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異世界転移のお詫びに嫁をもらいました ~スキルか嫁か決断するためにおっさんは神との約束の地へ向かう~  作者: うららぎ
初めての町

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二十七話 魂にズレが生じてしまったのじゃ



 神様の影が巨大な竜の姿に見える。

 そして、ルリの魂を握ったまま離さない。


「さあ、どうするのじゃ? この魂がどうなっても知らぬぞ?」


「ま、待ってください! どうしてそんな事をするんですか!」


「どうして、じゃと? 未来ではこの魂がルリと名付けられ、スキルの代わりとなっておるのだろう。ならばスキルと交換した時、ルリはどうするのじゃ?」


「それは……」


「ほれ、答えられぬじゃろ。これでは、浮かばれぬであろう。裏切られ、今度は捨てられてしまうのか。それであれば、我が今ここで消し去ったほうが苦しむこともあるまい。それでよかろう?」


「だ、だからって、それで消すなんて横暴すぎじゃないですか!」


「どちらが横暴なんじゃ? 熱を出して倒れたという原因も、この魂が『ズレ』を感じたから引き起こしたものであろう?」


「熱を出して倒れたのは、フォーレリアの話を聞いてからです。では、ズレってどういうことですか」


「ズレとはじゃ。ルリの魂と……」


 何故かそのまま黙り込む神様。

 何で言葉を止めたんだろう。


「どうしたんですか?」


「いや、魂に残っている記憶をあえて引き継いでおらんのであろう。なぜなのかは言わぬでも分かるな? それが、フォーレリアの話を聞いた事が引き金となり、魂にズレが生じてしまったのじゃ。ズレと言っておるのは、『フォーレリア』の記憶が蘇り、『ルリ』としての記憶とぶつかったせいじゃな」


「どうすれば、そのズレが治まるんですか?」


「まったく、お主は聞いてばかりじゃの。ルリはフォーレリアの記憶を拒絶しておる。自分の魂である記憶を拒絶するのは、なんでじゃろうなぁ? 我には難しすぎて、まったく分からぬのじゃー」


 あ、これって絶対知ってるやつだ。

 自分で考えろって事なんだろうけど、自分の魂を拒絶する……それはダナグアスとの記憶のことだろうとは思う。


 純粋な『神託な巫女』のフォーレリアが、四年という長い期間を過ごしてきたものを一瞬で壊されてしまった。


 おそらくわずかばかりでも、好意もあったに違いないだろう。

 信頼していた人物から完全に裏切られ、殺されそうになったんだ。

 思い出したくもない記憶になっていると思う。

 そう考えると、ルリが受け入れたくないのも理解できるけど……。


 ルリは、俺と同じなんだよな……。

 転生して神から力ももらっているけど、それだけで一人は変わらないんだよなぁ。記憶もない状態から知識だけあるけど、突然世界に一人ぽつんといる状態と同じな訳で……。


 俺は転移して一人だったけど、異世界にいると知った時は嬉しいとしか思わなかった。一人は寂しいかもしれないけど、今はまだその寂しさを感じた事が無い。


 ルリと一緒にはいるけど、俺がスキルを交換したら一人になる……。

 世界に一人だけ取り残されるのは、悲しいし寂しい……。


「フォーレリア! いや、今は君の名前はルリなんだけど、聞いて欲しい!」


 俺はとんでもない馬鹿な取引を、神としてしまったのではないか。

 ルリを見るたびに感じていた『罪悪感』はこの事だったのか。


「俺は、神様からスキルを良くしてもらうために、ルリと交換する提案を受けてしまったんだ! 人間味(にんげんみ)を感じなかったから、何も考えずに受けてしまったんだ! でもそのことで、ルリが不安な気持ちになっていたとか、全然考えていなかったダメな人間だ!」


 神様に握られていた魂は、その手から抜けてきて目の前で留まっていた。


「でも、一緒にいてそうじゃないって分かった! 人を助けるために必死に戦ってた! 監視をしている視線を退けるのに頑張ってくれた! 俺に魔術を教えてくれるのに頑張ってくれた! 一生懸命だったんだ!」


 魂の光が強くなっている? 脈打つように、少し大きくなったり小さくなったりを繰り返している。これは……、あのルリの心臓部にあった黒いやつと同じもののように感じる。正反対といってもいいのにどうしてだろう。


「俺は死ぬのが怖い。今でも、怖いと思っている! 神様からもらえるスキルがないと生きていけないと思っている! この性格はたぶん変えられない! この先、もし強くなれるんだったら……、誰にも負けないくらい強くなれるなら……」


 魂から放たれる光がより一層強くなってきて、見ていられなくなってくる。



「スキルなんて、無くていい!」



 光は強く輝いて、消えてなくなってしまった。

 あれ、消えたってことは、ルリはいなくなったってこと?


「まーーったく、早ようそう言わんかい。ギリギリ合格じゃ、まったく!」


 神様が俺に向けて指を弾くと、ピシッと空間にヒビが入った。


 はい? どういう事? 空間にヒビ入っているよ?

 亀裂がどんどん広がって、神様がニヤリと笑いながら最後にこう言った。


「カイトよ。明かりには虫が寄りつくかもしれんが、お主の持っているものは松明なのじゃ」


 崩れていく空間の中で、一瞬だけ……ほんの一瞬、神様の姿が()()()()()()()に見えた。そして、額に強い衝撃を受けて意識が、現実に戻されたのだった。





 俺の手に柔らかい感触があって、それは気持ちの良い手触りだった。

 何かと思って手を見てみると、ルリの胸の上に手が乗っている。


 横を見ると、ハースさんが少し……いやかなりドン引きした視線でこう言った。


「あ、あの……ですね。夫婦なのかもしれませんが、人前ではどうかと……」


 後ろから更に声がしたと思ったら、ウォルフだった。

 見れば、頬がかなり引きつっている様子。


「い、いや! 違うんだ! 誤解なんだこれは!!」


「ルリが熱で倒れてるのに何してやがるんだ! ニヤついてんじゃねーぞ!」


 ウォルフに襟首を掴まれたと思ったら、身体が宙に浮いた。

 そう、投げられていたんだ。


「い、いや。ニヤついてるんじゃなくて、引きつってるんだよーーーー!!」


 無駄だと分かっていても声を出しながら、バキバキと音を立てて木々をなぎ倒していく。何度も頭に衝撃を受けるけど、思ったよりも痛くはなかった。


 どこまで行くのかと思ったけど、三本目の木の所で止まった。

 ウォルフも手加減してくれたのだろうか。

 俺自身の身体を確認すると怪我は特になかった。ただ、無意識に魔力を全身に纏っていた。


 急いでウォルフの所まで戻ると、誤解を解くために説明をした。


「違うんだ! そういうのじゃないんだよ。熱の原因を探っていただけなんだって」


 横からキリリが驚いたように声をかけてきた。


「ね、ねえ。あんな勢いで投げられたのに、何ともなさそうだけど大丈夫なの?」


「え? 大丈夫だけど。でも、もう投げたりしないで欲しいかな」


 まずい、まったく痛くないのがバレたらもう一度投げ飛ばされそうな気がする。

 普通に大丈夫だと言ってしまった事を内心悔やむ。


「おっさんよ。弱ってる相手にする事じゃねえよなあ?」


 ウォルフの睨みが結構怖くて、身体が震えそうになる。

 このまま殺されてしまうんじゃないかと思うくらい怖い。


「ち、違うって! 本当に誤解なんだよ!」


「あたしは、そんな風には見えなかったから、特に言う事はないわ」


「げっ、マジかよキリリ。そりゃないぜ、先に言ってくれよ!」


「ウォルフが勝手に突っ走ったんでしょ」


「チッ! 悪かったな、おっさん! だけど、気に入らねんだよ……まったく気に入らねえ!」


 吐き捨てるように悪態をつくと、ウォルフは見張りをするために戻ったようだった。

 キリリがすまなそうな顔で言う。


「ウォルフはさ、あんたみたいに何かを隠しているような奴が大嫌いんだよ。自覚が無いようだから言うけど、あいつに殴られて何ともない人ってほとんどいないのよ?」


 それだけ言うとウォルフの後を追ってキリリも見張りに戻って行った。

 何ともない人がほとんどいないって言われてもさ、殴られたときは流石に少し痛かったんだけどなぁ。


 もう少し強くなりたい。

 グレイウルフにはビビって逃げ出した。

 赤い猛牛(レッドアピ)には歯が立たなかった。

 盗賊の時だってルリに任せて影から攻撃しただけだし。

 監視していた奴はルリを支えただけだった。

 魔術はライトボールがちょろっと出るだけだし、ウォルフにだって正直ビビっている。

 こんな何でもないおっさんに何があるんだろう。

 唯一できるのは魔力を操る感覚だけは、自分でも驚くくらいにできるとは思っている。

 でもさ、魔術とか魔法が使いたいんだよ俺は。


 まあ、考えて仕方ない。俺もルリの所に戻ることにした。


 ルリは横になっているけど、もう顔色は全然良くなっていた。

 手が火傷(やけど)しそうなくらい熱を持っていたのに、平熱に戻っている。


 ハースさんは「後はお願いします」と馬車のほうへ戻って行った。


 しばらくルリの顔を見ていると、ゆっくりとその目が開く。


「ルリ! ひどい熱だったんだよ、大丈夫?」


「……カイト……大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」


「そんなのいいって。本当によかった!」


「……夢を見ていたんです。フォーレリア……その……彼女は、わたしだったのです。わたしは不安でした……いずれ、置いて行かれるではないかと」


 ルリは不安そうな顔で俺を見ている。

 今にも泣き出しそうな表情で俺の手を握ってきた。


「でも、そうじゃないと。声が聞こえました。わたしはカイトの傍にいてもいいのでしょうか」


 俺はルリの手を握り返して、思っている事を伝えた。


「ああ、そのほうが俺も安心だし。もうそんな事は言わないでほしい」


「……はい。ありがとうございます」


 ルリの目から涙が流れた。悲しい涙ではない安堵からのものだろう。

 流れた涙の跡を拭ってあげると、ルリの顔は笑っていた。


 その時、ピコン!と音が聞こえた。

 ルリは聞こえていないようだけど……何の音だろう。


 目の前にいきなり文字が浮かんできた。

 こ、これは、あの森で迷っていた時に出てきたメッセージだ!


 *** ルリは「神託の巫女の加護」を取得した。 ***

 この加護を受ける者は、神との交信を可能とする。

 魔力の回復を早め、魔術による魔力消費を軽減する。


 *** ルリは「火竜イルグスの加護」を取得した。 ***

 この加護を受ける者は、ありとあらゆる火に愛される。

 魔術、魔法による火属性の魔力消費を半減させ、威力を最大で十倍まで高めることができる。火属性の魔術、魔法の詠唱を無しで発動できる。

 火属性による攻撃を無効化する。

 (但し、イルグスと同レベルの攻撃は半減となる)


 な、なんだこれ!?

 急に説明が出てきて、解説まで見えるようになった。

 どっちの加護もとんでもないやつなんじゃないか、これ。


 この説明が正しければ……ルリは加護を受けて、更に強くなったことになる。

 ルリが強くなって困ることはないけど、また厄介ごとが増えそうな予感がした。



更に強くなる嫁(仮)は最強。

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