五十八話 術式を破壊すれば、魔力が吸収される現象は無くなる
短いですが。次話の為に。
あの後、エルに森の結界から出してもらった。
だけど同じ場所だとバレる危険性があるからと、少し離れた場所に出る事になった。
町に向かって歩きながら、ガレイムはまだ文句を言っていた。
「まったくよ。あのエルフの王は、ずっと俺の声を消しやがって。余計疲れたじゃねえか」
「まあまあ。あのまま話しても、ろくな事にならないのは目に見えていたんだし」
「あの王とは合わないからいいんだけどよ。にしても、まさか町の外壁にとは思わなかったぜ。で、どうやって壊す? 俺は無理だからな」
ガレイムは無理だというように肩を竦めている。
「『術式』は破壊したいけど、外壁の中にある。視えるのは俺だけみたいだし……」
「……破壊はカイトならばできますよね。問題はバルムさんとハーシルドさんに見つかってしまうという事ですか?」
「そうなんだよね。術式を破壊すれば、魔力が吸収される現象は無くなる。それでバルムもハーシルドも何も反応なかったらどうするの?」
「……待ったほうがいいということですね」
「少なくとも、そうなるかな。ガレイムはどう思う?」
「それでいいんじゃねぇ? あの二人をどうにかしねえと、また同じことするかもしれねぇし。まあ、戻ったらウォルフとキリリにも聞いてみようぜ」
「……意見は多いほうがいいです。皆で話し合って決めたほうがいいですね」
『フフフッ、早く行ったほうがいいかもね?』
ささやくような声が耳元を過ぎ去っていった。
え? 何か声が聞こえた?
左右を見渡しても何もいない。
「ルリは、今何か俺に言った?」
「……皆で話し合うということ以外は、何も」
そう言うと、ルリはかぶりを振った。
ルリじゃないとするとガレイムしかいない。けど、そんな声じゃなかったよなぁ。
声を聞いたからかもしれないけど、早めに戻ったほうがいいような気がしてきた。
「うーん。少し町に戻るの急ごうか」
「……何かありましたか?」
「声が聞こえたような気がしたんだけど、早く戻ったほうがいいらしい」
「……では、少し急ぎましょう。町まで距離がありますから」
「んじゃ、さっさと帰ろうぜ!」
ガレイムの威勢のいい声で、俺たちは町へ急いで戻るのだった。
□□□□ キリリ視点
ガレイムはカイトとルリに付いて出て行った。
誘拐された子供とお年寄りたちの無事の確認をしにいくために。
あたしはウォルフと留守番ということになる。
レノはしばらく動けない状態だから、誰かが残らなければならない。
ガレイムは残ろうとしたけど、あたしが二人に付いて行く様に誘導したおかげで出て行く事になった。レノの望み通りになった訳だけど……。
「さて、俺らはどうするか」
「しばらくは、レノの事をみていないと。もう心配するような事が無くなったのは、凄く嬉しいわ」
「だな。まさかよ、本当に……本当に治るなんてな」
「そうよね。ルリの使った固有魔術……何なのアレ。とんでもないわ。カイトも何かお祓いみたいな事していたけど、病原の根を取り除いたんだから不思議よね」
「まあ、アレは分からねえからいいや。レノから病原の根がなくなったってだけで十分だぜ」
「そうだけど、あんた気楽ねぇ」
「小難しいやつはキリリに任せる。だから戦いになったら任せておけ!」
はぁ、と私はため息をついた。
確かに戦いはウォルフに任せてれば、何とかなるからあたしは安心して魔術を使えるからいいんだけどね。
少なくとも、あたしでは病原の根をどうにかする事はできそうにない。
病原の根も見えないし、レノが無事だったのもルリの固有魔術のおかげなのだと思う。あんなに色々な固有魔術を使えるルリは一体何者なのだろう。
神官と言うには、攻撃の魔術も使えている。それも上位の魔術。
攻撃の魔術を習得すれば回復の魔術は使えない。
確かに、あたしは攻撃の魔術を習得しているけど、回復の魔術は神官が管理していてその内容は知る由もない。
もしかして、何か重大な勘違いをして……。
その時、ノックも無く部屋に入ってくる人物がいた。
ハーシルドは『断罪の黒水晶』を手にしていた。
「さて、昨日は邪魔が入った。続きをしようと思ってね。このボクが直々に来てやったのさ」
ハーシルドは不快感をあらわにするように、顔を歪めていた。




