ぶっちゃけ三人組と大反省会
――PPPテレビ
ナレーター〖ついにここが異世界と知ることなく、残機を一つ減らした望月トオル。医神アスクレピオスにチョコレートを捧げ、ビキニ戦士ブリュンヒルデの攻略法を獲得し蘇生した。一方そのころモニターリングしていた放送スタジオの面々は彼に対するツッコミが追い付かなくなっていた〗
岡崎「もうどこからツッコミをいれていいのかわかりませんな。彼に関しては」
柿本「えぇ、もう途中からツッコミを入れたら負けだと思っていました」
岡崎「しかし、ツッコミが追い付かないのは残念ながら彼の行動だけではないのですな。これが」
岡崎「この世界観を作り上げたシナリオライターや演出を担当した番組スタッフにも言いたいことが山ほどありますからな」
岡崎「まあどちらも一人なんですが。一体、この番組はどうなっているのですかね。酒井プロデューサー」
酒井「はいはい、弁解と挽回の機会を下さい。いろいろと事情があったのですよ」
☆
柿本「では、早速ですが、ワタクシから質問させて頂きます。なぜ異世界はあの大きさなのでしょうか」
酒井「うちのテレビ局が持っている土地がそれしかないからですね。本当に何もない荒地です。本当はもっと広大な異世界にしてあげたかったのだけれども」
柿本「なぜテレビ局なんかが荒地なんて持っているのでしょうか。しかも敷地は東京ドーム5個分という広大なものですし」
酒井「ああ、それは。柿本さん、子供の頃“覆面セイバー”って特撮ドラマを見ていましたか」
柿本「ええ、子供の頃は。当時の少年のあこがれでした」
岡崎「自分もセイバーカードが欲しくて、ポテトチップスばかり買って食べていましたな」
酒井「そんな覆面セイバーの制作秘話が今回の土地の話を絡まっているのです」
岡崎「!? どういう事ですか。プロデューサー」
柿本「詳しく教えてください。出来るだけ丁寧に」
酒井「おお、ちょっとびっくりするぐらい食いつきましたね。じゃあ、丁寧に話すと」
酒井「覆面セイバーの撮影はとにかく派手で、バイクや火薬なんかを大量に使うため、どこも土地を貸してくれなくなったそうです。かといって大人気特撮ドラマの撮影を中止するわけにも行かないわけで」
酒井「我らがテレビ局は大いに迷った挙句、荒地を購入したらしいです。しかも結構な大きさを、結構なお値段で。その後覆面セイバーは終了し、バブル崩壊の煽りを受け荒地の価格も安くなったそうです」
岡崎「あちゃー、大打撃ですな」
酒井「そんな売るに売れず放置されていた荒地を活用して作ったのが今回の異世界ですね」
柿本「そんな裏話があったのですね。そうして考えると東京ドーム5個分の敷地はかなり広いです」
岡崎「ただ、そこに異世界がまるごと入っていると考えるとかなり窮屈だと思いますぞ。設定に無理があったのではないかな。酒井プロデューサー」
酒井「そうですね、流石に無理がありました。異世界の地方都市を舞台にすれば良かったですね」
岡崎「モンスターを狩るゲームありましたね。あのゲームってクエストを受けるとフィールドに転送されますよね。そんな風に都市フィールドと土地フィールドのテクスチャを張り替えて対処すればいいのではないですかな」
酒井「それはいい。ナイスアイデアですね。次回作の時はそうしようかな」
柿本「そもそもVRコンタクトレンズをはめれば現実世界でもいいのでは」
酒井「それもありですね。様々なジャンルに応用できそうじゃないですか。魔法少女ものやゾンビパニックもの。更には学園異能バトルなんかもできそうです」
岡崎「この番組が扱うのは異世界転生ものだけでないのですかな?」
酒井「今回の反応を見てからですかね。ただおもしろそうならなんでもするがモットーですから。異世界転生以外のVRドッキリをするかもしれません」
岡崎「ん、今なんと」
柿本「話がそれてしまいましたね。次の質問に行くとしましょう」
☆
岡崎「次の質問は私から。異世界の設定についてのことなのだが。もう少し頑張れなかったのかな。それとも何か訳あっての設定なのかな。残念ながら私には異世界転生もののテンプレートを切り貼りしているようにしか見えないぞ」
酒井「設定の件ですか。ここに関しては弁解の余地はありません。本当に人気の作品のオマージュしているのですから。ただ、分かりやすい異世界じゃない意味がないというところもあるのですよ。テレビ的に」
岡崎「その発言はクリエイターとしていかがなものかと」
柿本「えっ、酒井さんがこの異世界の設定を作ったのですか」
酒井「ええ、まあ、一応。本当はすべて夢咲先生に任せてしまいたかったのですが」
酒井「ただ、勘違いして欲しくないのは他作品の設定をそのまま持ってきたわけではないという事ですかね」
酒井「この作品にはシナリオライターの夢咲先生がついていたのですが、彼女が忙しくなり過ぎてシナリオがあがらなかったのですよ」
酒井「彼女のシナリオが使えなくなったので代わりに僕が異世界転生ものの”お約束”を盛り込んだ素晴らしい設定を作成しました」
柿本「はあ、そうですか……」
岡崎「専門家として一つだけいわせてもらうと”異世界転生を舐めるんじゃねえよ”って事ですかな」
岡崎「異世界転生ものの醍醐味であるチート能力が不死ってどういう事ですか。そんなの誰も喜びませんよ。もっと”俺tueee”出来るチート能力にしなければ」
岡崎「それだけじゃありません。伝説の勇者や魔王の設定。それに伝説の剣”エクスカリバー”。それって異世界というよりむしろ伝統的なRPGの様な世界設定ですよね」
酒井「そうですね。僕はRPGゲームを楽しんで大人になった人間ですから。異世界転生とか言われても正直あまりピンと来ていないのですよ。誰か異世界転生シナリオを書いてくれる人がいるといいのですが」
岡崎「あっ、彼にやらせればいいじゃないですかな」
柿本「”彼”とは?」
酒井「ああ、そういうことですから。ハハハッ、いいアイデアですね。PPPテレビのシナリオライターに採用しましょう。たしかに彼が直接ストーリー書いたらとっても面白くなりそうですからね」
柿本「彼とは誰なんでしょうかね。ワタクシには皆目検討もつきませんが」
酒井「案外途中であなたも気づくとおもいますよ。あったことはありますし。あなたも納得がいくと思いますよ」
☆
酒井「さて、僕の弁解と挽回のターンが終わった事ですし、行くとしましょうか」
柿本「行くといいますと?」
岡崎「どこへかな?」
酒井「どこって、異世界に。せっかくだから僕達も異世界転生しましょうよ」
柿本「ええっ、そんな事できませんよ。無理があります。収録中の現場に飛び入り参加するなんて」
柿本「それに、ここから撮影スタジオまで電車でどのぐらいかかると思っているのですか」
岡崎「私はお芝居なぞできませんしな。台本なんて覚えられないですぞ」
酒井「ああ、そんな事でしたか。全ての問題は解決済みです」
酒井「まずは飛び入り参加の件に関しては、前々から現場のスタッフには伝えていました。”もし撮影が長引いたら私達も参加する”とね」
岡崎「なぜ我々には伝えていなかったのですかな」
酒井「マネージャーさんには伝えてありましたよ。もちろん、口止めは依頼しましたが」
酒井「次に移動手段の事ですが、陸から現場に向かったら間に合いませんので、空から行きましょう」
柿本「それって、まさか」
酒井「そのまさか、ヘリコプターを使います」
酒井「最後にみなさんのお芝居の事ですが、問題ありません。何故なら望月くんにツッコミをするだけですから。はい、これがお二人に演じてもらう役の設定です。読んでおいてくださいね。望月くんは設定のあらはすぐに見抜いて来ますから」
岡崎「台本はどこにあるのですかな。台本無しじゃ演技も出来ないですぞ」
酒井「あれっ、言っていませんでしたっけ。この世界に筋書きなどありません。設定はありますがあとは個々のアドリブ力によって成り立っているのですよ
柿本「エエエェェェ」
岡崎「”じゃんじゃじゃ~ん、いま明かされる衝撃の真実”ですぞ」
酒井「序盤は夢咲先生から貰った分がありましたが、今はもう完全に現場の判断と色彩の皆さんの演技力ですねえ。今はいわゆる、自由度が売りの箱庭RPG状態なんですよ。だから、望月くんがいきなり”ハーレム王に俺はなる”とか言い出したらその通りになりますね。ハハハッ」
柿本「”ハハハッ”じゃないでしょう。どうしてこれで人を騙し通せると思っていたのですか」
酒井「ハハハッ、ですねえ。僕が思うに望月くんはもしかするとここが異世界でない事に気づいていて逆ドッキリを仕掛けようとしているのかもしれませんね」
岡崎「あるいは、気づいているけれど、見て見ぬふりをしているのかもしれませんな」
酒井「まあ、何にせよ彼に会って直接ツッコミを入れないと気がすまないでしょう。実際私もそうですし」
柿本「まあ、それは……」
岡崎「そうですな」
酒井「おおっと、もうこんな時間じゃありませんか。ではさっそく、行きましょうか。異世界に」
柿本「はい」
岡崎「おぉー」
ナレーター〘ついに業を煮やし、ドラマスタジオに乗り込んでいく3人組。彼らは異世界ではどんな活躍を見せてくれるのか。そして、望月トオルはブリュンヒルデを突破する事が出来るのだろうか。気になる続きは〙
ナレーター〘CMのあとに〙
――CM
覆面「なろう作家の諸君。ごきげんよう。私はテロリストだ」
覆面「諸君らは手を上げ、速やかに」
覆面「掲載小説数15万作品突破。書籍化、アニメ化作品も多数掲載」
覆面「プロの編集者の添削指導も受けられる!」
覆面「全く新しい小説投稿サイト」
覆面「”テロリスト”に投稿せよ」
覆面「君の速やかな投稿を心待ちにしているぞ」