第77話 学校事始め
「じゃ、動かすぞー。」
「はーい。」
オレは製薬部門で、輸出用回復ポーション、治療ポーションの生産を作っていた。
ウッタ・プラデシュは、動植物相が濃く、質の高いポーションが製造できる。
医薬品も作りたいのだが、いかんせん、人手が足りない。
希少性の高いポーションのみを生産する。
現在、製薬部門の従業員は4人。
繊維部門で見つけた、手先の器用な娘さんたちである。
頭も良く、配置転換して教えると、すぐに憶えて作業してくれた。
工場を始めて4か月。
製薬・鉄鋼・繊維とも、安定して操業できるようになった。
資金も順調に溜まってきていて、操業を拡大する目処が立ってきている。
現在、空いている場所に工場を増設する計画を立てていて、
従業員の募集もしないといけないなぁなんて、考えていた。
お昼少し前、年少組から給食が始まる。
食堂で、一遍に食事はできないので、徐々にさばいていく。
外の空き地は、遊ぶ子供達で騒がしい。
開いた窓辺で、ダラーンと両手(片手なんだが)を外に垂らして、
「うーん。学校、始めようかな。」オレがボソッとつぶやく。
「学校?」メルが言った。
「そう。学校。」
こちらへ越してきて、オレは、ほぼ毎日、午前中に、
マドレーヌ、マオ、ヤン、途中で加わった親方の娘さんの ソニア、
4人に『読み書きそろばん』を教えている。
獣人の識字率は低い。
勘でだが、30%切ってると思う。
求職の面接のとき、読み書き・計算を聞いたら、出来る子は少なかった。
できる子は分けて、事務に行ってもらったりしたが、
必要人数に、全然足りない。
獣人国のような、発展途上にある地域では、知識は重要な武器となる。
長期的に見ると、オレの工場の発展のためにも、子供達に知識を教える必要があった。
思いついた時に始めないと、メンドーになって、やらなくなる。
そう思ったので、翌日から、託児所兼学校の計画を始めた。
工場敷地の空いている場所にテントを増設して、学校を始める。
子供達を、年少・年中・年長と3つに分ける。
年少は3~5歳まで。年中は6~8歳まで。9~12歳は年長。
ただし今回は、年少を除き、残りは全て『年中』である。
園長兼読み書き担当はマリー、算数担当はオレ、スーは保健・体育担当にする。
補助教員として各学年に、
繊維部門から、先生に適性のありそうな娘さんを数人、配置転換する。
教科書は、夜なべしてオレが作る。
印刷技術が無いので、先生が持つテキストだけだ。
それを生徒が、自分の持つ小さい黒板に、チョークで書き写す方法である。
やってみて分かったのは、『子供の教育はタイヘン』。
まぁ親方たちの、『殴って教育』っていうのが、分かる。
だって、言うこと聞かないもん。
怒れるぜぇw
しばらく経つと、チラホラ優秀で、素直な生徒が見えてくる。
コイツらは、殴らなくていい分、教えやすい。
オレは、年齢に関わらず、その子達をピックアップして、
自分で更に教えることにする。
その結果、・・新工場を建設する場所が無くなった。
従業員の数も、アチコチ振り分けたので、全然足りなくなってる。
増設しようかなと思い、メルを誘って工場の敷地から外出した。
操業から4か月、ほぼカンヅメであった。
やはり外は、気持ちが良い。
「外は気持ちいいなぁ。」
「ここの所、建物の中ばっかりだったし。」
話をしながら、周辺を歩く。
ウーンと背伸びして、まわりを見て、少し変化していることに気が付く。
工場はカーンプル市街の外れにあって、野原が広がる、何もない場所にある。
それが、工場の入り口に面した場所から、あちこちに家が建ってきている。
オレ達は「物好きな人もいるもんだ」と思いつつ散歩して、
適当な空き地を見つける。
工場を紹介してくれた管理人さんに聞くと、
オレの工場より先の土地は、所有者がいないとのこと。
早速、適当に縄張りをして、工場建設の準備を始める。
ウッタ・プラデシュがまだ未開発なことを、この時は感謝した。
まだ立ち上がりの、不安定な時期にある。
資金繰りに気を付けて、倒産しないように、がんばろう。




