崖から脱出
9章
30分の間、私はスカイルとヴェリテナン族について話をしていた。
「ヴェリテナン族って、どういった種族なんでしょうか?あなた達は何者なんですか?」
「お主、面白いことを聞くのぅ。」そう言うと私の前にあった岩に腰を下ろした。
「ワシラ“ヴェリテナン族”はこの森の守護神じゃよ。古くからこの森を守り続けている。しかし、近頃、ワシラの力が弱まってきている。」
「それは、何故ですか?」
「ワシらは人々からの信頼を得て初めて生きることができる生き物なのじゃよ。だが、最近はこの森を通る人が誰もいなくてね、力が弱まってしまったのじゃ。その隙にワーストエンドに森が侵されて、夜になると黒い煙で覆われるようになってしまったのじゃ。このままでは森が枯れてしまう。村で何が起きているか知らんが。噂によると、ワーストエンドが関係しているようだ。あの組織さえなくなれば、この森も村も、平和を取り戻すことができるのに。」
え、私のせい…、こんな設定もあったのか。知らなかった。スカイルは続けて話す。
「お主、“ダークネス村”というを知っているかね?」
「はい。」
「この村がワーストエンドに支配されたのは、もう何十年も前のことだ。人々もワーストエンドに支配されてしまって、今じゃ化け物となってしまった。かわいそうに。ちなみに、ワシラは見つかれば殺されてしまう。」
そんな設定あったっけ?
「ワーストエンドは何十年も前にその村を支配してから特に動きがなかったものの、最近になって突然勢力を拡大してきた。何故なのか、その理由は未だ分かっていない。ワシらは、ワーストエンドのボスが百回目の誕生日を迎えたことにより何らかの能力が解放されたからだと考えている。全く、こんなことになるくらいなら、あのボスがまだ生まれたばかりの時に殺しておけば良かったんだ。あ、失礼した。ついつい行き過ぎた話をしてしまった。どうだ、そろそろ効果が現れる時間だ。気分はどうかね?」
あぁ、心が痛い。そんな話聞かなきゃ良かった。でも、ゲームが始まればこの記憶はリセットされる。何も感じずに悪役をやり切れるはずだから。
「どうしたんだい?気分は?」
「だ、大丈夫です。」
「よし、では飛び方を教えてやろう。まず地面から両足浮かせて、飛べ!と念じる。それだけじゃ。あとは、自分が飛ぶ様子をよく頭の中でイメージすること。かなりの集中力と体力を要するが、慣れてくれば少しは楽になるだろう。次に注意点を話す。注意することは一つだけ、飛行中に他ごとを考えない。よそ事を考えてると、バランスを崩して地面に真っ逆さまじゃ。少しここで練習していくといい。」
「わかりました。」
まず、両足を浮かせるのか。よし、気合いを入れて思いきりジャンプする。飛べ!!!
「痛っ!」
尻餅をついてしまった。結構飛ぶ瞬間が難しいな。集中して。ふぅー…、飛べ!
ズシンッ!
また尻餅をついてしまった。よし、もう一度。集中集中。
飛べ!!、ズシン!
よしもう一回、飛べー!
(練習すること30分)
「腰が痛いよー。もう、なんで飛べないの。」
「焦っても仕方ないぞ。落ち着きなさい。今度は心を空っぽにしてやってみなさい。どうもお主は考え事が多いようだ。」
またホッホッホと笑いだした。
悔しい…。次こそ飛んでみせる。
目を閉じて、深呼吸をする。心を空っぽにして…私ならできる、私ならやれる。飛べ!
…あれ?尻餅をついてない?
目を開けると体が浮いていた。地面から1メートルぐらい上をぷかぷかと浮いている。
「やった!浮いた!」
そう言った瞬間、再び重力によって地面に叩きつけられた。でも、今回は痛さより喜びの方が大きかった。コツが分かったかもしれない。
(それから30分)
「どうやら。コツが掴めたようじゃな。もう出発してもよかろう。」
大分自由に飛べるようになっていた。飛べると楽しくて仕方ない。スカイルが洞窟の奥から羽のような形をした葉が2枚ついた不思議な木の実を持ってきた。
「こいつが、お主を森の外まで案内してくれる。進み出したら止まらないから、見失うんじゃないぞ。」
スカイルが手を離すと木の実は空高く飛び始めた。大変、置いてかれちゃう。
「スカイルさん、ありがとうございました。お元気で!」
そう言って、木の実めがけて飛び立った。




