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「革命」の日

 朝になる。

 昨日のは夢だ。

 そう思いながら外へ出ると村の人たちが昨日の事を話しているのが聞こえる。

 どうやら夢じゃないらしい。


『世界を作り替える』


 昨日の声はそんなこと言っていた。

 だが、村をみても昨日となんら変わっていない。

 村の皆もいつも通りに仕事に取り掛かかる。


「ぎゃああああ助けてええええ!!!」


 そう叫びながら狩りと魔物退治に出掛けた人たちが3体のファングから逃げている。

 それはとても異様な光景だった。

 ファングはイノシシのような魔物で、確かに狂暴で危険な生き物だ。

 今まではファングを簡単に倒していた人たちが、手も足も出ず吹っ飛ばされているのは、信じられなかった。


「おい!!あいつらを助けるぞ!!」


 そう誰かが叫んだ途端、はっとしたように皆が動き出した。

 ありえない、信じられない、そう思っているのは私だけじゃなかった。

 皆もこの状況を受け入れられないのだ。


 何とかして助けなければならないが、狩りや魔物退治をやっている人たちは戦闘に自信のある人ばかりだ。

 そんな人たちが倒せない相手を、我々は倒せると思えなかった。

 でもやれるだけやるしかないと、みんな弓矢を持ちはじめる。

 ファングの興味を此方へ逸らそうと、ファングに向かって矢を放つ。


「グォオオオオ」


 三匹のファングが一斉にこっちに向かって走ってくる。

 皆が矢に魔力を込めて放つ。

 しかし、ファングはダメージを受けていないのか、そのまま走ってくる。


「いや、来ないで!!!」


 叫びながら私は魔力も込もっていないただの矢を、ファングに向かって放つ。

 その瞬間


「グ…ォオ……」

 

矢を受けたファングがその場に倒れ、それを見た残りのファングが逃げていった。


「え、なんで…」


 魔法を使えない私は魔力を込めて矢を放つこともできない、そんなただの矢は、ファングに効くはずがない。

 しかも、それで倒せるはずなんて、絶対にありえない。

 はずなのに、倒せてしまった。一撃で。


「やったぞおおおお、ユリ凄いじゃないか」


 周りの人たちは大喜びしていたが、私はただのまぐれだと思った。

 


 どうやらまぐれではないようだ。

 あれから数日がたった。

 狩りや魔物退治にいった人達は魔物を全然倒せずに、毎回あのときのように追いかけられて逃げ帰ってくる。

 そして私が魔物を攻撃して、魔物を一撃で倒す。

 という出来事を毎回やった。

 さすがにまぐれはこんなに続かない。

 自分でもわかっている。

 自分が魔物を退治しているのだと。


「みつけました!!あなたがユリ・ヒルデガードさんですね。」


 魔物を倒した私をみて、男が駆け寄ってくる。


「私、王命により、あなたを探していておりました。騎士のレイ・アルバードと申します。」


「王命!?私、なにもしてないわ」


「貴女を捕まえようとしていたわけではなく…貴女のその力を是非貸してほしいと、王様が仰られております。」


「私の力?」


 おそらくそれは、私が魔物を倒している力について言っているのだろう。

 国中を回って魔物を倒せる人を探していたのか。

 でも、私を名指しってことは私が魔物を倒せる事を事前に知って王命を出したってこと? 

 この数日で魔物は何度か倒したけど、それを見られていたとして、王宮に帰って報告して、もう一度戻って来るためには結構な時間がかかるはず。

 怪しい、怪しすぎる。


「私に力なんてありませんよ。私は非力で、無力です。

魔法も使えませんし、武器もまともに使えません。きっと人違いです。」


「いえ、非力で無力だからこそお願いしているのです。」


 適当に誤魔化して帰って貰おうと思っていたら、変な事をいいだした。

 非力で無力だからこそってどういう意味?


「あなたは、私が魔物を倒せる理由を知っているんですか?」


「…はい。ですが、ここではお答えすることが出来ません。

王宮へ行けば王様が直々にご説明なさると思います。」


 つまり、王様たちは私の力について知っていて、私は魔物を倒せると事前に分かっていて王命出した。ということだろうか。


「この村の事ならば心配ありません。騎士団を村周辺に配置する予定です。どうか王宮へいらしてください。」


 なんかさっきから気になっていたが、王命なのにこの人は私の顔色を伺い過ぎだ。

 王命ってもっと堂々と

「従わないと処刑」

 っていう感じじゃないの?

 でも多分、その理由も王宮に行かないとわからないのよね。


「わかりました。行きましょう。村の皆を宜しくお願いします。」


 こうして私は騎士のレイと共に、首都ネルダへと旅立った。

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