表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/38

三賢者は番組終了の夢を見るか?

ナレーター〘ついに魔王軍に寝返った望月トオル ――いや無限混沌ヨルムンガンドッ。このままこの異世界、ひいてはこの番組が終わってしまう。しかし、夏目メグが一発逆転の一手を見出した。果たしてこの後どうなってしまうのかッ〙

ナレーター〘ここで時間軸を少し巻き戻し酒井率いる三賢者に視点を移して、舞台裏を覗くとしよう。ミニモニターにチェンジ〙


 ――魔王城前 特設スタジオ


岡崎「ふうっ、ようやくたどり着きましたな。やはり異世界無双チートはおっさんにはきついですな」


酒井「何言ってんですか? ここまでたったの十分でしたよ。それに近頃の転生者の中にはおっさんだっているじゃないですかね」


岡崎「おっさん転生者は肉体が青年になっているですぞ。ただのフツーのおっさんにはきついですな」


柿本「しかし、魔王城は意外と立派ですね。セットにはさぞお金がかかったことでしょう」


酒井「実はその魔王城は実在するお城の3Ⅾデータを少しいじっただけなんですよ」


岡崎「おお、だから既視感があったわけですな。……まあどこの城かまでは分かりませぬがな」


酒井「モデルとなったのはドイツにあるノイシュヴァンシュタイン城ですね」


岡崎「ああっ、思い出した! それって確か『冬の城』の元ネタじゃないですかッ」


酒井「大正解です。岡崎さん。まあこれぐらいは分かるかなと思ってましたが」


柿本「ちなみにシンデレラ城のモデルでもあるらしいですね。……この発想は出てこなかったんですかね?」


岡崎「……おっさん共は夢の国から出て汗水垂らして働いているんですぞ。夢も希望もないこの世界で」


酒井「ハハッ(甲高い声)」


柿本「それよりさっきから気になっていたのですが、この粘着質な物体って何ですか? 間違えて踏んじゃって気持ち悪いのですが……」


酒井「ああ、これは第一の四天王『ショゴス』の亡骸でしょうね。恐らくは」


柿本「これが四天王ですか? どう見てもスライムにしか見えないのですが……」


酒井「ええ。その通りです。スタッフの皆と夜なべして作ったのです。なかなかそれっぽく仕上がりましたよ」


柿本「確かに意外と完成度は高いですね。しかし懐かしいです。ワタクシ小学生の時、自由研究で作りましたよ。そのスライム」


酒井「まあ、最近は『子供が飲み込むと大変』って言ってほとんど作られなくなったみたいですが……」


柿本「時代の流れとは言え、少し寂しいですね。思い出が禁止されてしまうのって」


酒井「なので薬局にホウ素を買いに行ったら、奇妙な顔されましたよ」


岡崎「……これだけの大きさのスライムを作る為のホウ素を一度に買うからですぞ」


柿本「まあ、人のひざ下サイズのスライムを作ろうとしてたなんて夢にも思わないだろうなぁ」


柿本「しかし、ここに四天王の亡骸があるという事は望月君はすで魔王城の中みたいですね」


酒井「……まあそういう事になるのでしょうが。けれどなんで城の中で待機しているはずのショゴスがこんなところで死んじゃっているのでしょうか」


巣羅「テケテケリ。それは当事者である私から説明するであります」


酒井「おお、丁度良いタイミングでスライム役の巣羅さんが来てくれました」


柿本「えっ、なんでスライム役に役者さんが必要なのですか? フツーにダンボールとスライムじゃなかったのですか?」


岡崎「この企画署によると第一の四天王『ショゴス』は第二形態として人間の姿を取るという設定になっているみたいですぞ」


柿本「なるほど。巣羅さんは第二形態を演じていたのですね」


巣羅「そうでありますな。今はもうメイクを落としてしまいましたが先ほどまではスライムの様な半透明の身体になっていましたよ」


岡崎「ちなみに企画書によると【元々何処かの星の軍曹だった経歴を持つため、軍人風口調で】と書いてありますぞ」


巣羅「……正直謎過ぎる役柄で一度は断ろうかと思ったのですが、実際に演じてみたら意外と面白い役回りでした。貴重な経験をありがとうございました。酒井プロデューサーッ」


酒井「いえいえ、なんのこれしき。夏目のお嬢様と違って素直でまじめなスラちゃんは好みですよ。これからも頑張ってくださいね」


巣羅「はい! 今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますッ」


岡崎「仕事のお話はそのぐらいにしておくとして。実際なぜスラ殿がここで勇者に打ち倒されたのですかな?」


巣羅「ええっとそれは。夏目先輩のフォローに入ろうとしたからですかね」


酒井「夏目お嬢様がミスをしたのですか。珍しい。具体的にはどのようなミスを?」


巣羅「確か、英雄ヘラクレスの説明が間違っていると勇者さんに突っ込まれていました」


酒井「ああ、確かにそこら辺を追及されるともろそうですね、夏目お嬢様は」


岡崎「……地味にねちっこいですな。あの勇者。設定に矛盾が生じている事なんてよくある事ですぞ。その場のノリを楽しんでほしいですな」


柿本「それで巣羅さんはどうしたのですか?」


巣羅「このままではまずいと思い、魔王城を飛び出して勇者さんの前に姿を表し、宣戦布告しました。そして夏目先輩を後ろの可動式触手で拘束し、勇者さんから引き離しました」


酒井「夏目お嬢様がそのまま突っ込まれ続けたらここが異世界でない事が彼にばれてしまっていたことでしょう。ナイスプレーですよ。スラちゃん」


巣羅「ありがとうございます。こんな風にアドリブで動くのは初めての事で心配でした」


岡崎「それで勇者と戦い、敗北したという訳ですな。引き立て役の仕事としては最高ですな」


巣羅「……いえ、違うんです。私が一つ誤算をしていて。アリスちゃんにやられてしまいました」


柿本「えっと、アリスちゃんってメグミさんの役の人の事ですよね? 何故町娘の彼女が四天王と戦って勝っているのでしょうか」


酒井「あっ、それってまさかとは思うけれど、夏目お嬢様を捕まえたからじゃないですかね」


巣羅「その通りなんです。アリスちゃんは夏目先輩の事になると我を忘れちゃう節があって……」


酒井「なんとなくですが想像できますね。【妹様】ならばやりかねない」


酒井「……まあ必ずしも勇者が四天王と戦って勝つ必要はありませんしね」


柿本「えっ、マジですか? じゃあ魔王だけ暗殺しても……」


酒井「そしたらもうエンディングですね」


岡崎「ならば勇者がいきなり『約束された勝利の剣』とか言ってエクスカリバーをぶっ放し、魔王城を吹き飛ばしてもエンディングですかな?」


酒井「そんな大掛かりなモーションは用意してませんが、もしそんな事をしたらエンドですね。ハハハッ」


柿本「笑い事じゃないのですが……」


――2分後

酒井「さて、先に進むとしますか。望月君も麗しいエルフである私を待っている事でしょうから」


岡崎「……思い出したかのように女性口調にならないでひ欲しいのですぞ。うん? 魔王城から誰かが出てきましたぞ」


黒子「酒井は~ん。ここにいらっしゃったか。現場が大変な事になっとるんや。はよ来てくれや」


岡崎「わっ、わにの化け物が喋ってますぞ」


柿本「だってここ異世界ですよ。岡崎さん。わにだって喋りますよ」


酒井「……まあ、彼は番組ディレクターの黒子さんなんですけどね。どうしたの。黒子さん」


黒子「実は望月君が魔王軍に裏切ってもうた。しかも勇者を辞めて「無限混沌ヨルムンガンド」と名乗っとうし……。どないしよ、酒井はん」


酒井「……バタンキュー」


黒子「ああ、酒井殿がショックで倒れてしもた。最悪やッ」


岡崎「……ホントにバタンキューって言って倒れる人初めて見ましたぞ」


柿本「とりあえず酒井さんをおぶって現場まで向かいましょうか」


ナレーター〘自身のキャパシティーを超え、バタンキューしてしまった酒井プロデューサー。彼が再び目を覚ました時までこの番組が続いているのか怪しくなってきたッ。そして当事者である望月トオルはどうなってしまうのか。波乱の展開に目が離せないヱ世界転生TV。気になる続きは〙


ナレーター〘CMの後で〙


――CM

ナレーター〘ウーサー観光プロデュース、某運命ゲームの聖地巡礼の旅!〙


ナレーター〘物語の舞台となった神戸市からあのお城のモデルであるノイシュヴァンシュタイン城、はたまたロンドンの時計塔まで完全網羅!〙


ナレーター〘世界を半周し、聖地でガチャを引こうッ。SSRが出やすくなるかも!?(個人の感想です)〙


ナレーター〘今すぐウーサー観光の公式サイトをチェックだ〙

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング 『ヱ世界転生TV』の視聴率向上のため、是非クリックを!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ