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勇者望月と楽園の戦士たち

ナレーター〖ついに本物のシグルドとなった望月トオル。さらに幸運なことに美しい嫁ことブリュンヒルデも仲間入り。人生絶好調な彼を祝うべく三人の賢者が姿を現した。一体彼らは何者なのか〗


ナレーター〖本物の勇者となった望月トオルはどうなっているのか? 彼に視点を移すとしよう! ミニモニターにチェンジ〗

 

――PPPテレビ ドラマスタジオ


「うわぁ、やっぱり“孫にも衣裳”。勇者様は格好も素晴らしいですね」


 若いローブ姿の賢者はいきなり俺のことを馬鹿にしてきた。

 いや、実際本当に馬鹿なだけかもしれない。

 “まご”のイントネーションがどう聞いても“孫”だったからだ。正しくは“馬子”だ。

 こんな奴が果たして賢者といっていいのやら。


「柿本殿、あなた本当に“キャスター“なのか怪しくなってきましたぞ……。それは酒井殿もお叱りになりますぞ」


 もう一人の加齢臭がする白ローブの爺さんは指摘する。

 そりゃ酒井って奴に怒られるだろう。

 “馬子にも衣裳”とはどんな人でも身なりを整えれば立派に見えるって意味だ。

 間違っても良い意味ではない。

 ……まあ俺の場合、実際にその通りなのだが。

 この服を脱いだら勇者と認めてもらえるか怪しい。


「あはは、本当浅学で恥ずかしい限りです。“生”でやらかしていたら“キャスター“ではいられなくなっていましたよ」


 老人賢者は若賢者に対して“キャスター”と呼んでいた。

 つまりローブの賢者は魔法が使えるということだろう。

 ここに来てやっとファンタジーの様な展開になってきたな。


 そうは言っても俺はファンタジーに憧れてここに転生してきたのだ。

 やはり魔法の一つも見せていただきたいと思っていたし、あわよくば自分も魔法を使ってみたいと思っている。

 しかしこの賢者は何用で現れたのだろうか?


「ブリュンヒルデ、すまないがこの方々はどういった用件で訪れたのか教えてほしい」


 俺がブリュンヒルデに話しかけると彼女は一瞬ドキッとした表情を浮かべた後に“いつも”の笑顔で彼らについて説明してくれた。


「アラ~。やはり気になるのね、ア・ナ・タ。実はこの方はアナタの復活を祝いにわざわざ遠い国から駆けつけてくれた賢者サマなのよ~」


 そう語るブリュンヒルデの腕には輝かしい鞘に納められた立派な剣が抱かれていた。

 ……ちょっとしたサービスカットみたいになっていたのは彼女には内緒だ。

 えっ、“どんな感じにサービスだったのか“だって? 

 それは俺の口からは言えない。

 何故ならば不死身とは言え自ら進んで死にたくはないからだ。


 そもそもそんな話をしている場合ではない。彼女が抱きかかえている剣は俺には心あたりがあるのだ。


 俺は即座に異世界転生小説で蓄えた豊富な知識とばーちゃんにつき合わされた古典的RPGの経験を組み合わせて、その剣の真名を見破った。


 ――アスカロン。聖ゲオルギウスが使っていた聖剣。


 “ドラゴンスレイヤー”といった方が分かりやすいかもしれない。

 彼の“竜退治”の伝説は有名だ。毒気によって国を脅かし、姫を生贄に要求してきた悪いドラゴンを旅の途中の聖ゲオルギウスがこのアスカロンで討伐したといったお話だ。


 何処かで聞いたお話であろう。

 それもそのはず“某国民的RPG”の“ローラ姫の救出劇”の元ネタなのである。

 ちなみに彼は聖人なので間違っても姫と“ゆうべは おたのしみでしたね。”なんて事はない。


 おおっといけない。つい話が逸脱してしまった。しかし“ソレ”を持ってきたのがあの三人組だとすれば彼らの正体も察しがつく。


 ――東方の三賢者。イエス・キリストの誕生を祝福した人物たち。

 しかし彼らの正体がそうであるならば慎重に接触した方が良いのかもしれない。

 何故ならば、“ラグナレク”に影響を及ぼしかねないからだ。

 ここは“ギリシア神話陣営”の直轄地の異界である。


 そこにただでさえ“北欧神話陣営”のブリュンヒルデがいる。

 さらにここに“キリスト教陣営”が加わってみろ。

 ここは21世紀に再現されたバルカン半島情勢となる。

 少しでも“火”を注いでみろ。異世界の火薬庫は大爆発。

 その余波で起こる第三次大戦は世界規模にとどまらず、人と神を巻き込んだものになりかねない。ここは何とか丁重にもてなそう。


 大丈夫!何かあってもスパモン様が守ってくださる。――くださるはずだ。

 いや、そもそもスパモン様も“ラグナレク”に加わっているのかも……。


「――アナタ、ねえ、アナタったら。あ、ようやく気付いたのネ。良かった。私が頂いた聖剣アスカロンを見てからアナタずっと固まっていたのヨ」


 ブリュンヒルデは僕の気苦労には気づかなかった様で、聖剣をもらった事を素直に喜んでいるようだった。全く、彼女は気楽そうで羨ましいな。

 僕は彼女に羨望と呆れが混ざった感情を抱いた。


「すまない、少しばかり考え事をしていたので反応が遅れてしまったな」

「いいのよぉ~。私とシグルドの仲じゃない。それに聖剣アスカロンとアナタの魔剣グラムでペアじゃナイ」


 ブリュンヒルデはそう言い、アスカロンを天高く掲げて見せる。聖剣を見る横顔は美しい乙女のように見えた。


 これで“ドラゴンスレイヤー“として名高い剣が揃ったのだ。

 まあ、一本はどう見ても魔剣グラムでは無く、聖剣エクスカリバーなのだが。

 けれど夫婦で”ドラゴンスレイヤー”持ちというのは伝説感があっていいな。


 俺の封じられた中二病が解き放たれそうだぜ。


「おっふぉん、夫婦でいちゃこら中にすまぬが、そろそろ自己紹介してもよいかな。若き勇者の再来よ」


 白きローブを身にまとった老人賢者はそう言い、俺の止まれぬ妄想を阻んだ。

 おっと危なかったぜ。危うく“中二病”が再覚醒してしまうところだったぜ。


 まあ、今の俺は本当に力を持っているため中二病ではないのだが。


「了解した」


 ――真の勇者は多くを語らない。

 俺が好きな転生主人公の座右の銘に真似る事にした。


「我らは、東方の国“八雲“より勇者誕生を祝いに参上した三賢者である。真の勇者、望月よ。お会いできて光栄である。私は三賢者が一人、岡崎と申す者だ。以後よろしく頼む」


 ローブの老人こと岡崎はそう語った。それに続くように若いアホローブも口を開く。


「ワタクシは魔道具の扱いを得意とする若き魔導賢者。柿本といいます。これからよろしくお願いしますね!勇者さま」

「ああ、よろしく。貴方が扱う“魔道具”とはいったいどんなものなのだろうか?」

「魔道具でしたら…… コレですかね。スマートフォン」

「それ“僕“の異能チートおおおぉー」


 俺は思わずそう口走る。

 ……いや、俺の“異能チート“は不死身である。

 ましてやその”スマートフォン“たる魔道具も目にしたことはない。

 しかも先ほどの俺の発言は一人称も声も違った様な気がする。まさか封じ込められた人格が表に出たとでもいうのか。


 もう一人の俺は”呪われしパズル“を所有する”決闘者”なのか。

 いや、そんなはずないか。まだ“異世界で俺tueeeして一国の主となり9人の婚約者によるハーレムを築いたのちに機動戦士なにがしのパイロットのごとくロボットを操縦する”裏人格の方がしっくりくる。

 おっと、妄想を始めると止まらないのが俺の悪い癖。話を本題に戻さなければ。


「フム、魔道具か。興味深い。賢者柿本の魔道具“スマートフォン”はいったい何ができるのか教えてほしい」

「え、そうですね。電話が出来たり、写真が取れたり、ネットショッピングができたり、ゲームで遊べたり、SNSにどうでもいい事を呟いたり。いろいろ出来て便利ですよ。そうアイフォ――」


 そこで柿本の言葉は岡崎の杖による殴打で遮られた。柿本は痛そうに頭をさする。


「オッフォン、いいですか。望月殿。柿本の言葉を真に受けてはいかんですぞ。彼はまだ賢者見習いで魔道具のことも良く分かっていないですぞ」


 岡崎は何を慌てているのか早口で俺を諭す。


「あれは“ぼうけんのしょ”と呼ばれる我々賢者をサポートしてくれる魔道具ですぞ。神に祈りを捧げたり、今までの冒険を振り返る為に利用する魔道具。いわば魔導書ですぞ。習得した魔術を書き留めるとあらかじめ込めておいた魔力に応じて魔法を放ってくれるため、柿本のように“スマートフォン”なんか言ったりする者もいますぞ。柿本がさっき挙げて用途は魔力を込めれば使用可能になりますぞ。柿本が挙げた中に魔術は一つもありませぬが」


「フム、俺が知っているグランドフォンの様な物か。便利だな」

「一つ差し上げます。おい、柿本。ぼうけんのしょを持ってこい」

「了解しました」


 柿本は依然として頭をさすりながら、革袋を目指してよろよろと歩きだす。かわいそうに。しかし俺は先ほど柿本が挙げた呪文に心当たりがあった。うーん、どこで聞いたのだっけ?

 そうして頭を悩ませていると別のことを思い出した。


「おい、賢者岡崎。もう一人の賢者はどこだ?」


 思い出した疑問を直接聞いてみた。


「はーい、ここにいますとも」


 もちろん岡崎の声ではない。

 すると近くの樹木から人のシルエットが浮かぶ。

 それは白いローブを着た青年だった。けっ、また男かよ。

 他の異世界だったら女の子ばかりであろうに。


「……次のセリフは“実は女の子だったりしませんかね? 最後の賢者さま。”だ!」

「実は女の子だったりしませんかね? 最後の賢者さま。はっ!?」


 なぜ俺の思考が読めたのか。まさか賢者なのか。

 いやそういえば賢者だった。

 こいつはヤバい。俺の妄想の数々が見破られてしまう。

 そんな事を考えていると最後の賢者はおもむろにローブに手をかける。そしてそのローブを生き良い脱ぐと――

 そこには俺が待ち望んだ“金髪碧眼エルフ”がそこにいた。


「ビックリした? 望月君」

「ありがとうございますっ!」


 俺は無意識のうちにお礼の言葉を述べていた。きっと魂の叫びであろう。

 やったー。ゼウス様。ありがとうございます! 

 ようやく異世界でエルフに会えました。

 そしてやっと異世界っぽくなってきたぜ。俺の物語っ!



ナレーター〖ついに合流した“ぶっちゃけ三人組”。望月トオルに接近するため賢者に変身した。しかし誰もかれもそもそも賢者に似つかわしくないのでは? しかし酒井プロデューサーはなぜ金髪エルフになっているのか? そして彼らの真の目的とは?そしてホントいつになったら望月トオルは気づくのか?気になる続きは……〗



ナレーター〖CMの後に〗 

――CM


社長「――ヒトは再び”禁断の果実リンゴ”を食べた」

社長「結果、世界は小さくなった。そして”食べかけのリンゴ”は”銀河”もを超越し支配した」

社長「しかし、そんな”リンゴ”の世界も終わりを告げる」

社長「そう」

社長「この”天使のラッパ"によって」

社長「超高性能マルチCPU搭載。容量はクラウド管理で心配なし」

社長「そして目玉の”スクリーン”投影機能」

社長「スマホの世界を過去のものに」

社長「そして”千年王国”を手に」

社長「新型グランドフォン”ギャラホルンX5”」

社長「日本上陸」


――ギャラホルン社

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