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かわいい娘、七天秘宝さがしに出かける。 ~パレストリア家の奇跡の一夜③~

 夕方過ぎ。

 ボクらが部屋でのんびりと過ごしていると、デイジーちゃんが

呼びに来てくれた。


「えぇっと、晩餐会なので……着替えをしていただきたいですの」


 と、デイジーちゃん。


「着替え??」


 晩餐会って、夕ごはんのことでしょう?

 夕ごはんを食べるのに、着替えるの?

 疑問は残ったけれど、言われるままに着替える。

 エスメラルダさんに「む? 友人の家に泊まるなら旅行セットの中に入れておきなさい。けっこうな名家の人間も多いだろ」、といわれていた服が役に立った。ありがとう、エスメラルダさん。


 ボクは、学院の警備員さんとして作った『礼服』っていうものに。これ

着ていると、みんなが褒めてくれて、実は結構嬉しいんだ。


 リュカちゃんは、

「ふふん♪ エスメラルダ様が選んでくださったドレスでありまするっ!」

 と、青いドレスを着ている。


 頭につけている大きなリボンは、見たことのない綺麗な布だ。


「これは、わらわの故郷の『チリメン』という布でございまする! 綺麗でありましょう」

「わわぁ、すてきだねぇ!」


 目を輝かせているオリビア――の服は。


「オリビアだってステキだよ~~っ!」


 真っ白いドレスは、肩を出している大人っぽいデザイン。

 まだ小さなオリビアだけれど、手袋のおかげですらりと見える。いつもの三つ編みを大人っぽく、くるりとまとめている。ちなみにこれは、ボクがちょっと頑張ったのだ。読んでてよかった、『子ども向けヘアアレンジ辞典』!

 ドレス姿のオリビアは、なんだかとってもお姉さんっぽく見える。


「えへへ、学校の授業で着て以来だよ~」


 そういえば、入学前の買い物に『ドレス』っていうのがあった。

 ボクらの家に一番近い繁華街、ミランダの街で一緒にドレスを買ったっけ。


「授業で使うの?」

「うん、学年末にダンスパーティがあるんだよ」

「マナー講座も兼ねてるのでありまする。良家の子女の集まるフローレンス女学院、学ぶのは魔法や勉学だけではないのです!」

「へーぇ」


 そんな授業があるんだね。


「っていっても、マナーとかオリビアよくわからなくて」


 てへへ、と笑うオリビア。


「うん、ボクも」


 マナー、全然わからない。

 育児書にも『パパとママのマナーブック』とか『あたらしいマナー百選』とかあったけど、なんだかよくわかんないんだよね。

 ボク、百年分くらいのマナーブック読んだんだけど、たった十年くらい書かれた年代が違うだけで真逆のことが書いてあったりするんだ。


 あと、「宴会で目上の人をワイン瓶で殴るときには、ラベルを上にするのがマナーです」とか……殴るの? 宴会で? 人を?

 宴会ってパーティのことだよね。

 どうしよう……もしかして、今から行く晩餐会っていうのも、ワインの瓶で殴り合いする会だったら……!? ドレスを着てきてっていうのも、もしかしてワインが飛び散るから普段着を汚さないようにってことだったりする?

 そうだ。たしかに、人間たちが喧嘩するときに、ピカピカ光る銀色のウロコみたいな服を着ていた。

 まさか、あれがドレスの原型だったとか!?

 ……どどど、どうしよう!

 ボクの大切な娘が暴力のさなかに投げ込まれてしまう……なんてことだ、絶対に、絶対に――、


「オリビアはボクが守るっ!!!」

 そう、ぜったいにっ!





「……ねぇ、オリビア。おじさま、どうしちゃったんですの……?」

「えへへ、だいじょうぶ。パパ、たまにああなるの」

「うわぁ……パパ殿、背中が燃えているでありまする」

「おっと。……こほん、ごめん。ちょっと、予行演習がもりあがっちゃった」


 晩餐会、がんばるぞ!


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