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それゆけぶっちゃけ三人組

――PPPテレビ 放送スタジオ

 

ナレーター〘ちょっとした手違いから異世界へと転生してしまった望月トオル。悲しき巨人、サイクロプスを撃破し、苦労人の町娘にはキスしてもらって有頂天。しかし放送スタジオの反応は違ったようで……〙


岡崎「本当に彼は期待を裏切らないですねぇ。気づきそうで、全く気づかない」

 

柿本「ええ、まさにそんな感じでしたね。最初の方の目の違和感のときとかはすごくドキドキしたんですけど……。あの親子たちをやり過ごせたので、あとは案外安心して見ていられました」

 

岡崎「私、アレ見ながら何度もツッコミそうになりましたからねぇ。そこ、気づかないんかいってね」

 

岡崎「けどね柿本さん、番組側の演出にもツッコみたいところだらけなんですよ」

 

柿本「ええ、それはありましたね。例の親子の台本や設定、特にサイクロプスに関しては全般的に……。挙げてみるとキリが無いですよね」

 

柿本「どうしてこうなったのでしょうか? せっかくなのでプロデューサーに直接聞いてみたいと思います。プロデューサーの酒井さん」

 

酒井「はーい、”エセカイ転生TV”プロデューサーの酒井でーす。よろしくお願いします」

 

柿本「さっそくですが、酒井さん。まずは例の親子についてなんですけど、なぜあのような昼ドラのような展開にされたのでしょうか?」

 

酒井「あ~! あの盗賊のヒロシと町娘のメグミのことですか。それは順序建ててしっかりと説明しなくちゃいけませんよね」

 

酒井「あそこの部分のシナリオは夢咲先生に書いて貰う予定でした。恋愛シーンを華やかにするためにですね」

 

岡崎「あ~、確か夢咲先生ってPPPテレビの新ドラマのシナリオライターの人ですね。確かこの番組のあとにやる……」

 

柿本「”ジャンヌダルクも恋したい”でしたっけ」

 

酒井「そうそう、それなんですよ。問題点は」

 

柿本「問題点というと?」

 

酒井「夢咲先生がドラマ決定に伴って忙しくなりすぎて、この番組用のシナリオを書き忘れちゃって……」

 

柿本「いまさらなんですけど…… そんな裏話をここで話して大丈夫ですか? 酒井プロデューサー」

 

酒井「いいですよ。大丈夫だから喋っているんです。それで、そうはいってもあのシーンを抜かすわけにはいかない訳ですよ。なんとかして望月さんに町娘と元盗賊という仲間をゲットしないと行けないですから」

 

酒井「だから、夢咲先生の新作ドラマ”ジャンヌダルクも恋したい”の一部分を貰ってきてなんとかしました」

 

柿本「全くもってなんとかなってなかったと思いますけどね。だって異世界なのに養育費とか言ってましたし」

 

岡崎「しかもさり気なく”ジャンヌダルクも恋したい”のネタバレしてますな。あと人物名が同じですぞ」

 

酒井「いやいや、みなさんが見たのはこの番組のシーンですよね。アレ、ものすごくアレンジされてますよ」

 

酒井「”ジャンヌダルクも恋したい”本編だと……」

 

柿本「この番組のあとにチャンネルは変えないでお楽しみくださいね」

 

酒井「話がそれてしまいましたね。結局のところ、あそこで望月さんにバレずに済んだのはひとえに”劇団色彩”さんの演技力と機転の効いたアドリブ力のおかげですよ」

 

岡崎「やはり、”劇団色彩”の方でしたか。道理であのアドリブ力があるわけですねぇ。両方ともですか?」

 

酒井「はい、そうです。ただあんなに堂々と演技ができてもまだまだ研修生らしいですけど……」

 

岡崎「サイクロプス撃破後に意気消沈した望月くんをヒロシが励ましていましたけれどあれってアドリブですよな」

 

酒井「あんなのは台本にもありませんもの。もっと言えばメグミちゃんのキス、あれアドリブですから。そもそもあのシーンはサイクロプスを撃破し、喜ぶ場面なわけですから」

 

岡崎「このキスを好意スキとみるか、芝居シゴトとみるか……」

 

柿本「下世話ですね、岡崎さん」

 

岡崎「ちなみにサイクロプスの娘のお守りの話は?」

 

酒井「夢咲先生がなんとか間に合った書き下ろしシナリオ部分ですけど……」

 

岡崎「そもそも頼む人を間違えているのではないですかな?」

 

岡崎「夢咲先生は恋愛小説っていうか、どちらかと言うと、奥さま方が好きな昼ドラの人ですぞ」


 

柿本「次にサイクロプスについてなんですけど。いろいろとすごかったですね。特に普通に見ると……」

 

酒井「ただの積まれたダンボールですからね。しかも操作はこちらから一切できないというチープ巨人なんですよ」

 

柿本「ではどうやって歩かせていたんですか?」

 

酒井「そうはもう単純で、ミニ四駆を各足4台づつ配置しただけです。速度の一番遅いモータを使ってそれっぽく見せていたのです」

 

岡崎「そんなチープなんですか!?よくバレないですな…… ――というか、気づかないほうが悪い気がしてきましたぞ」

 

岡崎「じゃあ緑の体液はどうなっているのですかな?」

 

酒井「普通にインクですね。ただ、普通より落ちやすいインクにしています。勇者は基本的にゲーム開始時と同じ服を着ているので……。弁償とか大変ですし……」

 

岡崎「そこよりももっと気にすべきところが多いと思うのですぞ……。お金周りはどうなっているのやら」

 

酒井「VR関係機器は依然として高価ですね。だから資金がそこに消えていきます」

 

岡崎「けれどVRコンタクトレンズって2万5000円ぐらいでしたよな。企業として買うならばそんなには高く無いと思いますぞ。僕たちが子供のこと遊んだゲーム機ぐらいの価格ですしな」

 

酒井「VRの映像をカメラで撮る機械とそれを編集したりするソフトウェア、あとTVでVR映像を放映するときにかかるクレジット料。あと、番組で使うVRテクスチャを作るスタッフの人件費。どれも高価なのです」

 

酒井「しかもVRコンタクトレンズって、実は使い捨てのコンタクトレンズなんですよね。だからゲーム機と違って、1プレイ2万5000円なんですよ。だから革新的な技術なのに一般になかなか浸透しないとか」

 

岡崎「やっぱり人件費が一番かかりますな。VRコンタクトレンズの件は、使い捨てじゃあ無くなったらこの番組も無くなりますしなぁ」

 

酒井「!? 縁起でもないこと言わないでくださいよ。岡崎さん。今回が一回目なんですから」


 

柿本「えぇ~、話す話題は尽きませんが、ここでゲストの方に来て頂いています。今回の転生できっかけを作り出しました神様ことゼウスを本物のように演じた元”劇団色彩”団長の大神さんです。よろしくお願いします」

 

大神「ほほほ~よろしゅうな」

 

一同「よろしくお願いします」

 

柿本「大神さんは以前は”劇団色彩”の団長をなさっていたようですが、今は何をしていらっしゃるのでしょうか?」

 

大神「ほほほ~、今かのぅ?今はな新人育成のトレーナーをやっておるんじゃ」

 

岡崎「新人育成といいますと、メグミ役の子や、ヒロシ役の子の面倒も見られているのでしょうな?」

 

大神「ほほほ~、その通りじゃ。しかし、メグミ役の彼女は感情表現に難ありと見ていたんじゃが……。あのキスシーンを見ると見込みありじゃな」

 

岡崎「ちなみに彼女のキスは演技シゴトでしたか? それとも真剣ガチでしたか?」

 

柿本「岡崎先生、ちょっと節度わすれていません?」

 

大神「ほほほ~、それはこれからの旅を経てのお楽しみじゃな」

 

柿本「番組的に美味くまとまりましたね。彼らの旅は、恋路は、そしていつになったら望月トオルはここが異世界で無いと気が付けるのか。気になる望月くんの様子は……」

 

柿本「チャンネルはそのまま」

 

柿本「CMのあとで」

――CM


伯爵「望め、望むならば貴様に永遠の命を与えよう」

後輩「嫌だ。確かに私の寿命はあと半年しかない。けれど、だからこそ私を”後輩”と呼んでくれる先輩と共に生きていたいんだ」

伯爵「分からぬ、分からぬ、分からぬ。生命以上に大切なものなんてあるはずがないのに」

先輩「それは違うよ、伯爵さん。私たちは二人で一人。私は自分の命以上に後輩を愛してる」

後輩「先輩…!」


 ――劇団色彩オリジナル公演「色彩」

 追加公演決定! 良い席はお早めに

 ご予約はPPPテレビまで


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