな衝撃だった。


 ――少し後。

 晩餐会の主催のパレストリア一家を背中に乗せたドラゴンが薔薇の庭に降り立つ。


「パパ!」

「オリビア、ただいま!」


 ぽふん、と音を立てて人間にもどり、まっさきに娘を抱き上げる。

 どことなくスッキリした表情のパレストリア親子。

 拍手と、音楽隊の演奏。

 ……晩餐会は、当初の予定とはズレたものの大盛況。

 子どもたちは早々にパジャマパーティに切り替えて、楽しい一夜を過ごしたのだった。

 なお。

 果実酒を勧められたドラゴンが、たいそう陽気かつ盛大に酔っ払い、娘の自慢話を延々としながらドラゴンになったり人間になったり――しまいには、謎の力で庭の薔薇という薔薇、花という花を開花の季節を問わず満開にしまくったり。

 『ルイザーの奇跡』などと後に語られる一夜になったのだった。


 その晩以降。

 仕事人間だったパレストリア家のジャックが家に帰るようになった。

 また、高慢で有名だったローザ夫人は肩肘張らない、夫と娘思いの(たまに暴走しがちな)賢女となり、近所の子どもたちに自ら魔法を教えたりもしているそうだ。

 デイジー・パレストリアは、自分の家が好きになった。

 そして、魔法のような夜をくれた親友のオリビアとパパであるドラゴンのことが、今まで以上にもっともっと大好きになったという。

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