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ゲームの中の物語  作者: 石川リョク
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見えざる者の正体

6章



上流に向かって走り出してからどれだけ経っただろうか。まだ住処らしきものは見当たらない。木が生い茂っているせいで太陽の位置もわからない。足が痛い。体は汗でびちょびちょだ。もうかれこれ1時間は経っているのではないだろうか。そろそろ見つけないと体力がもたない。そう思った時、どこからか香ばしい匂いがして来た。何の匂いだろう。もしかしたら、もう近くまで来ているのかも知れない。ペースを上げてさらに登っていく。

ここは…!


目の前には直径10メートルはありそうな大木がそびえ立っている。根元をよく見ると、まん丸の穴が2つ空いているのが分かった。穴からは光が漏れ出している。ここが住処か?僕は大木の根に腰を下ろした。手前の穴から中を覗いてみる。すると穴の中から声がした。

「おー、やっと来たか。さぁ、中に入りたまえ。」

疲れきっていた僕は、そう言われるとすぐに穴の中へ入っていった。


入るとすぐに階段があった。十数段しかない短い階段だったが、疲れていた僕には十分辛かった。

部屋の中はとても明るい。目の前には赤色の円錐形の帽子を被り、赤色の洋服に黒のベルト、白いズボンという格好をした小人が立っていた。背丈は僕の腰ぐらいだろうか。

「ようこそ、我がヴェリテナン族の住処へ!」

「あ…、もしかして、さっきの声の主?」

「そうですとも。ささ、こちらへ。」そう言うと赤色の小人は階段を降りていき、僕を部屋の隅にあるソファに座らせた。

部屋の真ん中には僕の膝丈くらいのテーブルがあり、天井にはランプが取り付けられている。床は年輪の模様になっている。おそらく大木を切って造られたのだろう。こんなことして、木は死なないのだろうか。

「よくぞここまで来てくださりました。」

そう言うと赤色の小人は深々とお辞儀をした。

「遅かったねー。3時間もかかってるよ。」

「マイノル!普通の人間で3時間なら早い方だぞ。」

そう言い争いながら黄色と緑色の小人が僕の前にやって来た。黄色の方がマイノルのようだ。

「自己紹介をしよう。赤色の服を着ているワシの名はレグルスだ。よろしく頼む。そしてこの黄色の服を着ているのが」

「マイノルだよー。」

「あと、そこの緑色の服を着ているのがグリンだ。ほら、グリン、挨拶を。」彼は面倒臭そう顔をした。はぁ、とため息をついてから「よろしくお願いします。」と無愛想に挨拶をしてくれた。

「ところで君の名前は?」

「僕は、実は、名前が無いんです。」

「そうか、君はナインと言うのだな。よろしく。」

「いやいや、そういうことではなく、名前をそもそも持ってないのであって−」

「ナインよ、まずは君から預かっていた荷物を返そう。少し違うものになってるかも知れないが、そう気にするな。」

僕の話は全く聞いてないようだ。マイノルとグリンが奥から僕の身長ぐらいはありそうな大きな黒いケースを運んでくる。

「開けたまえ。」

レグルスに促されて僕はケースについた取っ手を持ち上げた。

「なんだよ、これ。」

そこには銀色の剣と盾が入っていた。

「これ、僕の荷物じゃないんだけど。」

「いや、君のだ。少し違うものになってるかも知れないが気にするなと言っただろう。」

「変わりすぎだよ。リュックのかけらもないじゃないか。食糧だってなくなってる。」レグルスの方を見るが、相変わらず呑気そうな顔をしている。

「よく見てみろ。食糧なら剣の横にある小さい巾着の中に入ってるだろうが。ちなみにマップもその中だ。筆記具は剣と盾を作るときに使わせてもらったから、巾着の中にもないぞ。」さっきまで口数が少なかったグリンが喋り出した。

「そのクッキーは一枚食べればスタミナがパン一個分と同じだけ回復する。小さい分たくさん持ち歩けるっていうわけだ。残念ながら水は無い。オレが飲んじまったからな。」飲んじまったって、その時点で僕の荷物の一部は帰ってこないことになるのではないか?

グリンが続けて喋る。

「何が起きてるか分かってないようだから、オレが説明してやる。オレタチ3人は物を自在に変えることができる。そこで、オレタチはお前に今1番必要なものに変えた。それがこれだ。ちなみに一度変えたものはもう変えることはできないし、オレタチにも限界ってもんがある。今日はこれ以上ものを変えることはできない。」

「じゃあ、いつになったら変えられるようになるんだよ。」

「3日後だよん!」

「マイノル!今はオレが喋ってるんだ!お前は喋るな!」

「えー、グリンムカつくんだけどー。」

3日後か。それでは間に合わないな。仕方ない、これを受け取るか。再びレグルスが話し出す。

「ではでは、ここで食事にしようではないか。彼がワタシタチを信じてくれたお礼に!」

「そんなことをしてる時間は無いんだ。早く森の外へ案内してくれないと困るんだよ。」

「ダメだよー。ご飯が済んでからですー。」


結局僕は彼らの食事に付き合うことになった。こんなところで時間を使うなんて。出てきた食べ物を必死に口に詰め込み、できるだけ早く食べ終えた。

「ナインよ。言い忘れてることがあった。1人だけ、死んだものを復活させることができる。誰を復活させたい?」

「え?そんなことができるの?」

「できるとも。さあ、誰を復活させたい?」この小人たち、やりたい放題だな。誰を復活させよう…。

「じゃあ、 “始まりの村”の村長でお願いします。」

「よかろう。その者を明日の夜明けまでに生き返らせておこう。では、森の外へと案内する。ついてきたまえ。」レグルスがそう言った瞬間、天井に正方形の穴が空いた。ちょうど僕とレグルスが一緒に通れるくらいの大きさだ。

これから、何が起きるのだろう。

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