初仕事
「ここが…タルバ村…?」
タルバ村に着き、辺りを見渡す。
畑が荒らされており、あちこちに作物が散らばっている。
家屋もなぎ倒され、そこはもう、村といえる姿ではなかった。
私の記憶では、タルバ村は作物の収穫量が多く、他の村から移住者がでるほど裕福な農民も多かったはずだ。
そんな面影も無くなった村は、ファングがいなくなっても、復興は難しいだろう、それに住民も何人戻ってくるか…
「取り敢えず、ファングを倒しましょう。被害状況の確認はその後です。」
「そうね、急ぎましょう。」
考えるのは後にして、近くに居たファングから倒すことにする。
弓を構えて、ファングを狙う。
村でやっていたことと同じように、落ち着いて…
ヒュッ
グォオオオオ
「よし、やった。次っ!!」
私は周りにいたファングたちに弓を放ち次々と倒していく。
「いけっ!!」
「おらっ!!」
アルトとレイは連携して敵を倒している。
どうやら「革命」が起こっても毒は効くらしく、アルトは毒矢を放ち、動きが鈍ったところをレイが剣でとどめをさしている。
「あれ…?レイの攻撃は効くんだ…アルトはダメだったのに…」
まあいいか、今は目の前のことに集中しよう。
気持ちを切り替えてファングを引き続き倒していく。
「大分片付いたな。」
「そうですね。今日は隣のカレーン村で休みましょう。」
今日はもう終わりだとほっとした私は急いで帰る準備をする。
今まで戦闘なんてしてこなかった私の体はもうへとへとだ。
馬に乗り、カレーン村へ歩き始めてすぐのことだった。
ドドドドドド
グォォォオオオオオオ
グォォォオオオオ
森からけたたましい音が聞こえる。
「何の音!?」
「何か来るぞ、構えろ!!」
ドドドドドドドド
森から走ってきたのはファングの群れだった。
「一体何匹いるんですか!?」
ファングの群れは真っ直ぐ私たちへ向かってくる。
「迎え打つしかねえぞ。」
馬から降りて私とアルトは矢を放つ。
「ちっ、なんて数だ…」
いくら矢を放っても向かってくる数が全然減らない。
このままだと…
「来るぞ、逃げろ!!」
ファングたちがすぐ目の前まで迫ってくる。
アルトとレイが咄嗟に飛び退くが、私は反応できなかった。
避けられない!!
ギュッと目を瞑って衝撃に備える。
ドーーーーン!!
「あれ…痛くない?」
痛々しい衝撃音こそはしたものの、痛みは全くない。
驚きのあまり目を開けると、吹っ飛んでるファングが見える。
「え?」
「す、すげえ…まじかよユリ姉ちゃん」
確かに王様は強い者の攻撃は弱い者を傷つけられないといっていたが、ここまでだとは思っていなかった。
まじ?突進を跳ね返しちゃうの?
「と、とにかく今のうちです!!」
吹っ飛んだファングをアルトとレイがファングを倒す。
私も負けじと他のファングに攻撃する。
…
「終わった…疲れた…もうむり…」
日暮れ始め、周りにはファングの死体が散乱している。
体力を使い果たした私はもう動けない。
アルトに支えられて馬に乗り、今度こそカレーン村へ向かう。
カレーン村はタルバ村からの避難所になっているらしいので、きっとタルバ村の人たちに状況も報告できるだろう。
あれだけのファングを倒したのだから、タルバ村はもう安心な、はず。
…
カレーン村についたのは夜だった。
食事とお風呂を済ませベッドに倒れ込む。
村人たちが「ユリ様だ」「英雄様だ」などと言っていた気がするが、そんなのに構っている余裕はなく、「明日ね」といって全てあしらった。
きっと明日は大変なことになるだろう。
そんなことを考えていたらいつの間にか眠りに落ちてしまった。




