できること
「レイ」
少し前を歩くレイがこっちを見る。
「レイが護衛でよかったよ。これからよろしくね。」
「はい!」
そう言ってレイはニコッと笑った。
かっこいい…
今までレイはただの護衛だと思って気にして無かったけど…
水色の髪に、透んだ綺麗な目、爽やかな笑顔…
レイって何気にイケメン…?
なんて思っていると、
ぐぅぅぅ
とお腹から空腹を告げる音が鳴る。
「…そういえば、ご飯食べてない…」
「ご飯を食べずに、私を追いかけて来てくださったんですか!?」
「村の者にいって用意させます!!」
そう言ってレイは村へと走って行ってしまった。
お腹がすいて走る気になれない私は、その背中を見ながらゆっくりと村に向かうことにした。
村に近づくと、村がなにやら騒がしい。
どうやら騎士団が調査報告をしに来たらしい。
「私も行かなきゃ」
小走りで人混みの中へ入る。
人混みの中心にはレイとアルトも立っていた。
「ユリ様も来ましたし、報告を始めましょう。」
タルバ村の人達がじっと報告係の男を見る。
その様子をみて、彼は暗い顔をする。
「はい。まず被害報告ですが…村の被害は甚大です。畑は全て掘り返されていますし…建物もほとんどが壊れています。完全な復旧には…相当な時間が…必要かと思われます…」
その報告を聞き、村の者達が騒ぎだす。
「うそだろ…俺達どうやって生活するんだ…」
「畑にいくらかけたと思って…」
「家族がいるんだぞ…」
村の人達は口々に嘆き始めた。
昨日見たから分かる。
あの村は直ぐには復旧できない。
「しかし、タルバ村は現在騎士団が防護柵を作っています。昨日の夜からタルバ村でファングの出没状況を調査していますが、ファングは村に出没していません。近くの森にもファングが見られないので、数日中に村に立ち入ることが出来るでしょう。」
おおお
という感嘆の声と、拍手が起こる。
しかし、彼らの表情は暗いままだ
「何をそんなに落ち込んでおる。よかったじゃないか、ファングがいなくなって。」
そう言ったのは、一人の老人だった。
「村長…」と声をかけられている彼は、タルバ村の人達に向かって話し出した。
「タルバ村はこの国の食料生産の要である。それが我々の誇りだったはずじゃ。我々は村を絶対に復旧させなければならない。だから、皆村に戻るぞ。よいな?」
村長の言葉にほとんどの人が頷く。
しかし、ある男が
「んなの、やってられっかよ!!ふざけんじゃねえぞ、こっちは家族のために一稼ぎするために来てんだよ!そんなのに付き合えるわけねえだろ!」
と文句を言い出す。
それに便乗して、他の人も文句を言い出す。
「家族が居るなら尚更じゃ。」
村長はそう言って、男を真っ直ぐ見つめる。
「言ったはずじゃ。タルバ村は食料生産の要だと。タルバ村が復旧しなければ食料不足が起こり、物価は跳ね上がる。そんなことになれば今よりも生活が貧しくなる。家族のために何をすれば良いか、お主でも分かるじゃろ。」
そう言われた男は、何も言い返せず黙り込む。
「復旧のため、村に戻る。良いな?」
もう一度言った村長の言葉に、文句を言うものは誰もいなかった。
すごい…
これだけの人を一気に説得するなんて、流石だ。
「ユリ様、お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。ファングを退治してくださったこと、改めて感謝致します。」
そういって村長は深々と頭を下げる。
「いえ、私はやれることをやっただけですから…」
「ユリ様のご恩を無駄にはいたしません。必ずやタルバ村を元通りに戻して見せます。」
村長の目からは覚悟が感じられた。
絶対に復旧させてくれる。
その目を見て、私はそう確信した。
「報告は以上です。引き続き調査を行いますので、進展がありましたらご報告致します。」
そう言って騎士団はまたタルバ村へと戻っていき、村の人達もそれぞれ動き出す。
私達も宿へ戻る。
「タルバ村の人達が村に戻ってくれるようで、良かったです。」
食事の為に部屋へ戻ると、レイがそう言った。
「確かにな。しかしあの爺さん凄かったなあ…伊達に村長やってねえって感じだったな。」
「最初はどうなるかと思ったけど、良かったわ…」
魔物を倒せてもこればかりは私達にはできない。
少しでも早くもとの生活に戻ってほしい。
なにもできないのが悔しい。
コンコン
「お食事をお持ちいたしました。」
といって女将さんが部屋に、食事を運んでくる。
「タルバ村の村長から、ご連絡がございました。今日の御夕食はユリ様への感謝を込めてパーティーを行うとのことでしたので、そちらでお済ませ下さい。」
「パーティー…?そんな大層な…」
「大層なことじゃねえと思うぜ。俺らは復興の役には立たないけ
ど、俺らがいなかったら復興すら出来ない。英雄ってそんなもんなんじゃねえの?」
「自信持てって。」
アルトには私の気持ちが分かってしまうようで、私の気にしていたことを的確に突いてくる。
私にできること、それは…
私に助けを求めている人たちを救うこと。
なんか、すごくすっきりした。
「ありがと。」
今日のパーティー…楽しみだな…
だいぶ間が空いてしまいすみません。
しばらくゆっくり更新でいきます。




