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ヤギを引き取る

作者:琉紅
身の回りの出来事を集めて、短編にしてみました。

日記のようになりました。


 私は、小学校の近くの公園にいる。

 そこでは、草刈りの活動が、ボランティア主体で開かれていた。
 確か、去年も参加した覚えがある。

 終了後、さっさと帰っていく人もいるが、私は残った。
 スタッフの2、3人、まだゴミ袋の収集に忙しそう。

 携帯に残されていた学校の番号に、電話をかけた。
 教頭先生の声が聞こえた。女性の先生だ。

「もうしばらく、待ってもらえますか? もうすぐです」


 去年まで、ここの小学校でPTA活動をしていた。
 娘が中学に上がったので、今年から抜けていたが、私のことを教頭先生は覚えていてくれた。
 子どもがウサギの飼育員をやっていたこともあるが、エサが無くなったと聞くと、私はペットショップまで足を運んだ。


 目の前に白い子ヤギが、一頭、引かれてきた。
 生まれてすぐ飼われたメスだと聞いていた。まだ1才足らずとも。

(不思議だ、とてもおとなしい。この草の山をみたら喜ぶものと)

 子ヤギは、鳴かずに、そこにいた。

 誰が、新しい主人なのか、それを受け入れるのをためらっているのか顔を背けて、外の景色ばかりを眺めている。


 教頭先生が、遅れて来た。

「先生、久しぶりですね」
「ええ、すいません。この子ヤギです。私の知り合いの頼みですが、よろしいのですか?」
「いいですよ。私も犬を15年、飼っていました。場所はありますので、大丈夫です。子供たちも喜ぶと思います」

 首輪につけられた(ひも)を手に、家へと。

 途中、ジーッと前を向いたまま、私と顔を合わせてくれない。

 ヤギにとって新居の場所は、アパートの3階だ。
 私が階段の手前に立つと、のれんをくぐるように、頭を一度下げて、寄り添ってきた。

 「よいしょっ」と、持ち上げて、左肩に乗せた。 
 2階に住んでいる別の家族は、階段の踊り場で小型犬を飼っていた。何かと、トラブルがあると、かわいそうだと思った。

 背負ったこの子の名前、先生から聞くのを忘れていた。
 におわないようにと、肌に透明な何かを塗られていた。
 お化粧だろうかと。

 ヤギの体に左頬を当てながら、前の(あるじ)の事を考えた。聞いた話によると、

 七十代の女性が、生まれたばかりの子ヤギを、どこからか引き取って育てたらしい。その女性の実情を詳しくは訊いてないが、残念なことに先週、病気で亡くなったと。
 親族が来て、持ち物を整理するが、ヤギをどうしたらいいのか困り果てて、教頭先生に相談を。

 そのヤギを背負い、右手で押さえながら階段を上る。

 大きく呼吸をするのが分かった。そして、喉がうなった。()いたのかも知れない。

 私に、その気持ちが伝わってきたのか、ふと、ある光景が思い浮かんだ。



 一軒家の前に、女性が一人立っている。このヤギに別れを告げているのだ。

 右手をこちらに向けて、振っている。

 ヤギは、何も声を発せず、口を閉じている。耐えているのだろう。



 2階の踊り場で、チワワとすれ違った。運よく、寝たままだ。
 左耳が、ちょこっと動くので、私の足音は分かっているようだ。しかし、背負われたヤギにはまだ、気がついていない。


 3階にたどり着いた。

 入口の広場に、そっと下した。


 終り。


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