第68話 第五・六・七の修業
ヴァラナーシー・ダルマ教寺院に籠って4日目。
婆様は、ダルマ教主神の妃『チャンディー』の再来とまで呼ばれるようになっていた。
寺の門前だけでなく、周辺まで、ごった返しており、騒ぎは増々拡大していた。
ラーヴァのお母さんも、奥ノ院にやってきて、若くなった婆様を見て、びっくりしていた。
この時初めて、オレはラーヴァから、母親に紹介された。
「あの、えーと、・・・私の、・・・旦那様です。」
ラーヴァは真っ赤だ。
お母さんはオレを見て、
「話は聞いてます。婆様が勝手に決めたみたいですね。ご迷惑ではないですか?」
オレは、
「私は人間なんですが、婿になっていいんでしょうか?」
この頃には、オレはすっかり自分の結婚を諦観してしまっていた。
もうここまで話が大きくなっていたら、なるようにしかならないだろう。
「ウチは、始祖様が人間ですから、全然。」
鷹揚なお母さんで良かった。
「それにしても、すごい騒ぎですね。」
オレが言う。
「普通、『若返る』なんて、有り得ませんから。婿様、何なさったんです?」
お母さんが逆に尋ねてきた。
「いや~、なんて言いますか、うーん・・・。」説明は難しい。
この話は、もう少し落ち着いてからということで、納得してもらった。
この頃には、
「よみがえった『始祖様』を、見せてほしい!」
という声が大きくなっていた。
1時間後、奥ノ院。
「婿殿。次の修業を始める。」
婆様が言った。
今回は『覚醒の間』ではなく、外の庭で行われた。
庭に面した広間に、4人の楽師がいる。
弦・打楽器・笛・声楽の4人。
オレは、庭にある平たい大理石の上で、ヨーガ。
精神と身体を整えた後、結跏趺坐して、瞑想に入る。
「始めよ。」
婆様の声と共に、楽声が始まった。
音楽が始まり、オレの体は、清浄な庭の空気を吸いながら、
心地よいヴァイブレーションに包まれる。
『瞑想せよ。』
婆様の思念が言う。
オレは瞑想し、次々に、今までに培った『眼』を開く。
音楽と共に、オレの思念の世界野が広がっていく。
『正しく息を整えよ。』
『背筋を伸ばせ。』
『集中せよ。』
次々と指示が入る。
世界野が、果てしなく伸びたと感じられる頃、
『観念せよ。』
その時、マドレーヌの心が入ってくる。
『ケン、私が案内するね。』
オレの思考は、マドレーヌの心と共に、果てしなく天上を上がっていく。
「ここは?」
「宇宙我の世界。」
果てしない空間の中で、生成と消滅を繰り返す集合体がある。
「あれは?」
「個人我。」
ああ、オレは世界の成り立ちと終焉を、同時に観ているんだな。
『観るな! 感ぜよ!!』
大音声で婆様の声が響く。
「ここは『観る』世界ではない。『感ぜよ』。」
静かに『観念』していると、やがて『三昧』の境地に入る。
世界とオレが、1つにまとまる。
世界の中心がオレであり、オレは世界の一部として結びつく。
オレは静かに瞑想を続ける。
チャクラが次々と花開く。
『銀の』目が開く。
『黄金の』目が開く。
・・・そして、『世界の』目が開いた。
婆様とマドレーヌの心に寄り添われながら、オレは在野に戻る。
「よし!!」
婆様が言った。
「今、お前様は、『始祖様』と同じ境地に至った。」
立ち上がり、オレを寺院へと誘う。
『功徳せよ。』
オレはダルマ教寺院の大広間、『礼拝の間』で、多くの信者と対面した。
オレは結跏趺坐し、静かに両手を広げ、祝詞を上げる。
自分が悟った『世界の思念』を、そこにいる皆に『功徳』する。
オレの思念が、寺院を覆う。
皆の思念がオレに集まり、一体となり、そして各人に戻った。
夢から醒めたように、人々は覚醒する。
驚愕と歓声に包まれる。
「ディーヴァ! ディーヴァ!」
大歓声の中、オレは玉座に安置される。
オレは三昧の境地のまま、世界に、さらに功徳を注ぎ込む。
在野は広がり、ヴァラナーシー全体に及ぶ。
再び、より多くの者の思念がオレに集まり、一体となり、そして各人に戻る。
次の日より、功徳にあやかる為、 ウッタ・プラデシュ中から巡礼者が、ヴァラナーシーを目指した。
王宮の預言者にも、その影響は感知され、急きょ伝令が派遣された。
外が大騒ぎになっている中、
その影響にも関わらず、オレは、三昧の境地を味わっていた。
暑っつぅw
夏はキライじゃないけど、苦手です。
一日中、プールの中にいたい・・・




