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ゲームの中の物語  作者: 石川リョク
4/18

敵か味方かナニモノか?

4章


9月2日


ピヨピヨ、ピヨピヨピ、ピヨピヨ。

あー、眩しい。窓から差し込む光が顔に当たってる。何かで窓を覆っておくべきだったな、と後悔しつつ左手首についた腕時計を見る。針は5時を指していた。キルは起きてるだろうか。起き上がって、キルが寝ているはずのベッドを見る。寝る前は皺一つなくて綺麗だった布団が、ぐしゃぐしゃになっている。なんていう寝相だ。

「キル、起きて……。朝だよ。」

布団の上をポンポンと叩いてみるが、全く応答がない。

「キル、おい、起きろ。」

布団を少しめくってみた。

あれ、もしかして…

僕は慌てて、布団をバサっと剥がした。

いない!どこに行ってしまったんだ。まさか一人で冒険に行ったんじゃ、いやいや、もしかして逃げたのか。ヘルに連れ去られたのかもしれない。突然の出来事に頭の中がぐるぐると回り出す。なんで居ないんだよー。

ガチャンッ。

突然背後で扉が開く音がした。驚いて振り返ると、そこにはキルが立っていた。

「お、起きた?おはよう。」

何事もなかったかのように、普通に部屋に入ってくる。

「突然いなくなるなよ。心配したじゃないか。」

「ごめんごめん。朝の散歩に行ってただけ。スヤスヤ寝てるから起こしたら悪いなと思って。ごめんね。」

そう言いながらも笑っている。可愛らしいなー。はっ!いけない、何でそんな風に思うんだ、こいつは悪者だぞ。自分にそう言い聞かせ、頭を横に振った。


支度を済ませると僕たちは早速村を出た。出発時刻は6時30分頃だった。小道は狭く、草木が生い茂っている。まるで獣道である。村では、からっとしていた空気が、ここでは湿気を帯びているせい重たい感じがする。ジメジメして、服が体にくっついて気持ち悪い。背の高い木は、葉がよく茂っているため日光を遮り、地面を薄暗くしている。薄暗いのは嫌いだが、暑くないという点ではありがたい。

しばらく進むと小川に出た。

「この辺で一休みしない?」

「賛成!」

二人で近くの岩に腰掛ける。時計を見ると8時を指していた。朝食は家で済ませてきたからお腹は空いてない。そういえば、ヘルについて、ほとんど知らないな。

「ねぇ、ここまで何も問題なく来てるけどさ。ヘルをどうやって倒すの?そもそもヘルってどんなやつなの?」

「ヘルの倒し方かー。このゲーム内には穴があって、そこからヘルは入って来たの。だから、そこからヘルを追い出せば解決するはず。」

「穴がどこにあるかは知ってるの?」

「うん。最終ステージのお城の真上にあるよ。あと、ヘルがどんなやつなのか、だよね。どこから話そうかな…。話すと長くなりそうなんだよね。まぁ、いいや。ヘルは元々…。」

キルが説明を始めた時、右の方から砂利を踏む音が聞こえた。音はどんどんこちらに近づいてくる。

「しっ、何か来る。右の方からだ。違う、左の方からも聞こえるぞ。」

どこだ。何がいるんだ。

やがて音が止み、高い声と低い声が聞こえて来た。誰かが喋ってるみたいだ。

「誰この人〜。」

「この辺では見ない顔だな。」

「あら、ワタシタチが見えてないようね。」

「そのようだな。」

会話は聞こえているのに姿は見えない。

「誰だ!」

どこにいるか分からないので、辺りを見回しながら尋ねた。

「何なのこの人。口悪いわね。早くダマル茸を食べて喋れなくなってしまうがいいわ!」高い声が怒っている。キルはそんなの気にする様子もなく丁寧に質問した。

「あなたたちは誰ですか?」すると再び、

「あんたには関係ないわ!」と高い声が怒った。

「まあまあ、落ち着きなさい、マイノルよ。すまんな、失礼なことを言ってしまって、こういうやつなんだ。許してやってくれ。」

今度はお爺さんのような声が聞こえた。

一体何なんだ、この生き物は。姿が見えないなんて。どうやら、高い声の主はマイノルというらしい。この変な生き物の正体が気になるが、僕たちには時間がない。

「姿も見えないんだ。もう放っておいて先を急ごう。」そう言ってキルを促す。

「ちょっと待ちなさいな。君たちはワタシタチの道案内がないと森から出ることはできない。」再びお爺さんのような声が聞こえた。

え、どういうことだ?道は目の前にあるじゃないか。

「その道を歩いて行っても、元いた場所に戻るだけなのじゃよ。」

「何か証拠でもあるの?姿も見えないようなやつを信用するわけないだろ。」でも、もしこれが事実だとすれば、僕たちは先に進めない。ゲームオーバーだ。どうする、信用するべきか。

「まず、姿を見せてくれないかな。そしたら信用するか考えるよ。そちらについて、知らないことが多すぎる。」

あんな風に言われたのに、キルは冷静だなぁと思う。数秒の沈黙が流れた。すると、高い声のやつが痺れをきらしたのか突然喋りだした。

「ワタシタチが見えるかどうかは、あなたたち次第よ!!」

どういうことなんだ。僕たち次第って。

「あなたたちがワタシタチを信じなければ姿を見ることはできない。道案内もできない。」

どういうことだよ、全然意味がわからない。腕時計をチラッと見た。あぁ、もうすぐ9時だ。

「なるほどね。それで、私たちはどうしたらいいの?」

何がなるほどなのか。まさか、キルが信じるだなんて。

「え、キル、こいつらを信じるの?」

僕はまだ、このよく分からない生き物を疑っている。

「仕方ないでしょ。私たちには時間がないの。信じるより他にない。」

すると、お爺さん声の主が喋り出した。

「よろしい。ワタシタチが今から3つのことを要求する。それを揃えることができたら、姿が見えるようになるだろう。」

はぁ、僕は深いため息をついた。仕方ない、要求に従うか。

「…わかった。一つ目の要求は何?」

そう聞きつつ、変な要求が来ないことを全力で祈る。

「一つ目の要求は…。“君たちが今持っている荷物を全てワタシタチに渡すこと”じゃ。」


…。はい?

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