初仕事 完了
ワイワイ
ガヤガヤ
昼までとは打って代わり、日がくれると泊まっていた宿はパーティー会場となっていた。
横断幕には大きく
「感謝パーティー タルバ村絶対復興!!」
と書かれている。
テーブルにはたくさんの料理がのっていて、皆料理を見ながら早く始まらないかとそわそわしている。
そんな皆を見て呆れたように村長が前に立つ。
「静かに!!ごほん…それでは、英雄ユリ様への感謝とタルバ村の復興を誓って、乾杯!!」
「乾杯!!」
パーティーが予定より早く始まった。
「飯だあああ!!」
挨拶が終わったとたんに一斉に食事に飛び付く村人達。
その様子に圧倒されていると、
「凄いですね。」
とレイが声をかけてきた。
「村人達も…不安だったんでしょうね。」
「そうだね。でも…こんなに沢山食材を使って大丈夫なの?」
「村長がこれでやる気を出すならと、このような豪勢な食事にしたそうですよ。」
「そうなんだ。あれ?そういえばアルトは…」
「ああ、アルト君ならあそこに…」
レイが指を指した先には、村人達と料理争奪戦を繰り広げているアルトがいた。
「まだしばらく料理は取れなさそうだね。」
「前菜のコーナーにはあまり人も居なかったので、そちらから頂きましょうか。」
レイにうながされてサラダを盛っていると、
「ユリ様、申し訳ありません。村の者たちが何も考えずに…」
と村長がやって来て頭を下げる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。アルトも楽しそうですし…」
「追加の料理がもうしばらくで完成致しますので、そちらへお持ち致します。少々お待ちください。」
「そこまでしていただけるなんて、ありがとうございます。」
お礼をして村長と離れ、レイと2人で席で待つことにした。
しばらくすると料理争奪戦に勝ったらしいアルトが料理が大量に盛られた皿を持ってやって来る。
なんともたくましい奴だ。
「あれ?2人ともサラダだけ?そんなんで足りるのかよ。」
「村長さんが追加の料理を私達のために持ってきてくれるんだって。」
「え!?なんだよそれ、早くいってくれよー!俺こんなに頑張ったってのに…」
よほど料理争奪戦が大変だったのか、アルトはショックを受けている。
まあ、アルトのことだ。やって来た料理も全部食べるのだろうけど…
サラダを食べ終わった頃に、料理が運ばれてきて、村長に声をかけられた。
「食事中…村の者達がユリ様方と話したがっているのでどうか喋ってやってくれませんか?」
そう言われてここまでやって貰って嫌とは言えない。
私も英雄として皆と話がしたかったし丁度良い。
アルトとレイにその事を伝え、3人違う場所で食事をすることにした。
すると、私の元には少年達が沢山集まってきた。
「なあなあ、お姉ちゃんが英雄様なの?」
「どれぐらい強い?」
「どんな魔法使える?」
という質問攻めにあってしまった。
彼らは「革命」のことがいまいち分かっていないようで、私が本当に強い人だと思い込んでいるらしい。
「私はねー、ドラゴンより強いよー?」
というと
「うおおおおお、すっげええええ」
と少年達が騒ぐ。
彼らの想像とは違うということに心が痛むが、まあ、今の世界ならドラゴンは簡単には倒せるはずなので、嘘はついていないだろうと、自分に言い訳をする。
子供達の相手をしながらアルトの方を見ると、アルトは少女と老人達に囲まれていた。
今日1日村の子供達と遊んでいたアルトは少女達からモテモテで、おままごとに引っ張りだこだった。
元気でやんちゃな雰囲気のアルトは老人にとっては可愛がりたくなる存在らしく、今日はいろんな方からお菓子をもらっていた。
一方レイは女性達に囲まれていた。
レイは顔が整っていて格好良く、騎士という安定した職業で、魔物も倒せる強い男。
そんな優良物件は中々居ない。
皆がそう思っているのか、年頃の女性達がレイと仲良くなろうと必死だ。
そんな様子を村の男性達は恨めしそう見ている。
その状態はパーティーが終わるまで続き、パーティー終了の合図とともに解放された。レイ以外は。
レイに群がっていた女性達はパーティー終了後が本番だと言わんばかりにレイに迫る。
「モテる男ってのは大変なんだな。」
「そうだね…先に部屋に戻ろうか。」
私はレイを置いてアルトと二人で部屋に戻った。
私達は明日ネルダに戻る予定だ。
荷物をまとめてベッドに入る。
眠りに落ちる直前に
「ようやく解放された…」
というレイの声が聞こえた。




