第87話 左腕の開発(2)
みんなのおかげで、違いを見つけたオレは、拒否反応の原因を探る。
そこで、非常に面白い発見をした。
オレは、助手のパラヴィとライシャに、3DのDNAモデルを見せて質問する。
「さーて。こっちがオレとマリー、こっちがソニアとラーヴァの共通DNAだ。
個体差は外して均一化してある。でも違いは分かるよね?」
「ええ。」
「指してみて。」
「ここと、ここと、ここ。ここと、ここと、ここが違います。」
ライシャが指さす。
「そう。で、これを外してみる。」オレは、差されたDNAを外す。
「さぁ、どうだ。」
「・・・あれ?一致しない。」
「そうなんだ。 どこが違う?」
「・・・。ここの部分、一連が違いますね。」
今度はパラヴィが示す。
指示されたDNAの配列部分を色付けする。
「正解。」
ここは前日、スー、マドレーヌ、ソニアと見つけた部分である。
「で、だ。」オレは更に言う。
「ここを外して、足りなくなった部分は、オレのから足してくる。」
魔導式で出した3Dスクリーンの上で、切ったり張ったり、
カチャカチャと移動させる。
「さあ、どうだ。」
『・・・。合いませんね。』
2人が同時に言った。
「そうなんだ。」
オレは『ヘヘン♪』という感じで言った。
「ちょっといいですか。」
ライシャが2つのDNAを横向きにして、拡大して回す。
「あ、わかった。」パラヴィが言う。
「ここだよ。」さらに拡大する。
「ここの8つの塩基の配列が違う。」
「正解!」
オレはパチパチと手を叩く。
「オレはこの部分を『神話時代の断絶』と名付けた。」
「?」
「まずオレは、獣人も人間も、
元は同じ『人間』という種族から成り立っていると仮定している。」
「次に、先に片づけた部分の解析をすると、獣人のケモノである部分なのが解った。」
2人ともフンフンと聞いている。
ちょっとカワイイ♡
「で、この部分は、獣人2人が共通因子として持っていた部分だ。」
問題の部分を指す。
「何でここが違う?」
ライシャが手を上げて、
「そこって、加わってますか、置き換えてありますか?」
「加わってます。」
オレが答える。
『後で付け加えた?』
パラヴィが言う。
オレは、それには答えなかった。
「ハッキリ言おう。獣人の祖先の人間に、過去に何かあったんだ。」
「何年前かって、わかります?」ライシャが聞く。
「大まかなら。」
オレは答えて、自分でやった計算式を表す。
「大体、4000~6000年前だ。」
「この塩基配列が加わったから、君たちの異物に対する親和性が、異様に高まった。
本来くっ付くはずの無い動物の遺伝子を、取り込めたんだ。」
「じゃ、この遺伝子を所長に付け加えたら、腕がくっ付く?」
「ハハ。遺伝子が定着して、恒常的に存在できるかどうかは分からん。」
「じゃ、どうします?」
「まず、不織布に定着している細胞の状態の再チェック。
次に、データとって、この配列が、どのような働きをしているか、
シュミレーションしてみよう。」
検査してみると、この部分が付け加えられたことによって、
免疫細胞による拒否反応、つまり、抗体による異物への攻撃が鎮まっている。
元の世界にも、抗体反応を抑える薬品はあったが、
副作用無しでやっているところがすごい。
その後、色々シュミレートしてみた結果、
オレの細胞に遺伝子操作をして8つの塩基を組み込み、ゼリー状にして薄く延ばし、
オレと腕の部分にサンドイッチ状に噛ませて入れるというのが、
一番現実的という結論になった。
ここに工場を作ろうと思って10か月。
左腕の研究を始めて6か月。
左腕1号が完成した。
当初の計画では、全体を皮膚で覆うつもりだったが、メンテナンスの関係で断念。
全体を強化プラスチックのような、魔道プラスチックで覆う。
ビス、芯材他、強度が必要な部分は軽金属。
筋肉部分は、刺激を与えると収縮する魔導繊維で作った。
サイズは合わせたが、当初目標にした重さの3倍弱、
レスポンスがイマイチの代物である。
それでも無いより遥かにマシなので、
イヴに頼んで接続してもらうことにする。
それに先立ち、イヴには整形外科学、光の精霊はプログラムの見直しをした。
定着する時間を考慮して、術後1週間は安静にしないといけない。
今、非常に忙しいのでイライラしたが、我慢である。
接合が成功したので、見てみる。
左腕が根本から、サイボーグみたいな感じである。
動かすと、『キュン☆』なんて小さい音がした。
退院後、焦らずにコツコツ、リハビリテーションを行う。
最初、デタラメな動きをしていた新しい腕だが、徐々に思うように動くようになる。
細かい物を持つと、握りつぶしていたが、1か月もすると、卵を持てるようになる。
もう少しだ。
さらに1か月。
オレは、ほぼ、左腕を、以前と同じくらいに扱えるようになった。
左腕は、右腕に比べて、3倍の力が出るように作ったので、
この2か月の間、右腕中心に筋トレを絶え間なくやっていた。
お陰様で、体が一回り大きくなってしまった。
「よーし、これで両手が揃った。」
オレはニヤッと笑った。




