森から脱出
8章
僕は天井に空いた正方形の穴を見た。
「何がおきても、動くんじゃないぞ。」
「へ?」
その瞬間、体が浮いた。少しづつ床から離れていく。
「うわっ!!」
急に加速して正方形の穴に吸い込まれた。ひどく驚いたせいで間抜けな声をあげてしまった。恥ずかしい。周りは真っ暗で何も見えない。下を見ると部屋からグリンとマイノルがこちらに向かって手を振っていた。
上昇し始めてから20秒ぐらいが経過した。だんだん速度が遅くなってきた。上から光が漏れている。
「着いたぞ。」
「…これは、すごい…。」
僕たちは大木の上に立っているらしい。見渡す限り森が続いている。空の温かみのあるグラデーションが美しい。
「早くこれを持って。」
そう言われて、剣と盾を持つ。Tシャツ、ハーフパンツ姿に剣と盾はダサいなと思う。
「では最後にこの腕時計を渡す。」
渡された腕時計は昨日から僕がつけていたものと全く同じである。
「文字の横にそれぞれ丸があるじゃろ。この丸は君が行きたいところへ導いてくれるものじゃ。さぁ、左手首につけて。そして自分が行きたい場所を強く念じなさい。」
一旦剣を置いて腕時計をつける。よし、次は行きたい場所を念じる。キルのところへ…いやいや、違うじゃないか。僕が行かなければならないのは…。強く念じていると3の横にかかれた丸が光り出した。
「よし。ではその丸の方向に向かって進みなさい。きっと行きたい場所に辿り着けるだろう。日が暮れてしまったらこの辺りは黒い煙で包まれてしまう。早くお行きなさい。」
「はい!ありがとうございました。あなたたちを信じて良かったです。これからもお元気で!」
丁寧にお辞儀をして、僕は3の方向に向かって一歩踏み出した。が、ちょっと待ってここは大木の上だ。僕は今、地面が他の木々で見えないぐらい高いところにいる。
「あのレグルスさん。どうやって下に降りればいいんですか?」
「下に降りる必要はない。自分の行きたい方をよーく、見てみなさい。」
そう言われて3の方を見た。何もないけど、と言って後ろを振り返る。だが、そこにレグルスの姿はなかった。
どうすりゃいいんだよ。もう16時を過ぎてるのに。怖くて他の場所に移動することもできない。頭を抱えてその場にしゃがみ込む。しゃがむと、丁度枝葉が僕の顔の辺りに来る。ん?僕は今どこに立ってるんだ。空中か?
僕の膝ぐらいまで葉が生い茂っているため、足元までは見えない。枝葉をかき分けて自分がどこに立ってるのか確認した。なんだこれ?ガラスか?手で足元を叩いてみるとコンコンと音がした。本当にガラスを叩いてるみたいだ。何も見えないけど。再び行きたい方へ視線を向けた。
「あ、何かある。」
視線の先には、光が反射して白く光る道が続いていた。もしかして、この上を歩くのか?注意深く一歩踏み出してみた。下が透けて見えるため、怖くて膝がガクガクしている。ん?よく見るとガラスのような道があるところとないところで下の景色の見え方が違っている。道があるところの方が下の景色が若干ズームされたように鮮明に見えている。これを目印にすれば落ちることはないだろう。日が暮れる前に森を抜けなくては。僕は注意しながら、ゆっくりと歩き出した。




