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ゲームの中の物語  作者: 石川リョク
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真実②

16章



置き去りにされた機械は白く輝いているようでとても綺麗だった。きっと、あの男性から大切に扱われているのだろう。4,5分経ったが男性は戻って来ない。

機械に異変が起きたのはそれから30分後のことである。男性は未だに戻って来ない。ずっと沈黙を続けていた機械が、グイーン、ピュンピュン、プシューと音を立て始めた。どうしたのだろう。さっきまで白かったボディに赤色の線がいくつも出ている。血を流しているみたいでなんだか不気味だ。今度は黒い煙が出てきた。そこへ先程の男性が帰ってきた。

「あー、なんてことだ。またか、クソっ。今度は煙まで出てきてるじゃないか。俺がこないだメンテナンスしてやったばかりだろ。」声を荒らげてそんなことを言っている。先程までの穏やかさはどこに行ったのだろう。はぁー、とため息をつきながら機械の上面を開いた。しばらく中をいじっていたが

「こりゃダメだ。」と言ってゆっくり椅子に座った。ぼーっと機械の方を見ている。すると突然機械がキュイーンと音を立てた。

「アハハハ、アハハ。結局アあんたは私なしでは何もデデできないの。お前はハ、無力だ。すみません。以前感染したウイルスが勝手に操作をしています。今すぐグ、チップを抜ぬいて下さ、アハハハハ。クタバレ!」

どうやらウイルスに大分やられてしまっているらしい。まだ、機械自身は自分を見失ってないようだけど。

男性は俯いて、深く息を吐いた。ここからでは表情が確認できないが、彼が何か覚悟を決めたことは感じとれた。彼は両手で機械を持つと、再び蓋を開けた。

「今までありがとう。gamE5、僕はまだ君と一緒にゲームを作りたかった。」

中からチップを抜くと、機械は灰色になり、何の音もしなくなった。

僕は暫くその光景を見ていたが、やがて視界が真っ暗になった。


数秒後にまた明るくなった。今度はデスクの上に大きな箱型の機械がある。先程の椅子に男性が腰掛けている。男性の表情は無に等しく、チップをじーっと見つめて何を考えてるかは全く分からない。ずっと黙っていた男性が静かに話しだす。

「やっぱり、僕は君を捨てることができない。だから、今回作ってるこのゲームに君を入れて、キャラクターとして残すことにしたよ。何のキャラクターか気になるかい?それはね、ラスボスだよ。僕は、ラスボスがゲームで1番重要な役回りだと思ってる。その大切な役を君にやってもらいたい。名前は、そうだなキル=ラベルなんてどうだ?ダサいと言われてしまうかもしれないな。」

そう言って微笑を浮かべる。

「ウイルスに関しては心配ない。僕がシールドをかけ忘れるなんてことがなければ、ゲームに入るときに、シールドで除かれるから。」再び沈黙が流れる。

「僕は、絶対にこのゲームを完成させてみせる。じゃあ、これで本当にお別れだね。今までありがとう。」

そう言うと彼はチップをデスクの上にあった箱の側面にさした。


もしかして…これは…

キルの記憶なのか?

それから再び視界が真っ暗になった。


「じゃあ、最終チェックをするよ。」

先程の男性は無精髭を生やしていた。どうやら、チップを箱にさしてから数日が経ったようだ。男性は手のひらから少しはみ出すぐらいの長方形の板のようなものを持っている。板の上を親指で軽快にトントン叩いている。ふと、手の動きが止まる。今度は両手の親指を使ってスライドさせたりトントン叩いたりしている。表情までは見えないが、かなり動揺しているようだ。

「何だこれは、どうして、こんなことに。」

彼はデスクの上にある箱の蓋を開けた。慌てて中をいじりだした。

「しまった。シールドをつけ忘れた。」

はぁ、この人はなんてポンコツなんだ。僕以上に間抜けな人はいないと思っていたが、ここにいた。彼は奥から何かの機械を持ってきて作業し始めた。

「gamE5と作った最後の作品を消すことなんてできない。あー、あと2日で発売されるというのに。何で俺はいつもこうもバカなんだ。クソっ。」

喋りながらも手は忙しく動いている。突然、手の動きが止まる。彼は立ち上がって箱からチップを抜いた。そして、元々入っていた白色の、今は灰色だが、小箱にさした。小箱は以前よりも赤みを帯びて光り出した。

「gamE5、聞こえてるか。」だがgamE5、いや、キルからの応答はない。

「ウイルスが入ったまま売り出すわけには行かないんだ。gamE5、聞こえてるかどうか分からないが君に最後の頼みがある。ウイルスが入った状態でシールドをつけても、僕のシールドは性能が悪いからウイルスを除くことができない。外部からの侵入を防ぐことしかできないんだ。そこで、僕はウイルスがゲーム外に出た瞬間シールドがかかるように設定しておく。まだ君が君自身を見失って無ければ、発売されるまでにウイルスを追い出してほしい。ボスの部屋は主人公がいないと入ることができないから、主人公と一緒に行動してくれ。ゲームを起動させておく。ちなみに、主人公も他のサブキャラとは別に少し賢く作ってあるから、そこそこ使えるはずだ。君は僕と一緒にゲームを作ってきたから大体のゲーム内容は分かっているだろう。だが、僕は君がいなくなってから少しゲーム内容を変更したところがある。説明していたら発売日までに間に合わなくなってしまうかもしれないから説明は省くよ。君にしかできないんだ。頼む、無理だと思ってるかもしれないけど、僕は一縷の望みにかけるよ。」

そう言うと、再びチップをデスクの上の箱に挿し替えた。

そういうことだったのか…何て無責任なクリエイターだ。でも、キルは一生懸命戦っている。きっと、あのクリエイターのことが大切なのだろう。戦っている…?そうだ、僕はこんなところで何をしてるんだ、早く抜け出さなきゃ。

その時、どこからかキルの声が聞こえてきた。

「しっかり、自分を見失わないで。あなたなら抜け出せるはずよ。」

早く抜けないと。キルには散々迷惑をかけてきたんだ。僕は目を閉じた。走馬灯のように2日間の出来事が頭の中を駆け巡る。ヘル、俺はお前なんかに負けない。負けてたまるか。

「俺がお前なんかに負けるかーーっ!!!」

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