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勇者、知識を得る

「この世界には基本的に六つの人種と神族がいます。それぞれの種族が特異なチカラを授かっています」

そう説明するのは、ガルシア王国の宮廷聖法師である。広間にて、純白の神官服を纏ったによるこの世界の説明をアキトは時節質問を挟みながら聞いている。アキトの隣には聖女であるエルネスタもいる。


「天上におはす神族にチカラを賜り、聖法を行使する人族。魔力を秘め、魔法とする忌々しい魔族。精霊法……自然の力を借り行使する長耳族。同じく自然の力を行使する土人族と魚人族。竜人族も自然の力を使いますが、彼らはとくに氣功法の扱いで有名です」


「つまり、僕は勇者だから、聖法の扱いに長けている、と……」


「そうですね。しかし、我々人族も魔族に比べれば微々たるものですが、魔力を宿しています。杖などの媒体があれば、魔法の行使もできます。他にも氣功法も鍛えれば扱えるでしょう。アキト様は勇者ですので、素質は充分かと」


「勇者という称号は伊達ではないということか……」


アキトは唾を飲み込むように唸る。


「それと、種族関係なく、この世界にはスキル持ちというのがいらっしゃいます。魔力、聖力、精霊力に関係なく、火を発動したり、空を飛んだりできるスキルを持つ方々です」

エルネスタがそう付け加える。


「へぇ……。エルネスタは聖女ということは、聖法を扱うの?」


「エルと、親しき者たちはそう呼びます。私の聖法はガルシアで一般に広まっているものとは流派が異なりますが、神の力を借りているというのは同じです」


「アキト様には、これから数日ほど、仲間を交えて特訓をしてもらいます」


「仲間、ですか?」

神官の言葉にアキトは首を傾げる。


「ええ、入ってきてください!」

神官が声を張る。すると広間の扉が開き、


「へぇ、この人が勇者様か。精悍な顔つきだな」


「あからさまに測るような目をするな。礼節を持て」


そう言って入ってきたのは二人。十七であるアキトより少し上くらいの青年と、アキトと同い年くらいの少女。

青年は百八十くらいの長身に茶髪と、少々緩んだ空気を纏っている。少女は真逆で、赤い長髪を後ろで束ねて、目線はきりりと、つまり気の緩みを感じさせない赤眼である。女騎士のようだ。


「俺はヤン・リーフェンス。冒険者ギルドに所属している。お前の旅の共だ。絆はおいおい深めていこうぜ」


「私はアルテミジア・ラ・トゥール。ガルシア王国近衛騎士団所属。普段はエルネスタ様の護衛を担当させてもらっている。今回もエルネスタ様の護衛という名目で付き添う。よろしく頼む」

そう言ってアルテミジアはお辞儀をした。


「俺はアマカゼ・アキト。アキトと呼んでくれ。強い人達が共にいてくれると心強いよ」

アキトは二人に笑顔で握手をした。




「アキト様の魔法適性は火と光のようですな」

とある午後、王宮の広場にて、ローブを着た初老の男は長い白髭を撫でながら感心する。


「アキト様すごいです! ダブルは人族魔法界隈ではあまりいませんよ」

エルネスタが褒める。


「ワシもこの歳でようやく四属性持ち、マルチですからな。いやはやすごい。ワシも凄い」

魔法には火・水・風・土・氷・闇・光・無の8属性があり、魔力をそのまま扱うだけの無属性をカウントせずに使える属性を数えていく。使える属性数やその属性で使える魔術の数で強さが測れる。


「慢心は良くないが……頰が緩むな」

アキトは手を置いている水晶玉に映った赤と白色を見ながらほころぶ。


今、アキトは仲間たちと共に基本的な鍛錬をしていた。といっても、アキトが宮廷聖法士や騎士団の人に基本的な剣や魔法の扱い方を習っているのを、ヤンやアルテミジアが体を動かしながら見ているだけだが。今は魔法の授業中である。


「人族が魔法を扱うには何らかの媒体が必要です。基本持ち運びやすい上、安価な杖を使いますが、アキト殿が先ほどの剣の鍛錬で貰い受けたその直剣……どうやら魔法媒体にもなるようですな。相当な業物かと」


「これで魔法が使えるってことですか?」


「そうなります。勇者様ならできるじゃろう。剣に魔力を通してみなされ」

気持ちを集中させ、己に湧き上がる何かを剣に流し込む感じ、と初老の男、宮廷魔道士団長は言った。


「……んんっ、こうかな?」

アキトは力んでみせる。すると、アキトの身体が淡い、黄色の光を帯び始めた。


「そうです。それが魔力。それを剣へ流し込むのです!」

魔道士団長が息巻くように促す。

アキトはさらにイメージする。纏わり付いている光が腕へ収束し、柄を伝い、刀身を淡く染め上げる。


「できた……」

アキトが呟く。


「アキト様凄いです!」

「魔力をこうも早く扱えるようになるとはの……」

「おい見ろよアルテミジア、勇者はやっぱ天才だ」

「…………」

みなが手放しで褒める。


「アキト殿、切っ先をあの木に向けてみよ。そして唱えるのじゃ、ファイヤーボールと」


「ファイヤーボール!」

アキトが叫ぶ。そのとたん、切っ先が煌めき、サッカーボールサイズの球体が放たれた。


「ウォーターアロー!」

魔道士団長が即座にとなえる。すると、その水の奔流は炎球を追いかけ、押し潰すように飲み込む。そして炎球は消滅し、水の奔流が木にぶち当たった。木が少し揺れる。


「と、このように相剋する属性で消すことが可能じゃ。あと、魔族の場合、魔力と体力はイコールじゃが、人族の場合は違う。枯渇すればしばらく使えなくなるでな」

ジジイは誇らしげに語る。そしてこれで今日の魔術レクチャーは終わりである。


そこから純白の装いをした男性神官が現れた。

「では、次は聖法の授業です。よろしくお願い致します、勇者様

アキトで良いよ、とイケメンははにかみ、礼するためにこうべを垂れた。


聖法は神々の御力を借り、具象化させるものですうんたらと……アキトへの講習は続く。









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