ゆうしゃもちずきは ぼうけんのしょと ともに
ナレーター〘四天王が一人『ショゴス』を撃破した勇者一行。しかし次の四天王は恐ろしいまでに強力な力を持っている? 果たしてその魔物の正体とは……。 そして望月トオルは、四天王を倒し、エンディングまでたどり着くことはできるのか?〙
ナレーター〘真の勇者に視点を移すとしよう! ミニモニターにチェンジ!〙
――PPPテレビ ドラマスタジオ――
俺はメグミ達の後を追って魔王城に突入した。
魔王城内は暗くどんよりした空気に血の匂いが混じる気味の悪いもので、灯りはかびた壁に掛けられたロウソクのみだ。
ホントいかにも『魔王が住んでいます』と言わんばかりの場内だった。
「フッ、しかしあまり気持ちのいい場所ではないな」
「わぁはっは。望月よ。もしかしてビビっているのか?」
ヒロシは俺の背中をバンバンと叩きながら、大笑いする。
だって仕方ないじゃないか。
こんな薄気味悪いなんて聞いていなかったのだもの。
「フッ、別にビ、ビビッて無いぞ。ヒロシよ」
俺は恐怖心を押せえて、ヒロシに強がってみせる。
《はぁ~、仕方ないですね。ビビり勇者『ああああ』よ。ここのアイコンをタッチしてみて下さい》
『ぼうけんのしょ』は抑揚のない機械音声で、俺を小バカにしてくる。
しかしきちんと蛍光灯が描かれたアイコンを表示してくれる。
その蛍光灯のアイコンには『ライト』と書かれており、タップすると、背面からまばゆい光が放たれる。
おお、これで怖くないぞ。
そうしてあたりが照らされると、辺りに分かれ道は無く、人間の骨と魔物の亡骸が散乱していたことが分かった。
クソッ、なんだって照らされればいいって訳じゃないんだな。
「あ、ありがとうな『ぼうけんのしょ』よ。これでしっかりと先を見て、進めるぞ」
げんなりとしながらも、一応助けてくれた『ぼうけんのしょ』にお礼を告げる。
《いえいえ、お礼は魔王討伐で、返していただければいいです》
『ぼうけんのしょ』は、これまた抑揚のない声で無茶ぶりを吹っ掛ける。
ただ何となく悪い気はしない。不思議な事だがこの『ぼうけんのしょ』を持っているとなんというかしっくり来るのだ。
「フッ、『ぼうけんのしょ』よ。お前は一体どのような魔道具なんだ?」
俺はふと自身から湧き出た疑問をぶつけることにした。
前に賢者柿本が一応説明はしてくれたが、こういうのは、本人?に聞くのが一番だ。
《『ぼうけんのしょ』は、全知全能の神ことゼウスに祝福された『聖遺物』です。魔力を注ぐと、それを電気に変換して稼働します。なので電気系の能力ならば大概使えます。例えば電話とかライトとか写真とか》
『ぼうけんのしょ』は自身の存在について、淡々と説明してくれた。
ふむふむ、分かったぞ。こりゃ強い。
この異世界で、コレを全力で利用すれば、『王国を築いたり、王室でハーレムしたり、火星マフィアを使役』出来たりするのだろう。
――まあ、そんなことはするつもりはサラサラ無いのだが。
そんなくだらない事を考えながら、城内を進んでいると広い部屋にたどり着いた。
恐らくここは魔王軍四天王が一人、『ショゴス』に与えられた部屋だったのだろう。
部屋に置かれた家具は粘着質の液体がへばりついていたのだ。
うわぁ、触りたくないな。
そんなべたついた部屋にて、メグミ達が俺を待っていた。
「あらぁ~、シグルド。やっと追いついてきたのね」
「うふふっ、非力な女の子たちをこんなところにほっておいて、随分と遅かったですね」
メグミとブリュンヒルデは俺たちの到着が遅かったことをとがめる。
それは魔王城内が暗くてちょっとこわ ――いや、そうじゃなくて。
「フッ、すまない。ちょいと道に迷ってしまったのだ」
俺はとっさにあからさまな嘘をつく。
そりゃ、女の子に対して、城が暗くてビビっていたなんて口が裂けても言えないじゃないか。
それよりも二人は自分の事を『非力な女の子』と思っているのか……。
二人ともそりゃないだろ。ここまでの道中に、結構な数の魔物の亡骸があったぞ。
おかげさまで敵に遭遇する事無くここまで来れたけれど。
「ふぅん。私たちがここまで来た時には、一本道で来れたけれどぉ? 本当にビビりね。シグルドは」
彼女はそう言って俺を煽る。クソッ、事実だから何にも言い返せない。
「……でも私、シグルドのそういうところ、嫌いなわけじゃないんだからね///」
ブリュンヒルデはフォローになってないフォローをしてくれた。
しかし、やはり気恥ずかしかったのだろうか? その声は小さかったし、その後、顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。
「うふふっ、良かったですね。糞虫――じゃなくて勇者様」
メグミは一瞬恐ろしい言葉を投げかけてきた上で祝福してきた。
一つ分かったのは、彼女の性格が豹変するのは『ブリュンヒルデ』が関わった時であることだ。
何故ブリュンヒルデと関わった時に、こうなるのかは分からないが、ともかく気をつけた方がいいのかも知れない。
「わぁはっは。さて、全員そろったところで次の部屋に進むとするか」
ヒロシはそう言って、次の部屋に向かうように言う。
助かったぜ。ヒロシ。たまには役に立つんだな。
「ひゃひゃひゃ、次の部屋に進む必要はないのじゃ。何故なら、おぬしら勇者一行は、ここで死に絶えるのじゃからな」
すると、次の部屋に続くであろう大きく、気味悪い扉が開け放たれ、中から魔物が出てきた様だ。
「ナッ、お前はいったい誰だ! 名を名乗れ、魔族の者よ」
俺は即座に聖剣エクスカリバーを鞘から引き抜き、その魔物の方に振り向く。
振り向いた先にいたのは――
紅白の巫女装束に身を包んだ艶やかな黒髪が特徴的な十代前半の少女。
しかし、普通と違うのは、頭部にひょっこりと可愛らしくケモミミと、巫女装束からはみ出した九本の尻尾の存在だ。
そう彼女は、狐っ娘の巫女だったのだ。
「ひゃひゃひゃ、お主が勇者望月か。余はヒミコ。邪馬台国の元女帝にして、鉄血にして熱血にして冷血の九尾じゃ。今は魔王軍四天王が一人じゃがな」
どう見ても十代前半のコスプレ巫女っ子にしか見えない容姿に対して、中身は日本最古のクイーンにして九尾狐だそうだ。
クソッ、ロリババアか。貴様。さ、最高かよぉォォ。
「なんじゃそりゃァァァ、俺を殺す属性てんこ盛りかよぉぉぉ。神様、仏様、魔王様。本当にありがとうございますゥゥゥ」
俺は感情を爆発させ、思わずジャンピング土下座をしてしまっていた。
ハッ、いつのまにかこんな事を。まさかこの九尾狐の能力なのか!
俺はこのケモミミっ娘を攻略――いや、撃破できるのか。オラ、わくわくしてきたぞ!
やっぱりしてよかったぜ。俺の異世界転生ッ!
ナレーター〘ついに姿を表した四天王が一人にして、最強の九尾狐である『ヒミコ』。果たしてこの魔物の真の正体とは? そして望月トオルは、四天王を倒し、エンディングまでたどり着くことはできるのか? 気になる続きは……〙
ナレーター〘CMの後に〙
――CM
MC「週間『謎の光』創刊!」
MC「数々の深夜アニメに登場するモザイク代わりの謎の光」
MC「そのすべてをここに」
MC「毎号ついてくるDVDはサービスシーンオンリー!」
MC「さらに付属のマガジンでじっくりと鑑賞!」
MC「創刊号はみんな大好き『いざこざ! 漆黒編』」
MC「398円! 書店にて」
ME@GOSTINI




