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割烹「屋形船」

 昭和51年の博多、天神界隈。深夜営業中(24時間営業)の割烹「屋形船」店内。店内のざわめき、男性客の酔いどれ声や女性客の嬌声、コップや皿の触れあう音など。


菊田「おーい、ケンちゃん、これ五舟に持ってて。握りね」

ケン「はい。あ、あと七舟からも催促来てます」

菊田「(伝票めくりながら)えー?七舟?おう、次あがる。順番や、順番。鮨にぎるのワシひとりやけん、無理云うたらいけんよ」

ハナ「(OFFから)菊っちゃーん、鉄火まだ?十舟や、十舟」

菊田「なに?十舟?鉄火?判っとるばい!まったく。鉄火はハナちゃん、あんたやろ。のう、ケンちゃん」

ハナ「(何故かはにかみながら)すかん。それより菊っちゃん、さっき因縁つけよった客、また帰って来たけん、気ぃつけんと」

菊田「(客の方を見ながら)あー、あいつか。ったく、このくそ忙しいのに…ほからかしとけ。それよりケンちゃんとハナちゃん、あんたら祝言いつあげんの?あ?」

ハナ「すかん…あ、あいた。あいつ来よった」

勇「(OFFから)おーう、兄ちゃん、さっきはこらえたがの、あらためてあいさつに来たけん。わしはの、勇っちゅうんや。ここいらじゃ顔の知れた男や。おまえみたいな若い衆に舐められたままで…」

菊田「わかった、わかった。おもて出え。また来たら承知せんってさっき云うとったやろ。おもて出え。ったく、この忙しいのに…(高下駄を鳴らなながらカウンターから出て来)おらおっさん、こっちや」

勇「お、おう…」

ケン「き、菊田さん、大丈夫?…」

ハナ「よかよ、ケンちゃん。さいたら(余計なこと)せんれも。菊田さん、なれとるけん。それよりそれ五舟やろ?はよう持って行かんね」

ケン「うん、しかし…ハナさん、これ悪いけど持ってて…」

ハナ「よかって!余計な加勢してあんたが菊田さんに食らっさるるよ。そげんこつより仕事終えたらあそこ、運命(さだめ)橋で待っとって。な?」

ケン「え?さだめ橋?ハナさんたらこんな時に…」

客A「(五舟から)おーい、ご両人。さだめ橋の逢瀬はよかけん、その握りば持って来んしゃらんと、舟出てまうよ」

客B「(笑う)アホか。屋形船を真似た席ばい。出るかい(笑う)」

女性客「ちょっとボーイさん、ビールおかわり」

ケン「あ、はい。じゃ、ハナさん、あとで」

ハナ「ハナちゃんでよかよ(艶笑)」


 店内の音遠のく。かわりに雀のさえずり、出勤する車の通る音、クラクション等。

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