第79話 勝手に都市計画をする
工場始めて6か月。
「ケンさんのところは、景気が良いですなぁ。」馴染みの両替商が言った。
「いやいや。貧乏暇なしですよ。」オレは言う。
只今、給金を払うため、金貨を少額貨幣に換金中である。
ちなみに給料は、日給月給である。
最初、日給週給にしたのだが、
払うとすぐに、娘さん達の両親が生活費に使ってしまうらしく、
本人に、お金が残らないらしい。
それではマズいので、月給制にして、一部会社に貯金という形をとって、
本人の分を確保した。
本人の通帳を作成し、何時でも引き出し可能だ。
このストック分は、少額であるが利息を付けて、会社の運営資金に変えている。
この世界には、5大国を除くと、まだ銀行がない。
貯まったお金は、自己管理が基本だ。
貸金業はある。ただし、利子が高額だ。
少なからぬ人が、高利で借りて、払えなくて自滅していく。
オレは「いずれ、銀行も設立しないとなぁ。」なんて、考えている。
本来、お金は、循環してこそ役立つもので、貯めて停滞させても、意味が無い。
おっと。
貯金が悪いと言ってる訳じゃないよ。
銀行を始めるとしても、
計算できる人と契約書式を書き、保管し、整理できる人が必要だ。
やっぱり開いた窓辺で、ダラーンと両手(片手なんだが)を外に垂らして、
「そろそろ、中学・高校作ろうかな。」ポソッとつぶやいた。
「また学校作るの?」メルが聞く。
「うん。今度は勤めている従業員用。」
「?」
それからやっぱり敷地内をウロウロして、場所を考える。
現在、オレの会社の製品は、
値段の割に品質が良いということで需要が増加しており、
売り手市場という、非常にうれしい状態だった。
もしこの景気が続くとすれば、次の工場が完成しても、
早晩、増設する必要があると考えられた。
「うーん。敷地内は、ムリか。」
ポテポテ歩いて、正門から外に出る。
気が付くと、横に親方の娘『ソニア』が一緒に歩いていた。
ソニアは、女将さん似で、
耳が砂漠キツネ(フェネック)の、マドレーヌと同じ5歳の子だ。
髪の色は、キツネ色。
スイートショートボブを、リボンカチューシャでまとめている。
クリクリした目に、やや細面の顔をしている。
眼の色は、この地域には珍しいマリンブルーだ。
彼女は、マドレーヌより無口で大人しい。
注意深く物事を進めるという、優れた長所をもっている。
さすが、『ガナパティー豊穣と学問の神』に愛されるだけある。
「ソニア、一緒に散歩する?」と聞くと、コクンと頷いた。
歩幅をあわせるのが面倒なので、肩車する。
「お兄ちゃん、片手しかないから、しっかりつかまってろよ。」
この前歩いた時より、建設中の家が増えている。
商売屋の他に、下請けの工場や住居、集合住宅などがあった。
工場建設中の地所に回る途中、とある空き地を通った。
「ケン、ここ。」
とソニアが言う。
「?」
「ここに、建てる。」
「建てるって、・・学校?」
「そう。」
コクンと頷く。
「『ここが良い』って声がした。」
あー、ひょっとしたら・・・
「了解。」
オレは、そのまま回れ右をして、事務所に帰る。
後日、管理人さんに連絡して、そこに学校を建てる手配をした。
それからしばらくして、オレは悩んでいた。
周りに、更に多くの建物が建ち始めている。
管理人さんの話だと、
ここら辺一帯は未開拓の土地で、勝手に立てていいみたいなこと言ってたので、
放っておくと無計画に広がって、ここに街ができてしまう。
カーンプル市役所なんて無いし、
誰も都市計画なんて考えてもいないだろう。
・・・よし。勝手に都市計画だ♪
オレは元の世界では、都市育成シュミレーションが大好きだった。
実地でできるなんて、たまらない~♡
それから3日間。
オレはソニアと一緒に、敷地の外を歩き回っていた。
あちこち縄張りして、『〇〇建設予定地』と立て看板をする。
・・・文字が読めるかどうか分からないが、何かやることは、解かるだろう。
次に、正面道路と、工場関係の側面道路を縄張りする。
ある程度道幅を確保しておかないと、馬車のすれ違いもできなくなる。
あっ、上下水道を敷設しないと、疫病が発生するぞ!
「こっちは住宅地区~♪」
「ここは、商業街区~♪」
「ここは、・・・フッフッフッ♡」
娯楽施設も作らないと、暴動が発生するぅ♪
ソニアも、
「ケン。ここは広場。」
「ここは寺院。」「ここは家建てちゃダメ。」
とか、いろいろアドバイスしてくれる。
地面に棒で線引っ張ったりして、大喜び。
オレ達はもう、すっかりハマってしまっていた。
「ケンとソニア、外で何やってるんだ?」
ラーヴァがメルに尋ねる。
「知らない。」
「すっごく楽しそうだぞ。」
「だよね。」
「メルが知らないとなると、・・あー、なんか悪だくみしているな。」
・・・違います。環境美化です。
とにかくオレは、ここに、自分で好きな街を作る気満々なのだ。




