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自由人、カネを得る

「ようやく街に着いた……。疲れた」

ハルトは疲労で震える脚を抑えながら、嘆息する。2人の眼前には城壁がそびえ立っていた。

「おつかれデス。ようこそ要塞都市アビニョンへ。人口は約3万人。絹織物業で盛んな都市ですね」

ザスキアは笑顔を作ると、都市の概要を語った。


「と、とりあえず中に入ろうぜ……。飯が食いたい」

ハルトはしんどそうな表情でヨロヨロと市門へ歩く。が、


「は? 通行手形がないと入れない? 持ってないぜそんなもの。なら通行料出せ? 持ってないぜそんなもの。……つまり入れない?」

どうやら入るための条件を満たしていないようである。


「どうすんだよザスキア?」

「ん〜ん、困りましたねぇ。わらし、お金持ってないれすよ?」

「……どうすんだよザスキア?」

ハルトは困り顔でザスキアに視線を送る。


ん〜、とザスキアはしばらく逡巡し、

「じゃぁちょいとぐるぐる回ってみましょぉ☆」

ザスキアはニコニコ顔でそう告げた。



「……で、どうすんだよ。俺もうヘトヘトだよ」

「根性がないですねぇ。モテませんよ?」

「女神様から賜ったスキルがあるからヘーキヘーキ」

ハルトは手をヒラヒラと振った。


「そこは私だけしか見えてないから問題ないって言ってくらさいよぉ」

「幼女は対象外」

「もう子供産める肉体デスゥ」

ザスキアはハルトをポカポカと殴る。


「へーへー、お? ありゃ人……か?」

ハルトは遠くの方で馬車を走らせる人影をみつけた。人物像は未だよく分からないが、恐らく人である。


「うぃ、目当ての発見れすね。ハルトしゃん、あれは敵です」

「ん? 悪者なのか?」


ザスキアはニタリと笑いながら、黄色いフードをかぶる。

「いえいえ。あっ、ハルトしゃんはこれをかぶってくらはい」

そう言ってザスキアは白く、キメが細かい布地をハルトに渡した。


「なんだこれ? パンツじゃないよな?」

ハルトは訝しみながらその布地を広げる。

「あい、わらしのパンツです」

広げたそれが、家の洗濯カゴでよく見る三角形であると認識した瞬間、ハルトは吹いた。

「パンツじゃねぇか!」

「prprしちゃらめデスよ?」

使用後は地面に埋めといてとザスキアは言う。


「これ被ってどうすんだよ!?」

「あの馬車を襲撃して金をせしめるデス」

ザスキアはペロリと舌舐めずりをする。


「それはっ……ダメだろう」

ハルトの良心が訴える。

「ここでやらなきゃ野垂れ死にデスよ?」

「いやっ、でも……」


「異世界に実質最強で転移したんですから、無駄な倫理観なんて捨てちゃいましょぉ」

「いや、チカラがあるからこそ自己を律さなければならいと」

先ほど人を襲った男のセリフではない。


「とか言ってパンツ被ってるじゃないれすか」

ザスキアがニヤニヤと流し目を送る。

「異世界に実質最強で転移したんだから、無駄な童貞感は捨てなきゃな」

「そうれす! ではでは奴をぶっ倒して金貨を貰っちゃいましょう☆」

ザスキアは前方の馬車を指差すと、走り出した。


「あっ、待て! 俺の仕事だ」

ハルトも追いかけるように駈け出す。



塩の行商人、ジロラモ・ヴァザーリはうっすらと見えるアビニョンの市壁を視認し、安心感を得た。

「護衛の皆さん、もうじきアビニョンですよ! 道中ありがとうございました」

馬車を取り囲むようにして歩いている男たち五人にジロラモは感謝を述べる。


「今回は襲撃がなかったからな。楽な仕事だったぜ」

リーダー格であろう大男が豪快な笑顔で返す。


「いえいえ、それはゴンザレスさん達の覇気が強くて盗賊も近寄れなかったんでしょう」

ジロラモはすっかり安心しきっていた。


「ボス、前方から2人組……いや、女の子が……パンツ被った変態に襲われてるぜ」

ゴンザレスの子分の1人がそんな事を言うので、彼も遠目を向けた。


「なんですって!? ご、ゴンザレスさん、助けてあげてください!」

ジロラモは慌てふためいて叫ぶ。


「くそ、こんな所で変態だと……。てめぇら、接近とともに返り討ちだ!」

そう言ってゴンザレスは背中の大剣に手をかける。


「ギャヒー! ザスキア、なんか護衛っぽいのが4人いるぞ!?」

「いえハルトしゃん、馬車の後ろにいるのも含めて5人デス!」

「どいつが一番強いんだ!?」


『超越の加護』は1人にしか対応できない。複数の敵がいる場合はその中で一番強い者を対象にしなければ危ういのだ。

「えぇとぉ、あの一番デカイ男! ゴンザレスとかいうAランク冒険者デス!」

そう言って大剣を構えた大男を指差すザスキア。


「よっしゃ、あいつは俺らの敵だ! オーバードライブ!」

ハルトとザスキアはゴンザレスを敵と認識する。その瞬間、ハルトの全身が淡く発光した。


「くそっ、変態め! せやっ!」

ゴンザレスがハルト目掛けて大剣を薙ぐ。

「効かぬ!」

ハルトはニタリと笑うと彼の大剣を片手で受け止めた。


「!? 化け物か……」

「この剣幾らだろ……」

ハルトはそう呟きながら、彼の大剣を引っ張り、唖然としているゴンザレスの鼻っ柱をぶん殴った。


「ゴンザレスさん! あ、お嬢ちゃん、もう心配しなくて良いよ。僕らがまもってぶふぁ!」

ザスキアはゴンザレスの後ろに控えていた護衛の1人の腹に蹴りを入れた。


「必殺、エンジェルキックです☆」

ザスキアはしたり顔のまま今度は別の護衛へ飛び掛る。


「このガキッ、美人局的なアレか!」

「にしし、覚悟デス!」

ザスキアとハルトは残党も蹴ったり殴ったり投げたりして消沈させていく。

そして、


「おうおう行商サァン、有り金3分の2寄越しな」

「ヒィイイイ、お助け、命ばかりはっ」

ジロラモはハルト達に敵わないと分かると、すぐに命乞いをした。


「なら金出せよ。商人なら命は金で買えるって知ってんだろ?」

ハルトは地団駄を踏んで脅しにかかる。ザスキアもジロラモの周りをピョンピョンと飛び跳ねて脅していた。


「こ、これで全部です! オタスケをぉ!」

ジロラモが差し出した金貨入りの小袋を引っ掴むと、ハルトは紐を解く。

「お、おぉお……」

そこには眩く、発光してるのではと疑うほどの金貨がざっと30枚。


「ザスキア……金だ」

「明日も生きていけましゅネ」

「フォオオオオオ」

ハルトは金貨を20枚取り出すと、ポケットにしまった。


「おらっ、残しといてやるよ。寛大な俺に感謝しな」

「チキンなハルトしゃんに感謝しな」

小袋を投げ渡したハルトとザスキアはジロラモにメンチを切ると、倒れて意識不明のゴンザレスの腹を軽く蹴って、走り去っていった。


ジロラモはしばし俯くと、腹を抱えるようにして泣き伏した。

「くっ……いつか、いつか必ず……天が裁きを下すだろう!」

ジロラモはそう叫ぶことで悔しさを表現した。


草原には2人の男女の笑い声が木霊した。


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