表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

流れのケンちゃん

ハナ「あがって。楽にして」

ケン「妹さんは?」

ハナ「会社や。ミツとあたしで夜昼代りっこ。ミツは堅気のOLやけど、ばってんうちは極道や(軽

笑)。さあさあ、立っとらんと座って、胡坐かいて。ビール飲む?」

ケン「いや、俺は酒は…」

ハナ「あ、そか、ケンちゃん飲めんかったね。ほな、コーヒー淹れます。ついでに風呂も沸かすけん」


 ハナ、台所、風呂場へ行って支度する。その音。


ハナ「(台所から)なあケンちゃん、博多に来る前、二年間も外国放浪しとったって…何でそげんこ

つしたの?せっかく入りんしゃった役所ば止めて、ラ、ランボー?…どこぞの詩人の真似しよったって。なして?結局日本の嫌になりんしゃったとね?」

ケン「うん…って云うか、自分のポジションを確かめたくってさ。人生って一度きりだろ?死んでそ

のあとすべてが無に帰すなら、勤めも何も気にならなかった。俗に云う人間って何だ、何のために人は生きるのか…そういったことを自分の肌感覚で知りたかったんだ」

ハナ「日本じゃでけんの?」

ケン「(軽笑)そこさ。だから結局逃げてたんだ、実際のところは…自分から、自分の弱さからね。

俺は根暗で、孤独で、人と交われない片輪者とか何とか理由づけして…それを矯正するために海外での放浪が必要だ、なんて…自分に云い聞かせたりして(軽笑)。人生探究ともども結局は嘘ぱっちさ。日本で戦えない者が海外で戦えるわけがない。本当は単に海外にあこがれていただけかも知れない。ランボーにとってのアフリカと同じさ。とにかく逃げ出したかったんだ、いっさいから。自分のうすっぺらさと醜さがたまらなかった。(軽笑)ショバ替えすれば何とかなると思ってさ…」

ハナ「ふーん、それでヨーロッパに二年も。帰りは中近東やらインドやら、放浪して来んしゃった。

ほんに流れのケンちゃんやね。店の人みんなそう云いよっとよ(軽笑)。(台所から戻って来て)はい、コーヒーどうぞ」

ケン「ああ(コーヒーかきまぜながら)…まるっきり馬鹿みたいだろ?俺って。貧乏人のくせにさ、

まるで世間知らずのぼんぼんみたいだ(軽笑)」

ハナ「なん、そげんこつなか。うちもいっしょやったから、よう判ります」

ケン「え?ハナさんも?やっぱり外国へ?」

ハナ「なん(笑う)なんでうちが。外国なんてミツといっしょに釜山に行ったきりや。そこからフェ

リーですぐや。そうじゃなかよ…ヤクザや」

ケン「ヤクザ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目次ページ下部
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ