真実
15章
キルが二人⁉︎
僕は隣にいるキルと、扉の前にいるキルとを見比べる。全く同じだ。混乱して目眩がする。
「主人公!騙されちゃだめ。あいつはヘルよ。」
静かに隣にいるキルが話す。主人公と呼ばれることに多少の違和感を感じつつ、二人の違いを探す。
「違う!その人は嘘をついてる。本物はこっち。私の目を見て、真剣に聞いて。」
僕は扉の前にいるキルの目を見た、黒く澄んだ目をしている。今にも引き込まれそうだ。
「ダメ!見たらだめ!」
隣にいたキルが僕を押しのけた。
しまった、僕は何て馬鹿なんだ、目を見たらいけないんだった。
「今ので分かったでしょ、あいつはあなたを乗っ取ろうとしている。偽物なの。お願いだから私を信じて。」
僕の目を見て必死に話して来る。僕は再び二人を見比べた。あ!扉の前に立っているキルのお腹が少し赤く光ってる。間違いない、あいつがヘルだ。すると、ヘルは自分の正体がバレたことに気づいたらしい。ニヤリと笑って話し始めた。
「gamE5、久しぶりだね。また会えるなんて、嬉しいよ。」
gamE5って何だ?あいつはキルのことをgamE5って言ってるのか?
「黙りな。あんたはここに存在してちゃいけないんだよ。さっさと出ていけ。」
キルの口調がいつもより荒々しい。
「出て行くつもりはない。私は、私と一緒に死ぬの。追い出したいなら、力ずくで追い出してみな。あー、それにしても自分で姿を作り続けるのは本当に疲れるな〜。誰かの体があればな〜。」
次の瞬間、隣にいたキルが後方へ吹っ飛んだ。何が起きたのか全然わからない。気づいた時には僕の前にヘルが立っていた。剣を振ろうとした瞬間鳩尾を蹴られた。グフッ…、苦しい。体がくの字に曲がる。その隙にヘルは僕の頬を両手でガッシリと掴み、親指と人差し指で僕の目を無理やり開かせた。蹴られた時の衝撃で剣を落としてしまった僕は抵抗することができず、ヘルの目を2秒見てしまった。
僕は今どこにいるんだ?
意識はあるが体はない。斜め下には男の人が椅子に座っている。男性の前には黒色のデスクが置いてある。その人は縦横高さ8センチぐらいのキューブ型の機械を右手の上に乗せて、何やら話をしている。まるで、何かの一場面を斜め上から見下ろしてるみたいだ。男性はどうやらその四角い機械と会話してるようだ。
「このゲームをもっと、面白くするにはどうしたらいいだろう?あー、もう、全然思いつかないよ。」
「少し休憩をなさってはいかがですか?昨日から寝ていないため、頭が働かないのではないでしょうか?」
「そうだな、君の言う通り、ちょっと休憩するよ。それにしても、本当に君のアイデアは面白いよね。前作は僕が初めて作ったゲームだったけど、君のアイデアのおかげでそれなりに好評だったし。君とゲームを作るのは楽しいよ。」
「そう言っていただけて光栄です。」
機械の方は女性の声だ。丁寧な言葉遣いで、流暢に日本語を喋っている。
「よっしゃ、じゃあ再開するか。」
「もう再開するのですか?まだ3分しか経っていませんよ。」
「大丈夫だよ。君が思うほど僕は疲れてない。」
「わかりました。あの、一つゲームに関して提案があるのですが。」
「おっ!何なに?」
「ゲームの中に謎解きのような要素を入れてみたらどうでしょうか。」
「例えば?」
「主人公が出発する時に入手する地図を時計の中に隠しておきます。そして、鍵を使って時計を開けるのですが、鍵に数字が刻まれていて、その時刻に鍵を回さないと開けられない。というのはどうでしょう?」
「なるほど。確かにちょっと面白いかもしれない。簡単過ぎず、難し過ぎず、丁度いいレベルの謎解きだ。取り入れてみるよ。」
「ありがとうございます。」
ピーンポーン、ピーンポーン。
どこからかベルの音がする。「はい。」と言って男性が立ち上がった。キューブを丁寧に机の上に置くと「すぐ戻って来る。」と言って席を離れた。デスクの上には白く輝くキューブ型の機械だけが取り残された。




