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ゲームの中の物語  作者: 石川リョク
14/18

14章



「恐らく、ヘルが自分の好きなようにゲーム世界を操ってしまったのだと思う。本来なら、森を抜けたら次の村に行くはずだったけど、直結していたのはダークネス村だった。ここも、本当はお城へと続く道があるはずなんだけど、今はダークネス村の出口と繋がってしまっている。ヘルには自分の好きなように世界を作り変える力があるの。まぁ、今の私たちにとっては好都合だったけどね。」

「なるほど。そういうことだったのか。」

僕がうんうんと頷くと、少しの沈黙が流れた。こんな風に作り変えてあってよかったなと思った。お城がまだまだ遠かったら、僕たちは間に合わなくなるところだった。そういえば、何でこんなにもキルはこの世界、そしてヘルのことを知ってるんだろう。僕は何も知らなかったのに。今こんなこと聞いてはいけない気がしたが、沈黙が重くて、耐えきれなくなった僕は聞いてしまった。

「ねぇ、何でキルはそんなに詳しいの?」

僕が質問すると、キルは僕を一瞥して「ヘルに勝ったら教えてあげる。」と言って歩き出した。その時見えたキルの瞳は暗く、どこまでも深い黒色をしていた。


僕たちは歩きながら、崖で別れてからお互いの身に何が起きたのか語り合った。キルが空を飛ぶ能力を身につけていたことにはとても驚いた。僕を抱えてヘルのところまで飛んでくれれば早く着くし、疲れないじゃないか、と言ってみたが「体力を消費したくないから飛ばない、自分で歩きな。」と切り捨てられた。僕の身に起きたことも話した。目を失ったら影たちが見えたということを話したら「目だけ向こうと同じ目になったから奴らの姿が見えたんだよ。失った左手で盾が持てなくなったのは、盾がこちらのものだったからだ。」と話してくれた。このことは昨日キルから聞いたから知ってたけど、昨日も同じこと言ってたよね、とは言わなかった。多分キルも疲れているのだと思う。

中々ボスの部屋に辿り着かない。階段はまだまだ続いている。かれこれ800段ぐらいは登ったんじゃないだろうか。とてもお腹が空いていた僕は元々パンだったクッキーを食べながら歩いた。キルも食べるかと思って渡したが、いらないと断られてしまったので僕1人だけが食べている。これが最後の晩餐かもしれない、そんなことを考えながら、クッキーでパサパサになった口にお茶を流し込んだ。それから500段ほど登ると、縦10メートル横6メートルほどの大きな鉄製の扉が現れた。

「着いたよ。」

キルの声にいつもよりも重みを感じた。そういえば、ボスの詳しい倒し方は教えられてないな。確か、お城の上に空いている穴からヘルを追い出せばよかったはず。でも、どうやって…。

「ここが、ボスのところか。どうやって倒すんだっけ?」

キルが鋭い目つきで僕を見た。

「あなたは剣をヘルの体の真ん中にある赤色のキューブに刺して。それで、ヘルが怯んでる隙に私が穴まで連れて行って、放り出す。」

いたって単純な作戦だなと思った。僕よりキルが剣を使った方がいいのでは?とも思ったが、剣を渡してしまったら僕は何もすることができず、キルに全てを任せることになってしまう。それは大変申し訳ないし、情けないと思われるのも恥ずかしかったから言わなかった。

「分かった。何か気をつけることはある?」

「ぱっと見弱そうでも、油断しちゃダメ。あと、絶対2秒以上目を合わせないで。奴に乗っ取られてしまうから。絶対だよ。それ以外に気をつけることは何もない。」

「もしもだよ、もしも乗っ取られてしまったらどうすればいいの?」

「自分の意志で抜け出すしかない。自分を見失わないこと。抜けてやるって強い意志を持ってれば、きっと抜け出せるはず。」

「はず…。」

急に不安になってきた。突然、扉が重たい金属音をたてながら開いた。

いよいよだ。


僕とキルは用心しながら中に入った。扉が再び重たい音を立てながら閉まる。中は何もない。広間みたいな、大きな空間が広がっているだけだ。数十メートル先の天井には大きな穴が空いている。おそらく、あそこから追い出すのだろう。

「おやおや?gamE5と主人公じゃないか。よくここまで来たな。」

あれ、この声どこかで聞いたことがある気がする。どこから聞こえるんだろう。キルの方を見ると黙ったまま扉の方を見ていた。僕も慌てて扉の方を見る。するとそこには黒いマントを着た、見覚えのある姿が立っていた。


「キル…。」

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