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勇者望月と導かれし者たち

ナレーター〘なんということでしょう。いきなり現れた”ケルト式青タイツ”の青年は”盗賊のヒロシ”こと大野ヒロシだったのだ。”劇団色彩”キャストとの関係性はいかに?まだまだ続く舞台裏での”ぶっちゃけ裏話”! 早速楽屋を覗いてみることに――〙


酒  井 「はい、カットッ」

酒  井 「ナレーターさん、カット。その回はオンエアしない事になりました」

ナレーター〘え、マジですか? なんでまたそんな急に?〙

酒  井 「”尺”の都合ですよ。尺の。まあ、とにかく次の望月君の復活後から始めますので、よろしくお願いしますね」

ナレーター〘あっ…… 行っちゃった…… 自由気ままだな。あの人も〙

ナレーター〘何はともあれ。続けましょうか〙


ナレーター〘アスクレピオス様から有り難い天啓を受け取った望月トオル。早速その天啓を破りかける!? 望月の周りに集まる”みちびかれしものたち”とは一体!? そしてついに明らかになる”魔王”の正体とは!? ここから先はノンストップでお届けしよう! 君の”目”で確かめてくれ! 【僕の異世界転生】〙


ナレーター〘真の勇者に視点を移すとしよう! ミニモニターにチェンジ!〙


 ――PPPテレビ ドラマスタジオ


「はっ、ここはどこだ」


 目を覚ますとそこには澄んだ青空と雲が広がっていた。

 顔を横に傾けると見知った顔が。

 気の強い戦乙女ことブリュンヒルデ、金髪が麗しいエルフこと酒井さま。

 ――ここまでは予想できたのだが、そもそもなぜここにいるかわからない人もいた。


「うふふ、やっと目を覚ましましたか?望月さん」

「わぁはっは、男は元気が一番! 早く起き上がったらどうか?」


 健気な町娘と元盗賊のコックさん。彼ら親子はミリノの町で離れ離れになった俺のパーティーメンバーのメグミとヒロシだった。


「うわぁ、なんでここにいるんだ!? 二人とも”魔女裁判”にかけられたはずじゃ……」


 俺は思わず飛び起きて、疑問を直接ぶつける。

 てっきりジェームスとかいうやつに処刑されていると思ったのだ。


「わぁはっは、望月よ。あまり縁起でもない事を言うな。なんとかなって今ここにいるのだから」

「うふふ、実はそこにいる”三賢者さま”と素敵で可憐な戦乙女こと”ブリュンヒルデお姉さま”が私たちを助けてくれたのよ」


 二人はその時の様子を詳しく説明してくれた。

 へー、そんな事があったのか……。口が裂けても今回の死因を二人には話せないな。


「うふふ、ちなみにその最中死んでいて役に立たなかった勇者様もいたみたいですけれど……」

「わぁはっは、しかもその死因のお粗末さと言ったら……。流石に笑えないぞ」


 残念ながら全て筒抜けのようだ。これは流石に、マーリンのごとき高い知性と精神力を持つ高校生の俺とはいえキツイものがある。

 まあ、こんなのは我が妹に”兄のエロ本隠し場所リスト”を自由研究で提出された時に比べたらなんてことは無いが。


「……ちなみにその情報は誰から聞いたのか?」


 二人は指をそろえてブリュンヒルデを指した。


「あらぁ~、お帰りなさい。”エルフの女にすーぐ食いつくクズ男”のシグルド」


 ヤバい。

 表面上は天使と見間違えるほど美しい笑みを浮かべているが、目にハイライトがない。

 これはギャルゲでいうところのヤン堕ち化のパターンだ。

 ようやくアスクレピオス様の”天啓”の意味が分かったぜ。とにかくまずは釈明しなければ……。


「すまんな、ブリュンヒルデよ。あれは気の迷いだ許してくれ」


 俺は美青年を全力を賭して演じた。人間の本気とは素晴らしいものである。なんたって白い歯を光らせることもできるのだから。


「ま、まあ、アナタがそういうなら許してあげない事も無いのだからね///」


 よかった。彼女が”チョロイン”で助かったぜ。しかし、”ハーレム系主人公もの”にはこんなキャラクターはあまり見られない。

 ふつー、”主人公好きスキ”で一夫多妻も難なく受け入れるものなのだが……。”やはり俺の異世界ラブコメは間違っている”のだろうか? 略して俺ガイ――


「やっと蘇生しましたか。勇者望月。これが”ぼうけんのしょ”です。早速受け取るのです」


 後ろから声がする。さらにいえば背中に熱量と質量をもった”何か”が当たっている。


「いやー、賢者酒井。何やら胸が当たっているのだが……」

「いやですね。勇者望月よ。”わざと”当てているのです」


 先ほどまでの俺ならば大歓喜していたところであろう。……しかし、今はそうもいかない。

 俺の横には”殺意”という熱量を持った戦乙女がいるのさ!


「ふっ、ブリュンヒルデよ。これは違うんだ」

「あらぁ~、問答無用よ。シグルド」


 俺の頬にビンタが飛んできた。


「殴ったね。親父にも打たれたことないのに」


 その破壊力は凄まじく頬には見事なモミジが浮かぶ。

 ……俺はラブコメの主人公の大変さが骨身に伝わり理解する。ああ、彼らも大変だったのだな。


「全く…… 七人も集まると騒がしくてたまらないですぞ」

「ええ、ホントですね。ワタクシ共なんてまるで空気ですもの」


 賢者の二人、柿本と岡崎は微笑みながら、ぼこぼこにされていく俺を見つめていた。

 ……いや、止めてくれよ。マジで。このままだと本当に死んでしまうぞ。

 この異世界で三度目の死因がこれではアスクレピオス様に顔向けできない。絶対笑ってくるぞ。アイツ。


「誰か、たすけてくれぇ~」


 俺は天に向かって絶叫する。


「ほほほ~、なんだか大変なことになっているようじゃが、ともかく大儀であったぞ。望月トオル」


 突如天から聞き覚えのある声が降り注ぐ。声の主はすぐに特定できた。”全知全能の神”ゼウスだ。

 ……しかし、声しか聞こえないのだが。


「ぜっ、ゼウス様? どこにいらっしゃるのですか。お姿が見受けられないのですが」


 いや、やはり神のお姿は地上からでは観測できないほど神聖で厳かなものなのか。


「うふふ、ここに勇者含め”導かれし七人”がそろいましたわ。ゼウス様」


 町娘のメグミはそう答える。どうやらゼウス様は見えている様だ。……あれ、おかしいな。


「あらぁ~、ゼウス。ついに”クロノス”を倒すのねぇ。ワクワクで身体が疼くわぁ」


 先刻まで俺をぼこぼこにしていたブリュンヒルデもそう神に告げる。

 やはり見えているようだ。


「ついに総攻撃ですか。賢者酒井、この身を持ってその”勤め”果たさせていただきます」

「老いぼれにできることはなんだってしますぞ。ゼウス様」

「まあ、ワタクシにお任せくだされば魔王なぞイチコロです」


 三賢者たちもそう続く。

 あれっ、おかしいな。もしかして見えてないのって、俺だけ?

 いや、まだコックのヒロシがいた。流石にこいつも見えないだろう。


「わぁはっは、クロノスに”我々は大切なものを奪っていきました。貴方のこころです”と言ってやりますぜ」


 み、見えてたのか……。マジか。俺勇者なのに神を視認できないのか……。

 

「ほほほ~、ついに”導かれし者たち”が揃ったか。これで我が父にしてこの世界の覇者”魔王クロノス”に対抗できるわい」


 ゼウス様が高らかにそうおっしゃる。えっ、”魔王クロノス”って誰? 俺が死んでいる間に話が進んでいるのだろうか。勇者を置き去りにして話を進めないで欲しいのだが……。


「くくくっ、せんせー。話が理解できていないし、神様が見えていない”勇者様”がいるようです」


 メイド服に身を包んだ女は、神にそう言い放った。……誰だ、こいつ。めっちゃタイプなんだが。後でメアド交換しておこう。そうしよう。


「ほほほ~、そうか。メイド服の女よ。勇者に”ハコメガネ”を。詳しい話は後で伝えてやれ」

「くくくっ、勇者様。コレで神様が見えるようになりますよ」


 メイド服の女は、ハコメガネことを俺に手渡す。……どう見てもVRヘットギアじゃないか。まあ、ここの魔道具は全てこんなものなのだろうか? 俺はどこか疑問を感じながらヘットギアを付ける。

 おおっ凄い、凄いよ。ハコメガネ! 先ほどまで空しかなかった空間に巨大なゼウス様が映し出されている。


「ほほほ~、勇者がようやくわしを視認したところで早速”魔王城”の場所を教えるとするか」

「あそこじゃ」


 ゼウス様が指さしたところは先ほどまで何もない平地だったのだが、現在そこにはまがまがしき西洋風の城がそびえ立っていた。その大きさは凄まじく、恐らくは100階立ての建造物と予想できるほどのものだった。


「うわぁー、すげー。あそこに魔王がいるのか。ゼウスよ」


 俺はゼウスにそう問いかける。


「ほほほ~、そうじゃ。勇者望月よ。あそこにいる魔王クロノスを打ち倒してくれ」

「くくくっ、失礼ながらゼウス様、ひょっとしてゼウス様の目は節穴でございますか?」

「ほほほ~、なんだと…… どういうことか? そこのメイド服の女よ」

「くくくっ、まだ気づかないのか? 悲しいなぁ。”我が息子”がその程度とは」

「お、お前は…… まさか……」

「くくくっ、答え合わせをしよう。まず、魔王城に魔王はいない。なぜなら私が魔王クロノスにほかならないからだ」

「次に”選ばれしものたち”は魔王を討ち倒すことはない。なぜなら、ここで死に絶えるからだ」


 メイド服の女、いや”魔王クロノス”は宙に浮かび、不敵に微笑み指を鳴らす。

 すると、どこからともなく魔物が姿を現した。その数、およそ数千以上。


「終わりだ。導かれし者たちよ」


 クロノスはそう高笑うとその場から消え失せた。

 この急展開に頭が付いていかない。ただ一つだけ分かったことを叫ばせてほしい。


「ラスボスが”銀髪ぺちゃぱいメイド”ってどうゆうことだよ。しかも、ゼウスの父”クロノス”ってなんで性別まで超越しているんだっ! どうなっているんだっーー! 俺の異世界転生!」



ナレーター〘何という事だろう。いきなり現れた銀髪ぺちゃぱいメイドは”魔王クロノス”だったのだ。しかも彼女によってミリノの町は魔物によって包囲され、戦場と化す。どうする!? ”導かれし者たち”。そして勇者望月は魔王を討つことが出来るのだろうか? 気になる続きは……】


ナレーター〘CMの後に〙

――CM

男性「”次世代英語”の新装版、発売決定!」

男性「受験生のみんなが間違えやすいところを研究!」

男性「点につながる効果的な学習ができる」

男性「さらに国内大手の受験予備校”かわええ塾”が作っているから安心!」

男性「大好評! あなたも買わなきゃ損かも!?」

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