その時、キルは…
7章
ここは、どこ?
目が覚めた時、私は木の葉で作られたベッドで横になっていた。起き上がってみるが、体に痛みを感じるところはない。周りを見渡しても誰もいない。ここは洞窟の中なのかな、床も天井もゴツゴツとした岩でできているみたいだ。
「やっと、起きたかい。」
突然背後から老人の声がして、肩がビクンッと跳ね上がった。恐る恐る振り返ると、そこには白い洋服を着た小人が立っていた。
「かれこれ2時間ぐらいは寝ておったぞ。」
「あなたは誰、ですか?」
恐る恐る尋ねてみる。
「ワシはヴェリテナン族の1人、スカイルじゃ。お主の名はなんじゃ?」
「キル、です。あの、ここはどこですか?私は死んだのですか?」するとスカイルはホッホッホと笑い、
「崖の下にあるただの洞窟じゃ。お主は死んではおらんよ。」そう言って、とてもニコニコしている。何がそんなに可笑しいのだろうか。まだ、状況が飲み込めていない。さっきの見えない生物と何か関係があるのだろうか。
「険しい顔をしておるのー。肩の力を抜きなさい。ワシは何も悪いことなんてしないからのぅ。」まだニコニコしている。
「あなたは何者ですか?」
「おや、分からないのかね。さっき一緒に崖から飛び降りたのに。」
え?どういうこと?一緒に飛び降りたって。
「もしかして、あなたは、さっきの姿が見えない生物の一人ですか?」
「そうじゃ。お前さんが突然走り出すから危うくつかみ損ねるとこだったわい。つかみ損ねたら崖の下までまっしぐら。危なかった、危なかった。」
そういえば、崖から飛び降りる瞬間までしか覚えてない。その後気を失ってしまったのだろう。そういえば、主人公くんはどうなったんだろう。
「あの、私と一緒にいた彼はどう…。」
「お主はワシラを信じてくれた。だから、お礼として受け取ってほしいものがある。」こちらの話を聞く気は無いのか、話していることに気づかないのか、喋り続けている。喋りながら、スカイルはキラキラ輝くエメラルドグリーンの液体を持ってきた。そしてそれを私に差し出す。
「飲みたまえ。」
「え、これは、何ですか?」
「飛行能力を身に付けることができる水じゃ。わしからの細やかなお礼じゃよ。害はない。ささ、飲みたまえ。早くしないと毒素が発生してしまうぞ。」
え⁉︎
毒素という言葉を聞いてすぐに飲んでしまった。
「…。」
味は無い。香りも無い。飲んだところで何か体に変化が起きるわけでもなく、ただの水を飲んだのと同じような感じだ。
何も起きないんですけど…
「効果が出るまで30分くらいはかかるから、しばしここで待て。」
「30分もかかるんですか…。」
スカイルはこちらを見てニコニコしている。
そういえば、主人公くんはどうなったのだろう。
「あの、彼はどうなったんですか?」
「ん?彼というのは、君と一緒にいた青年のことかな?彼は大丈夫だよ。早ければ、今頃、ワシラの住処に辿り着いてるだろう。」
「住処?」
「そうじゃ。もしかして、お主は3つ目の要求が何か知らないのかい?」
「はい。知りません。」
そりゃ、崖から飛び降りてしまったのだから知るわけがない。
「そうかそうか。ではワシが教えてやろう。3つ目の要求は“ワシラの住処に来ること”なんじゃよ。」
そうだったのか…。
「でも、何であなたたちは自分達の住む場所へ案内したんですか?」
「荷物を返すためじゃ。あとは、信用してくれたお礼に、食事を振る舞うためでもある。」
そういえば、荷物は全部没収されたんだっけ…。
「それだけのために住処に連れて行くんですか?」
「いいや、違う。もっと、大切な理由がある。この森はワシラの協力なしに出ることはできない、と言ってたじゃろ。なぜなら、ワシラの住処に出口があるからなのじゃよ。」
そう言うと、再びホッホッホと笑った。
「つまり、あなた達が住処に案内した最大の理由は、彼をこの森から脱出させるためってことですか?」
「そうじゃ。お主、理解が早いのぅ。」
じゃあ、今頃主人公くんは森の外に出てるかもしれないのか…。もう、私はこんなところで何やってるんだ。時間がないのに。




