最強少女ユリ その2
「君ならできる」
「できません」
「頼む、やってくれ」
「私にはできません…」
……
とまあ、失礼にも王様と言い合いをしていると
「やってくれよ、ユリ姉ちゃん」
と聞きなれた声が後ろから聞こえてきた。
なぜかそこには気まずそうな顔をしたアルトが立っていた。
「アルト!!なんでここに」
「騎士さんに呼ばれてね。お前の推薦人をどうにかしろってさ」
「推薦人??」
アルトの方をみて訪ねると、アルトは目をそらして言いづらそ
うにしている。
そんなアルトを気遣ってか代わりに王様が説明しだした。
「「革命」の現象について、すぐに気づいた者たちがいてな、彼もその中の一人だった。我々はこの現象に対抗できる人を英雄として公表し、混乱をさけることにしたんだが、英雄になれる人材が全くもっていなかったんだ。この国は戦争中で、男は皆戦闘に備えて鍛えているし、女も家庭を守るため、最低限の戦闘能力は持っている。だからといって戦闘経験のない子供を使うわけにもいかん。」
「そんなとき、俺思ったんだよ。ユリ姉ちゃんが最適だって。」
アルトが申し訳なさそうに、下を向いたままそう言った。
「ユリ姉ちゃんは、体は細っこいし、力は弱いし、魔法だってつかえない。それに、スライムだって倒せないだろ。だから、今のユリ姉ちゃんは世界最強の英雄になれるって思って。でも、イヤだったんだ。ユリ姉ちゃんに危険な目には会わせたくないし、でも…それで皆が死ぬのも…俺は…嫌なんだ…」
「アルト…」
アルトの肩が微かに震えている。
アルトはいつも私の事を思ってくれていた。
きっとアルトが私を思う気持ちに嘘はない。
そして、アルトが平和を願う気持ちも本物だ。
アルトは昔から「皆を守る戦士になる」と言っていたし、そうなれるように人一倍努力をしてきた。
でもアルトが強くなろうと努力した分、今のアルトは弱くなってしまった。
誰も守れないという歯痒い気持ちも、辛い思いもありながら私を頼ったんだ。
そんなアルトの気持ちを、無視することはできない。
私も何かやらなきゃいけないんだ。
「わかったよ、アルト。私、やれることはやってみるよ。」
「ユリ姉ちゃん…ありがとう!!」
「おっと」
よほど嬉しかったのかアルトが私に飛び付いてくる。
その反動で少しよろけるが後ろに倒れることはない。
今までなら確実に倒れていたはずだが、アルトが加減をしていたのか、「革命」のせいなのか、きっと後者だなぁと複雑な思いでアルトを慰めた。
「それでは、話を進めてよいかな?」
という王様の声で正気に戻ったのか、アルトがはっとして私から離れる。
「では、ユリ・ヒルデガード殿を我がアルノーラ王国の英雄として、明日公表式を行う。その際には、「革命」についての詳しい詳細を国民に伝えることになる。いいかね?」
「はい、かしこまりました。」
英雄を国民に公表することは、国民の不安を解消することになる。
しかし、同時に「革命」についても説明をすることになる。
「革命」について説明することで、魔物に対抗できる人を呼び掛ける事だってできるが、逆にその人たちがクーデターを起こすことだって出来るようになる。
王様はそれを覚悟の上で公表するのだ。
人の上に立てる人とは、こういう人のことを言うのだろう。
「それでは、明日に備えて今日は休んでくれたまえ。」
と言われ、アルトと共に部屋を出た。
部屋を出る直前、「ありがとう」と小さい声が聞こえた。
「礼を言うなんて、王様のすることじゃないですよ。」と思いながらアルトについていった。
「ユリ姉ちゃん、腹減ってるだろ?いいお店あるんだ案内するよ。」
そう言ってアルトはどんどん進んでいくが、私は見慣れない都会の風景に「わぁ」「すごーい」なんて一々驚いていたのだが、
アルトはもう慣れっこのようで「驚きすぎだよ」と笑っていた。
「いい店あるから紹介するよ」なんて言えるほどアルトはこの街に馴染めたようで、私は嬉しく思った。
「ついた!!ここが俺の行き付けだなんだ。」
とアルトに紹介された店の外観は、小さくて地味で、私の想像していた都会のキラキラした店とは違ったようだ。
「あ、今ガッカリしたでしょ。でも大丈夫、味はまじで旨いから。」
と私の顔をみて考えていた事がわかったらしいアルトが、自信満々にドアを開けた。
「いらっしゃいませー」
個人で営んでいるのか、優しそうなおじさんがカウンターの内側に立っている。
「あれ、アルト君じゃないか。今日は女の子まで連れてきちゃって彼女かい?」
「違うよ、地元の村から来た俺の姉ちゃんみたいな人」
「ああ、アルト君がいっつも話してるあの人」
「どうも、ユリ・ヒルデガードです。」
「私はグレム・クラウド。親父から引き継いで、ひとりでこの店をやってるんだ。地味な店だけどよろしくね」
アルトのオススメのハンバーグを食べながらグレムさんと話をしていると、アルトがこの店に来る度に私の話をしていたらしく、グレムさんは私のことについて詳しかった。
アルトへの仕返しに、グレムさんからここに来てる間のアルトの様子について聞いてると、アルトが「やめろよーいいだろーもう」と横でずっと文句を言っていた。
成績が良くて優秀な生徒と噂されているらしく、評価はとても良かったのだが、アルトは自分が誉められているのが堪えられないらしく、最後には耳を塞いでいた。
「ご馳走さまでした。」
2人で店を出て王様が用意したホテルへ向かった。
アルトは軍学校の寮があるのだが、どうやら王様は久しぶりの再開だ、と気を使ってアルトの部屋も用意してくれたらしい。
久しぶりの再開で部屋でアルトと話し込んでしまったが、明日に備えて寝ようとアルトに言われた。
あんなに子供っぽかったアルトに言われ、しっかり成長したんだな、などと考えながら眠りにつくことにした
自分が思っていたよりも多くに人に見られていて、嬉しさと驚きでいっぱいです。
これから少しずつ更新頑張りますので、よろしくお願いします。




