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Heart on Fire ハートに火を着けて♡  作者: 三久
ウッタ・プラデシュ編
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第72話  カーンプルで町工場を準備する



4日後、オレ達パーティは、イヴ、マリーを残してカーンプルに戻った。


現在のイヴは、女神『サラスヴァティー』として、信仰の対象になっており、

寺院から抜け出せない状況になっている。

マリーは、その護衛である。


イヴの治癒能力は、ヴァーラーナシーで一番だった。

街の薬師で治らない患者は、みな救護院に集まった。


イヴは、診療・治療のときは『光の精霊』に変化するのだが、

それを見た患者たちが、『サラスヴァティー』と騒ぎだして、拝み始めた。


救護院に集まる人数が、あまりに多いので、婆様が診る患者の数を制限した。


問題は『治療薬』で、

若干のストックはあったが、制限しても、あの人数では、早晩底をつくだろう。

これから工場で製作する予定だが、早急に設備を整えて作らないとマズい。


製作費について婆様に掛け合ったところ、

イヴ、マリーをレンタルする費用と、製作費を足して、

まぁまぁの代金をもらえることになった。




ヤンは、ちゃんと工場で、荷物を管理して待っていた。


「ここが新しい本拠地になる、工場兼研究所だ。」

オレは、

「コイツはヤン。新しいメンバーだ。」

ヤンがペコッとお辞儀をする。


「じゃ、ヤン。案内してくれ。」

ヤンに従って、工場の敷地を移動する。


「結構広いな。」ラーヴァが言った。

「今から区画割りして使うから、これでも狭いと思ってる。」

「住む場所は?」

「こっち。」ヤンが指さす。


居住棟は独立した2階建てで、

下に台所・食堂・洗面所・トイレ・水浴室・物置他があり、

2階に居室がずらっと並んでいた。

元々、社員寮だったみたいだ。


後は、・・・焼けた建物が1つ。


「あ~w 鍛冶屋さんの自宅だな。」

「気の毒だよねぇ。」メルが言う。

「オレ達が、したわけじゃないし。・・気の毒だけど。」

ここは片づけて、後で何かに利用しよう。


居住棟に戻って、オレはみんなに、

「さて、やっとというか、いよいよというか、

ウッタ・プラデシュでの活動を始めることになった。」


「まずは、基地となる、この工場の整備から始める。

メル、資金管理頼む。

ラーヴァ、業者の選定と、価格交渉頼む。

スーはオレと一緒に色々。

マドレーヌは、メルの手伝い。

マオとヤンは、オレの手伝い。」


「今日は居室に、各人の荷物を入れて整理。

各人1部屋ずつOK。

ただし、マオとヤンは2人で1つ。

ケンカするな。したら殴る。

マドレーヌは、メルと一緒。

では、各人始め!」

『パン☆』と手を打って開始する。


どの部屋も6帖くらいの大きさで、何もない。


オレはマドレーヌの荷物を持って、メルの部屋に行く。

「まずは、家具買うか作るかだな。」

「布団も欲しいよねぇ。」

「あーw 忘れてた。」

「とりあえず、手持ちの毛布で、しのげば大丈夫。」


ひと通り整理と掃除が終わったら、次は食事だ。

まだ準備が整っていないので、外で食べることにした。



「スー。適当な店に案内して。」

「了解。」

スーが、とある店に案内した。


店は、外見はボロかった。


みんなで中に入ると、ヤンが、

「あっ、女将さん!」

なんと、鉄工所の奥さんがいた。


「あらあら、ヤン。今日は、みんなで食事?」

「うん。新しい勤め先のみんなです。」

オレは、立ってお辞儀しながら、

「これからここで仕事を始める、ケンターと言うものです。よろしくお願いします。」

女将さんはニコニコして、

「これからも、このお店、贔屓にしてくださいね。」

出てきたものは、味は中々で、値段も安かった。


オレはスーに、

「知ってて連れてきた?」

スーは頷いて、

「奥で、料理作ってるのが旦那さん。」

「あー。」


「確か、家人が病気って言ってたけど?」

「それ、娘さん。まだ治ってない。」


スーは、ジッとオレを見て、

「ケン兄、どうする?」



オレは食事を食べ終わって、ご馳走様を言った後、女将さんに、

「娘さんの具合は、いかがですか?」

と尋ねた。


女将さんは、びっくりした様子で、「お知り合いでしたっけ?」と聞いてくる。

オレは、自分が鉄工所を借りたこと、病気はヤンから聞いたと言い、

怪しい者ではないことを明らかにする。


「薬を上げているんですが、中々良くならなくて。」

心配そうだ。

オレは、自分が回復士であることを告げ、もし良かったら診療すると言ってみる。

もちろん無料タダで。


奥さんは、奥に行って、旦那さんと相談しているようだ。


奥から旦那さんが出てきて、

「診てもらうはいいが、金なら無いぞ。」

と言う。

「もちろん無料でいいです。」

旦那さんは、胡散臭さそうな目で、オレを見ている。

まぁ、いきなりのこんな話、胡散臭いわなw


ヤンが、

「親方。オレ、ついこの間この人に雇われたんだけど、良い人だと思う。」

旦那さんは、ヤンを見て、

「どうせ治らなくても元々か。 よし。連れてってやれ。」




奥さんに連れられて、やってきた場所は、・・ほぼスラム街だった。

「ゴミゴミしてて、すいません。」

奥さんは、恐縮している。

入り口にみんなを待たせて、オレは奥さんと部屋に入った。



部屋は、6帖くらいの部屋に、5人くらいが雑居していた。


奥にボロボロの布団があって、そこに小さな女の子が寝ている。

「ソニア、お医者様よ。」

女の子が、かすかに目を開ける。

年齢は、マドレーヌと同じくらいか。

体が痩せてしまって、干からびた感じがした。


オレは奥さんに、

「何を見ても、黙っててください。」

奥さんが頷くと、オレは右手をかざし、

「慈愛の女神よ。来たりて我に、恵みの滴を与えたまえ。」


右手が光り、触手が何本も伸びて、女の子の体をスキャンした。

しばらくして、結果が出る。

これは外科的治療だな。


オレは奥さんに、

「娘さんを、ヴァーラーナシーのダルマ教寺院にある、救護院に連れて行ってください。そこで、『ケンに言われた』と言ってくれれば、治療してもらえます。」

と言った。


「治りますか?」奥さんが心配そうに言う。

「そこにいる、イヴという女性なら、治せます。」

奥さんは急にソワソワして、

「ああ。あの人に言って、明日にも行かないと。」


オレは、

「このままだと、移動するにも大変です。少し力を付けましょう。」

と言って、女の子と額を合わせた。


女の子の心の中は、病人独特のドロドロした感じと、死の匂いがした。

オレは少しずつ『愛』の出力を上げてゆく。

『常世』の力が、少しずつ彼女に、病気に対する抵抗力を与えだす。


しばらくすると、心の中に、一筋の光明が現れる。

『ガナパティ』ー豊穣と学問の神が現れた。

ああ、この子は、ガナパティに愛されているのか。


オレは、どんどん出力を上げていく。

この子の許容量は、まだまだある。

将来が、楽しみだ。


額を離して女の子を見ると、青白く、カサカサした感じが消えて、

ほんのり肌色に戻っていた。


「これで大丈夫。連れて行ってください。」

オレは合掌し、立ち上がる。



店に戻ると、親方が、

「何か、妻が、すごいことをしてもらったと言っていた。オレは何を返せばいい?」


オレは、

「まずは娘さんを連れて、救護所に行ってください。」



「さて、話は済んだ。戻るぞ。」

みんなに言って、オレ達は工場に戻った。





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