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第零話
「桑子ちゃん、おはよう」
アイビーが言った。
空は茜色に焼けている。
火の粉が滲み広がるように、赤く、赤く。
「何言ってるの、おやすみでしょう、アイビー。」
「あっ、そっか。もうそんな時間かぁ。もっと遊びたかったな。」
「大丈夫、明日また遊べばいいじゃない。きっと迎えに行くから。」
「ほんとう?」
アイビーの青い目がきらきらと輝いた。
「もう、あなたは本当に単純ね。どこに行きたい?」
「遠く、遠くに行きたい。電車に乗って、西北の方に。」
「そしたら、二人で花見とか。」
「いいね。すごくいい。」
日が眩しい。