赤ずきん
もしも、赤ずきんに出てくる『あの人』と『あの人』の役割が逆だったら…。
そんな感じのお話です。
むかしむかし、赤い頭巾がとても似合う女の子がいました。その頭巾をよく被っていたので周りの人たちからその女の子は「赤ずきん」と呼ばれていました。
ある日お母さんが赤ずきんを呼んでいいました。
「赤ずきん、おばあさんがご病気になってしまったの。お母さんは家のことをやらないと行けないから1人でお見舞いに行ってくれるかしら。」
「はい、お母さん。森の奥に住んでいるおばあさんのことよね。」
「ええ、そうよ。それじゃあこのケーキとワインを持っていきなさい。なるべく遅くならないようにね。」
「はい、行ってきます。」
といって赤ずきんは出かけていきました。
森の中にあるおばあさんの家に向かって歩いていると、そこに狩人が現れました。
「やあ、赤ずきんちゃん。」
「こんにちは、狩人さん。」
「そんな荷物を持ってどこに行くんだい?」
「おばあさんの家よ。お見舞いに行くの。」
「それは偉いね。おばあさんの家はどこにあるんだい?」
「ここからお花畑を通って、りんごの森を抜けたところにあるわ。」
「ふむ、なら一緒に行かないかい?途中で狼に襲われてしまったら大変だしね。」
赤ずきんは少し考えて、
「そうね、お願いするわ。」
と答えました。
その様子を茂みから見ていた狼は狩人を怪しんでいました。
(狩人のことだから何か企んでるに違いない)
と思い、こっそり後をつけて行くことにしました。
赤ずきんは無事におばあさんの家に着き、狩人さんとはお別れです。
「こんにちは、おばあさん。」
「おや、赤ずきんじゃないか。久しぶりだね、もしかして1人で来たのかい?」
「うん、そうよ。私1人でお見舞いに行ってきたの。はいこれ、おばあさんの好きなケーキとワインよ。」
「おやまあ、ありがとう。やっぱり具合が悪くなった時にはこれが一番の薬だね。」
そう言うとおばあさんはワインを飲み始めていました。
赤ずきんは辺りを見渡し、部屋が汚れていることに気がつきました。
「おばあさん、部屋を綺麗にするね。きっと具合が悪い間、ベットの上で何もできなかったんでしょう?」
「ああ、ありがとう赤ずきん。あなたはいい子ね。」
そしておばあさんのお見舞いを済ませて家に帰ろうとしました。
もうすっかり夜になり、空には満月が出ていました。
辺りの森はは不気味なほど静まっていました。
赤ずきんは怖くなり、足を速めました。
不意に、
「赤ずきんちゃん」
と呼ばれ、思わず声をあげそうになりました。
ゆっくり振り返ると狩人がいました。
「ああ、よかった。狩人さんだったのね。」
それには狩人は答えず、ニコニコしています。
「狩人さん?」
そして狩人は無言で縄を持って近づいてきました。
赤ずきんは怖くなり、しりもちをついてしまい叫んでいました。
「誰か、誰か助けて!」
その時、突然狩人が後ろに吹き飛んでいきました。
赤ずきんは目を凝らしてみると月光に反射して光る毛並みを持った狼がいました。
まるで狩人に立ちはだかり、守ってくれているようです。
狼はただ一言
「逃げろ。」
というと狩人にとびかかっていきました。
赤ずきんはしばらく呆然としていましたがハッとして起き上がり、急いで家に帰りました。
お母さんにそのことを話すとすぐに警察に通報しました。
数日後、狩人が余罪が出て捕まったことを誰も知りませんでした。




